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支配の厄災 38

 先ほどまで支配の厄災が居た上空は大きく爆発を起こし、その熱が風に乗ってトーゼツ達にも襲い掛かる。シスに癒してもらったはずの傷口が妙に障るような感覚があった。


 あんなに激しい戦闘があった場所は今では妙に静まり返っている。近くに何者かがいる気配もない。魔力探知しても引っかからない。支配の厄災は二度も倒し、また襲撃が来るような様子もない。


 もうこれで終わった、そのように考えていた。


 アナト以外は。


 「おいおい、どういうことだよ?」


 そのアナトのつぶやいた言葉に反応して彼女が見ている方向へと全員が視線を向ける。


 そこには、空中に舞う爆炎を払い退け現れた一つの影。


 一部皮膚が焼けこげ、ボロボロになっているものの、脚や腕が無くなっていたりすることもなければ、何処か骨が折れていたり、内臓が飛び出しているなどの負傷も見当たらない。


 しかし、その苦痛の表情からダメージがゼロではないようだ。


 「なかなか危なかったが、ギリギリで間に合ったよ。まっ、これで私の権能がどれほどのものなのかが理解出来た。だが、もう遊べるほどの体力は残っていないし、ここで逃げさせてもらうとするよ」


 その次の瞬間、トーゼツ達は地面へと倒れこんでいた。


 「ッ!!」


 それはシスであろうと、テイワズであろうと……アナトであっても変わらなかった。まるで数十トンの重みが体に乗っかっているような感覚で、地面に倒れている。


 「ふざ…けるな!!」


 アナトはそれでもなお、動き出す。


 「それはこっちのセリフだ。今の私が可能レベルで最大限の力なのにどうして動ける?全く、化け物だな。でも、自由には動け舞い。私一人が逃げれるくらいに問題なかろう。それでは諸君、またどこかで会おうじゃないか!」


 「待て!!」


 そうして、アナトは重い体を引きずって、去っていく支配の厄災を追いかけていくが、どんどん距離は離されていく。


 「逃げるんじゃない!!」


 必死に走る。だが、もうたどり着くことは出来ない。それでもなお――


 「ふざけるなァァァァァァァァァァ!!!!!!」


 彼女の叫びは虚空へと消えていく。


 気づけばのしかかっていた重みは消えている。


 アナトは走り出す。


 もう姿、形も無い。何処へと去ったのかもわからない敵に向かって。


 勝負は勝っていた。誰がどう見てもそうだった。


 だが逃げられた。


 どうしようもない感情がアナトの奥底からあふれ出る。それは一体何なのか?逃げられた事による悔しさか?トドメを刺せなかったことによる自分の怒りか?それとも―――


 ただ、その感情をどうすることも出来なかった。


 ただ、アナトは走っていくことしか出来なかった。

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