支配の厄災 25
テイワズは動じることなく、難なくと相手の拳を躱していく。
その拳は決して遅いわけではない。並みの冒険者でも見切るのは不可能であり、また運よく魔術や防具で防御したとしても、その威力には耐えきれずにぶっ飛ばされるだろう。
そんな拳をテイワズは臆することなく、堂々とした態度でかつ、無駄ない動きで躱していく。
「この程度で私に挑もうとしてきたのか。全く……自身の身の丈も理解していない愚かさが非常に腹立たしいぞ!!」
相手の繰り出す凄まじい連打の中をかいくぐり、一発の重く、鋭い一撃をテイワズは打ち込む。
「ッ!!」
その一撃は見事、腹部へと入る。まるで槍でも突き刺されたと思えるような、そんな貫通した威力であった。それでもなお、深く被るフードの奥から垣間見えるその口は、不気味に、異様に、そして気色悪いほどに嗤っていた。
「ははッ!さすがにこの程度の攻撃じゃあ掠りもしないか!!」
腹部に入った一撃の威力を足で踏ん張ることが出来ず、ズザザッ!と靴底と地面を擦らせながら、数メートル後方へと下がる。
また、その戦闘スタイルから相手が何者なのか、遠くから見ていたアナーヒターは理解する。
「アルウェスと一緒で、拳を使った戦い方……あれはイルゼか!」
レーデルで襲撃をしてきた奴らということだ。
(個人的なものだと思っていたけど……結構、目的のある集団的組織なの?)
冒険者活動をしている以上、いろんな依頼を引き受けた。だからこそ、多くの犯罪者、賞金首から恨まれているだろうし、また同業者とも依頼を引き受けるかどうか、どちらが冒険者として優秀なのかと、何度も競い合ったこともある。
過去にそういった因縁のある相手から襲われたことはなくはない。
だが、この場に突如として現れたこと。またトーゼツとアナーヒターが目的ではないことを踏まえると、一体何者なのかがより分からなくなる。
(村の人間を皆殺しにしたり、レーデルで暴れたり……今回もそうだ。一体、何が目的なのか……。共通するものが見当たらないな)
アナーヒターはそのように思考を巡らせていると
「おいおい、考え事なんて、そんなに俺との戦いがそんなにつまらないか!!」
シュンッ!と風を切りながら、アナーヒターに一つの刃が襲い掛かる。
それを素早く壁型のバリアを展開し、自分の身を守る。
「ははッ!反応速度ヤバすぎだろ!!良いねぇ、楽しくなってくるねェ!!!!」
その後もバリアに向かって何度も斬りかかるが、そのバリアに傷一つつくことなかった。またアナーヒターはバリア越しに魔術を使い、相手を吹っ飛ばす。
「うおッ!」
無詠唱の、無魔法陣。下級魔術ではあるし、ダメージすら入っていないだろうが油断している相手を吹っ飛ばし、距離を取るぐらいは出来るだろう。
吹っ飛ばされているローブの男は腕を回し、腰をひねることで空中でも態勢をなんとか整え、脚から着地する。




