里帰り
支配の厄災討伐から数週間経った。
テイワズは首都へと戻り、いつもの貴族にような生活を送っているようだ。だが少し変わったことがあった。それは政治への介入だ。
積極的ではないが、人々の意見、政策を聞いて口を出すようになったようだ。
神々の計画を破綻させる気か?とシスから言われたようだが、「人類全体で考えればまだ神を超えることは出来ていない。だが、今回の件で神を超えた人間が居ることが分かった。それに、計画が人類の自発的成長が目的であるというのを再認識させられた。だから介入するのだよ」と言うことらしい。
それに、自分から政策を提案するようなことはないようだ。あくまで、人間の出してきた提案を訂正したり、賛成や反対の意見を述べるというものに抑えているらしい。
またシスも文化圏から離れた孤独の生活から首都の生活へと移行したようだ。
神々にも変化が起き、スールヴァニアも厄災による影響が無くなっていき、治安、経済が安定。流出していた人口も戻ってきていると聞く。
しかし、今回の件ではあらゆる異常事態がありすぎた。
それに一般には伏せられている情報もある。
支配の厄災とローブの者たちだ。
この二つの事柄はまだ未知な事が多く、一般公開するには危険すぎるというスールヴァニア政府、テイワズとシス、冒険者ギルド連合の三つの組織による合意のもと、機密情報扱いになるようだ。
さて、そんな機密情報扱いである厄災討伐の当事者であるトーゼツ達はギルド連合本部のある神都へと来ていた。
「ここが神都ですか!!」
エルドはギルド本部の窓から見える街の景色を見て目を輝かせていた。
「さすが調和神アフラの転移魔術だな」
トーゼツは初めて使ったギルドの転移術を見て驚きながらも魔法陣を見て解析をしようとしていた。
遅れて転送してきたアナト、アナーヒターの二人はその地面に描かれた魔法陣をまじまじと眺めているトーゼツを見て
「馬鹿ね、神の術よ?現代の魔術学で解析出来るものじゃないわ」
と姉のアナトが馬鹿にするような口調で言い放つ。
「分かってますけどー!!」
イラつきや怒りの声色でアナトの言葉に反応し、すぐさま陣から離れるトーゼツであった。そしてエルドの眺める窓の外の風景を見て昔の事を思い出す。
「帰って来たんだな……故郷に」
トーゼツとアナトはこの街で育った人間だ。
この街を飛び出した時には一生帰ってこないだろう、と思っていたがこんな形で帰ってくる事になるとは思ってもいなかった。
アナーヒターもトーゼツの隣に立ち、一緒に外を見る。
「はぁ……神都に戻ってきたのは五年ぐらいかしら?この前振りね」
「さすがは長命のエルフ。俺たち普通の人間種じゃあそんなセリフ一生出ないよ」
そのようなツッコミを入れながら最後に転移してきたのはミトラであった。
「さて、それじゃあ各々のやることやりましょうか。っということでエルド君はこっち。アナトに二人は任せたよ!」
「それでは、またあとで!」
ミトラとエルドの二人はそういって部屋へと出ていく。
それを見送ったのちに
「んじゃ、私たちも行きますか。調和神アフラの所へ」
というアナトの言葉を聞き、三人はギルドへと出るのであった。