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支配の厄災 5

 アナトの言葉に迷うことなく答えるのはヘイドであった。


 「俺たちは観戦するだけだ。お前らが勝とうが死のうが関係ないし、もう休ませてもらう。行くぞ継承者よ」


 「はい!」


 やはり上から目線というか、鼻につくような態度のヘイドは足早に家の中へと入っていく。そんなヘイドとは裏腹に継承者と呼ばれる少女は「それでは私たちはお休みと取らせていただきますので、それじゃあ!」と礼儀正しくぺこり、と頭を下げるのであった。


 そうして二人は消え去り、次に答えるのはシスであった。


 「そうね、私も直接戦うわけじゃないし、休ませてもらうね」


 そうしてシスもあくびをしながら家の中へと入る。


 その様子を見て女神であってもこの悪路の中、必要最低限のみの質素な食事での旅は疲れてしまうんだなぁ、と思うトーゼツ。


 「もちろん、私はついていくわ。私も殺し合いをする相手は見ておきたい」


 そのミトラの言葉に続くのはトーゼツであった。


 「俺も姉貴についていくとするかな。まだ寝るには早い時間だし、まだ疲れてないからな」


 トーゼツのその発言に「じゃあ私も一緒に行くわ」と同意するアナーヒター。それはアナトについていくというよりも、トーゼツについていくと言った感じであった。


 「じゃ、じゃあ俺も」とエルドは言うのだが、彼の顔もかなり疲労が溜まっているものだった。そのため「無理するな。お前も疲れてるんだろ、今日は休んだ方が良い」とトーゼツは諭してエルドを休ませるのであった。


そうして支配の厄災に戦いに向けて、体力の残った四人が男に案内されて村の中にある観測基地として使われている家へと入っていく。


 「この家の二階にある望遠鏡で二十四時間、四六時中動きを観測しております。こちらの棚にある資料がこの基地を設置してからの全ての記録です。ご自由にご覧ください」


 二階へと続くための階段がある廊下にはいくつかの棚が置かれている。そして棚の中にはバインダーがぎっしり詰まっている。きっとバインダーに手書きの資料がまとめられているのだろう。


 「望遠鏡はいくつだ?」


 アナトは男へと質問する。


 「望遠鏡は一つしか設置してありません。全員、見たいのであれば交代制でお願いします」


 そうして真っ先に二階へと上がっていくのはアナトとアナーヒターであった。


 トーゼツとミトラは棚にあった資料の一つを適当に取り、眼を通し始める。


 (狂気の影響範囲は厄災を中心に半径約二十キロとされている。それは遠ければ遠いほど影響は微弱。近いとその狂気の影響は強まる。支配の厄災は他の厄災に比べて狂気の影響範囲が少し広くなっており、それは厄災にも個体差によって力の強さが異なることと仮説を立てることが出来る。それを立証するためには―)


 とても真面目そうな文体が何行にも続いており、明日の戦いに有益な情報も載っているかもしれない。が、その情報を手に入れるために何時間もかけてこの多い資料を読もうという気にはなれなかった。

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