支配の厄災 17
支配の厄災が振り落としたセプターがトーゼツの剣へとぶつかったその瞬間、
「ッ!?」
剣を伝って体にやってきたその衝撃は凄まじいもので、膝が折れて倒れそうになる。が、それを堪え、なんとか耐え切る。のだが、トーゼツが耐え切っても地面が耐えきれなかった。
セプターから剣へ、剣からトーゼツへ、トーゼツから大地へと受け流れたその威力は、トーゼツの足を中心に大きく崩れ、巨大な亀裂が入っていく。
(お…重い……!なん、だ……これ、は!?)
この一撃は支配の厄災が魔力に腕力、そして全体重をかけた攻撃。だと思うのだが、それでは説明がつかないほどの重さだ。何かしらの仕掛けがあると思った方が良い。
(魔術!?いいや、詠唱も陣も無かった、発動も感じられなかった!!)
まるで空が落ちてきたかのような、そんな重みに必死に耐え続けていたがそれも時間の問題だ。きっとあと数秒も持たない。
トーゼツはセプターの力の向く先を上手く剣で冷静に、しかし確実にずらし、セプターの向かう方向をトーゼツから逸らすことに成功する。
ブゥン!と空気と空間を切り裂いているような音と共にセプターはトーゼツのいない在らぬ場所へと落ちていき、地面へとドスンッ!とまるで数トンの鉄の塊が落ちてきたかのような力が周囲に響く。
大きく振り切った腕に、避けられたせいで崩れた態勢。反撃するならば今がチャンス。なのだが、トーゼツもあの重さを耐えていた腕が思うように動かない。筋肉が疲労し、持ち上がらない。
なので距離を取ろうとしたその直後であった。
ぶわり、と突風が出たと思えば、その風はトーゼツの肉体をも浮かび上がらせ、一気に後方へと吹っ飛ばされる。空中で態勢を整え、足から着地しようとするのだが、体が思うように動かず、そのまま地面をバウンドしていく。
(これも奴の仕業か!?)
何度も地面に叩きつけられ、血まみれ、土まみれになりながらもその脳はしっかり分析をしていた。
(魔術にしろ、魔術じゃないにしろ、何かされているのには変わりない!!一体、相手は何をしているんだ!?)
ようやく速度が落ち、地面にバウンドすることはなくなり、しかし筋肉の疲労であまり動けないトーゼツはズザザザッ!と地面にこすられていった。
支配の厄災はセプターを持ち上げ、トーゼツへと追撃を行おうとした。そこに―
「絶大魔術〈フルーメン・サリレ〉!」
何処からともなく水流が出現し、支配の厄災へと向かってくる。しかも、その水流は地面を伝って流れているのではない。空間を、まるで空を飛ぶ龍のように伝って向かってきたのだ。
流れているとは言え、水は不定形。真正面から来るのか、背後へと回ってくるのか。それとも……といくら動きを読もうとしても読めきれない。
水流は支配の厄災へと近づくと、ガクンと降りて地面すれすれの低空飛行になる。そしてフードを深く被っているため分からないが、水流は位置的には顎辺りに向かって勢いよく突進していく。