支配の厄災 13
この一気に追い詰めようとしている状況の中、支配の厄災……というよりも意思、思考の通りに言う事を聞かない厄災の肉体が最も警戒していたのはアナーヒターであった。
(あの術師……あれほどの魔術運用で思考に乱れがない。魔力にも無駄な消費がない。かなり戦闘経験豊富の戦士だな。であれば—)
距離を詰めてくるミトラとトーゼツなど、支配の厄災の視界にはなかった。
(先にアレを仕留める!)
セプターの先をアナーヒターへと狙いを定めて、何かをしようとする。
「させるかァ!!」
トーゼツは狙いの方向を逸らすためにセプターにめがけて下から上へと強く斬り上げる。ガギッ!と鉄のぶつかる音が強く響いたと思えば、今度はドォン!と強い衝撃が周囲に襲う。
何が起こったかともえば、トーゼツによって狙いが逸れたセプターの先にある何も無い空中で大きな爆発が起こっているのではないか。しかも、初撃やトーゼツを狙った時よりも強い爆発であった。支援に集中しているアナーヒターがもし、この一撃を喰らっていたとすれば……。
そう考えるとかなりトーゼツの判断はファインプレーであった。
自分の邪魔をされた支配の厄災はトーゼツに強く嫌悪感と共にその深く被ったフードの奥にある見えない目で強く睨む。
「アナーヒターばかりに意識が向いているが、俺たちの事も忘れるなよ……!」
「ちぃッ!」
舌打ちをしながらも、トーゼツの剣で跳ね上げられたセプターを今度は強く振り下ろし、トーゼツへと攻撃する。のだが、今度はそれをミトラが邪魔する。
シュンッ!とそれは見えなかった。
だが、明らかにミトラから放たれた斬撃。
「あァ?」
支配の厄災の思考がにぶり、それは二秒の時を経て目の前にセプターを落ちてきたのを見てようやく自分の身に何が起こったかを理解する。
腕がを切断された。
振り下ろす瞬間、腕の付け根を勢いよく斬られ、切断されたのだ。
神経も、肉も、骨すらも繋がっていない腕はそれでもなおしっかりセプターを握りしめたままボトリ、と生々しい音を立てて地面に落ちる。
何が起こったのかは理解した。だが、突如すぎるこの状況に上手く思考がまとまらない。次の行動が思い浮かばない。
そこにトーゼツが追撃を行う。
「中級魔術〈炎纏〉!」
トーゼツを中心に魔法陣が一瞬、展開されたかと思えば、ゴォッ!と空気中の酸素が燃焼し始めトーゼツを中心に真紅の炎が渦巻く。その炎はまるで生きているかのように揺らめき、剣身に蛇のようにぐるぐると巻き付いていく。
そこからさらにトーゼツは術を唱える。
「上級剣術〈瞬時断絶〉!」
光の如き速さでその剣は支配の厄災を何度も斬っていく。
ズバズバズバズバッ!とミトラのように切断とはいかないものの、体全身を確実にダメージを与えていく。ただでさえボロボロのローブが破れ、そこから血の代わりと言わんばかりに真っ黒な液体が吹き出す。