支配の厄災 15
支配の厄災の自爆攻撃は、戦闘の外にいたシス達にも衝撃を伝えていく。
恐ろしいほどの力……それに「ひゃあぁ!!」と情けない声をあげながらヘイドにしがみつくのは継承者と呼ばれていた少女であった。
「安心しろ、私から離れなければ必ず守ってやるからな」
ヘイドは少女の頭をなで、落ち着かせると再び爆発の中心を眺める。
爆煙と爆風で巻き上がった土煙で何も見えない。トーゼツ達が無事なのかも分からない。魔力を探知して全員の位置を探ろうにも、あの爆発で支配の厄災の魔力が周囲に散ってしまい。それが探知を阻害する。
「これじゃあ無事か、さすがに分からないな」
シスは回復魔術で支援してやるか、と考えていたがさすがに治癒魔術の対象者の位置が不明瞭な状態では使えない。
「しかし、自分の身すらも介さずにしてこの威力……やはり厄災は神の権能に近いということか」
ぽつり、と口から出てきたヘイドの分析に対し、シスは「まぁ、想いによって生まれたのは一緒だからな」と肯定、同意するような居意見を述べる。
アナトもまた、凄まじい光景を目にしていたが慣れた光景なのか。動じることはなく、また「ここまでは無事に来たか」とつぶやく。
アナトの経験上、厄災は追い詰められると必ず自爆攻撃をする。
それは厄災としての性質なのか。それとも別の要因で起こっているのか。はたまた偶然なのか。だが、何度もこのような光景を見た事ある以上、自爆攻撃は確定要素として良いかもしれない。
(身体が意思の通りに動かないと言っていたな。であれば自動的に自爆するような仕組みになっているとも考えられるか)
こればっかりは厄災研究者ではないため分からないし、事前に調べた厄災の情報にも無かった。きっと考えても答えはでない。
だが、経験だけで決めるなら―
「私の出番なくても終わるな、この戦いは」
アナトはそのように確信をする。
一分後……。
視界を遮っていたモノが次第に消えていくと、戦闘があった場所ではまるで小さな隕石でも落ちてきたかのようなクレーターが出来ており、土や岩は爆発の熱で溶岩と化していた。
その中央で黒いローブを身に纏った影が一つ。
「はぁ……はぁ……!」
それはローブの上からでも分かるほどやせ細っており、魔力量も明らかに減衰している。
それでもソレは、残った魔力を右手に集め、再び自分の武器であるセプターを具現化させる。
「く、ククッ!私の死はもう確定だが、一人じゃあ死なん!!私の近くにいたあの二人は確実に殺れているだろう!さて、次は君たちの番かな?」
セプターを構えてアナト達を見る支配の厄災。その顔はようやく死ぬ事が出来るという喜びの顔であった。
「さぁ、私の自殺願望に巻き込まれて共に死のうじゃないか!!」
支配の厄災の言動に四人は全く反応がない。
「まだみたいだぞ」
アナトの声と共に、支配の厄災の後方でむくり、と起き上がる者があった。
焼けた大地を踏みしめ、剣先を地面に突き刺し、まるで老人の杖のようにその剣を使って起き上がったそれはトーゼツ・サンキライであった。