支配の厄災 4
大山脈エルドノーンの麓。
そこには大きな村があり、冒険者や旅人が首都エムドノレスへと向かう最中に立ち寄る場所となっていた。大きな宿屋もあり、外部の人間を温かく迎え入れてくれる良い村であった。
しかし、それも半年前から厄災の影響で全ての村の人間が避難しており、もう廃村のように荒れていた。
と言っても誰もいないわけではなく、冒険者ギルド連合本部の人間が出入りしている。彼らはこの村を研究者として厄災を観察する観察場所として使っていたり、侵攻方向、動き、状況を報告するための監視所として利用している。
村の者の許可を取って一部の家を借り出し、そこを休憩所や機材置き場としていた。
「お待ちしておりましたよ、みなさま」
村に入る手前で一人の男が立っており、杖を持っていることから魔術師であることが分かる。彼へとアナト達が近づくと深々とお辞儀して言うのであった。
「わざわざで迎えてくれたのか。ご苦労」
エムドノレスから出る前に、冒険者ギルドでこの村へと事前に連絡を入れていたため、どれぐらいで到着するのか。予測は出来ていたのかもしれない。それでもこうして村の前でアナト達が来るのを立って待つのにどれほど時間を消費してしまっていたのか。
それを考えると本当にご苦労なことである。
「アナトとミトラ様ですね。後ろの者たちも協力してくれる冒険者だと伺っております。それでは中へとどうぞ」
そういわれて、彼に案内されるように村の中へと入っていく一行であった。
トーゼツが村に入り、真っ先に意識が向いたのは雑草であった。
村の中に草木は茶色く、やはり厄災の影響で枯れようとしていた。しかし、村の外の植物はもう黒く、焦げたようになっていた。誰が見ても分かるように死んでいるのだ。それに対し、村の中の植物は死にかけているもののまだ生きているものであるのは確かなようだ。
(何かしらの結界を展開しているのか?)
しかし、トーゼツの知識の中で狂気を払う、取り除く、打ち消すような魔術はない。しかし、彼らは神都から来ている冒険者であり、研究者たち。つまり世界の最先端を行く者たちである。
彼らであれば、そういう魔術を開発していてもおかしくはないかもしれない。
「さて、この家をお使いください。家主から許可を取っており、自由に使用して良いとの事です」
男が立ち止まった場所には村の中で大きめの家であった。
村の中では立派な家で、宿屋の次に大きい家であるため権力のある者の家……つまり村長にあたる者の家なのかもしれない。
「手配してくれて助かるよ」
アナトの感謝の言葉を聞いて再び深々とお辞儀をする。
「本日はどうなさいますか?もうお休みになりますか?」
「そうだな……私は明日の戦いで少しでも有利な状態で戦いたい。そのために侵攻中の厄災の状況を少しでも知っておく必要がある。君たちの観測基地へと行きたいのだが、大丈夫かな?」
「もちろん、大丈夫ですよ」
「ということだが、お前らはどうする?」
アナトは七人へと視線を移す。