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アーティファクト 4

 テントの中には、やはり店前に出ている商品よりも質の悪い武具があった。だが、それらのほとんど直せば使えるものも多かった。きっと、冒険者から使えなくなった武具などを買ったのだろう。中古品を直して売るというのは、武具に限らずよくある話だ。


 それに、新品の物もあった。きっと仕入れたばかりのものなのだろう。


 それらを見ていると、かなりこのスーツの男の目が良いのがミトラは理解する。


 彼女は剣士。しかも、剣士としては最高峰の剣聖である。彼女の武器だって、何処からか、勝手に湧いてくるようなものではない。自分の足で赴き、目で確認して買っている。だからこそ、使える武器かどうかというのはある程度、わかっているつもりだ。それがボロボロのものであっても。


 (物によっては数百年経っていてもおかしくはないわね。でも、磨けば絶対に使えるものばっかり)


 トーゼツがいつ、どのようにこの商人の事を知ったのか。ミトラが知るわけがない。だが、この商人の頼りにしているのが分かるし、それほどの力があるのは確かのようだ。


 そうしているうちに、テントの外へと出ていた。きっと、入ってきた所とは逆の、裏の方へと出ていたのだろう。そして、その目の前には、このスーツを着た商人の荷馬車があった。


 その中へスーツの男は入り、いくつかの箱を持って戻って来る。


 「さて、トーゼツ様。ここがあなた向きの武器ですよっと!」


 そういってスーツの男は丁寧に箱を地面へ置く。


 その箱は周囲の売り物を入れている木箱に比べると異常なほどに高そうなものであった。装飾がされており、また頑丈そうな鍵がついている。さらには紫色で箱は塗られている。


 「この色……すごいわね」


 ミトラは感嘆する。


 「ほお、剣聖様には分かりますか?」


 「ええ、あまり絵については知らないから、詳しくはないんだけどね。でも最近は化学染料なんかが出てきているらしいから、多分これもそうだと思ったけど……自然染料でしょ、これ!」


 つまり、花や石から抽出された色であるということ。そして、そのような自然から採れる染料の中で、紫色はかなり貴重で、それこそ今、目の前にある箱に塗ろうものなら、数千万はかかるだろう。


 「そうですよ。中身だけでも充分ですが、今回はうまく箱も手に入りましてね」


 へへへへ、と堪えきれない気味の悪い笑い声をあげながら、ポケットから鍵を取り出す。そして、その高貴で、丈夫そうな箱を開ける。そうして中に入っていたものは—


 「……剣?」


 それは、たった一本の剣。剣身は白く、また刃も研磨されている。


 一瞬、普通の鉄で出来ているかと思ったが、より観察してみると、少し違う。鉄であればもっと黒が混じっている色……グレーで、角度によっては光の反射で銀色に見えるはずだ。しかし、それは完全な白。


 「塗装……ってわけじゃないわね。ってことは、魔鉱石?」


 「またもや正解ですよ、剣聖様」


 魔鉱石はより魔力を通しやすい鉱石のことであり、また加工や使い方によっては魔力を生み出せるようになる代物である。それは鉄を基準にされており、鉄よりも魔力伝導の高いものが魔鉱石判定になっている。


 しかし、魔鉱石の有効な使い道というのは神代の頃から徐々に失われ、古代にはもう完全に消え失せてしまったものであった。現代で多く見かけるのは、単純に剣や槍の一部として使われている程度。例で挙げた魔力を生み出せるようにする技術などは全く見ることは少ない。


 あったとしても、それは神代から伝わる由緒正しい武具のみで、現代で造られたものではないがほとんどである。

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