支配の厄災 14
またトーゼツの激しい連撃の最中、ミトラは支配の厄災の背後へと回り込むと彼女も支配の厄災へと突きの攻撃を入れる。
「絶大剣術〈螺旋炎突〉!」
ミトラの剣を中心に炎が渦巻き、剣にまとわりつく。そして、その刃で何度も、何度も突き刺していく。
支配の厄災ミトラとトーゼツの二人を挟まれながらその激しく、強烈な攻撃を全て喰らい続けてしまう。
(抜け出そうにも……暇がない!それに一度の詠唱で、術の連続発動だと!?)
ミトラがいくら剣聖であろうと、絶大剣術の連続使用……しかも一度詠唱した後は無詠唱のままだ。魔力量の消費に、脳に掛かる負担もとんでもないもののはずだ。トーゼツも同様だ。絶大レベルとはいかないが、中級剣術と上級剣術の連続使用など基本、不可能。
これを可能にしているのはアナーヒターのサポート、もあるかもしれない。だが、戦闘に参加せず、遠くで見ているシスの支援であった。
「これぐらいは手伝わせてもらうよ」
一部の魔力と脳の負担をシスが肩代わりしていたのだ。
「無詠唱で、魔法陣も無しであれほどの魔術支援!?やっぱ神だわ」
シスのサポートに真っ先に気づいていたアナーヒターは驚かされる。
術聖アナーヒターの支援も無詠唱ではあるが、全て魔法陣を展開している。きっとシスの発動している術は絶大レベル……いや、現代の魔術学では到達していない領域の術だと思われる。それを無詠唱、魔法陣なしとはとても信じがたい。
だが、目の前の事象が真実であるという証明をしている。
「私も負けてられないわね!」
アナーヒターはさらに四つの魔法陣を展開し、追加でトーゼツ、ミトラの二人の身体能力を底上げさせる。
(身体がより軽くなった!!)
トーゼツは剣を振る腕の動きをさらに加速させる。
(このまま押し切る!!)
ミトラもここで戦いを終わらせようと剣による突きをより力強く、鋭いモノにさせていく。
このまま続けば、支配の厄災の敗北は確定だ。
そう、このまま続けば。
だが、彼の肉体がソレを許さない。
身を守るように覆っている魔力、地面に落ちている魔力で具現化させたセプター、その他諸々の体外に魔力を全て体内へと入れ戻し始める。
ただでさえ膨大な魔力量が、さらに膨れ上がっていく。それは破裂しそうな風船のように。
この感覚をトーゼツ、ミトラ、アナーヒターは知っていた。
刃の厄災との戦い、あの時もアレは自爆しようとしていたじゃないか。であれば―
「「「「まずい!!!」」」
アナーヒターは全ての発動中の魔法を停止させ、魔法陣も消すと全力で二人を守るように防御系統の魔術を付与し始める。またミトラとトーゼツの二人も素早く攻撃を止め、距離を取り始める。
そして、三人の予想は的中する。
ボンッ!と支配の厄災を中心にボンッ!と強く爆発する。それは空間を痺れさせ、大地を震撼させるほどの威力と衝撃であった。