神々の計画 3
シスの長くも、神々の重要な話を聞かされて少しばかり脳の思考が停止してしまうトーゼツ達であった。
一気に色んな情報が頭の中に入ってしまったが故に疑問なんてものが思い浮かぶことなく、とにかく入ってきた情報を整理することしか出来ない状態になってしまう。
しかしアナトだけはなんともないというか……元々知っていたかのような薄い反応だ。もしかしたら事前に調和神アフラに聞かされていたのかもしれない。シスの言う通りならば人に聞かせられる話ではないが、そこはアナトだから、という言葉で簡単に説明がついてしまう。
「……そこまで話しても良かったんですか?」
ようやく脳の情報処理が終わったようだ。エルドはさらに質問して追求していく。
「訊ねた俺が言うのもアレなんですけど……人に話すべき内容じゃないんですよね?」
「ここまでは問題ないさ。計画している事ぐらいなら、ね。問題になるのは立てた計画の内容を話してしまうことさ。少しでも漏れてしまうと計画が崩壊するかもしれない」
それを聞いてトーゼツは改めて自分の姉、アナトの方を見る。
やはり彼女の反応は薄い。しかし、その耳はしっかり彼女の言葉に耳を傾けている。本当に神々の計画全てを把握しているというのであれば、アナトの性格的に話を無視して食事の方に集中しているはずだ。
しかし、耳を傾けているということはきっとアナトも全てを知っていない。もしくは計画の内容だけを知っていない可能性がある。というか、知らないのだろう。
きっとこの様子だと、少しでもボロが出て計画の話が出た時に聞き逃さない様にしているといったところか。
しかし、これ以上は質問することもないし、シスも話すことは無いと言った態度だ。
そこでミトラは話題を変え、今度はトーゼツへと質問する。
「そういえばどうしてトーゼツはスールヴァニアに来たんだ?私たちは厄災討伐の任務を受けてここにいるんだけど……」
それを聞いて「「やっぱりか〜」」と想像出来ていたかのような反応をするトーゼツとアナーヒター。と言っても英雄とも呼べる二人の冒険者が今のスールヴァニアに訪れる理由なんて厄災討伐しかない。それを予測出来ないなんてただの馬鹿だ。
だがその反応を見てミトラもまた二人のようにある程度、予測がついてしまう。
「もしかしてだけど……アンタらがこの国に来た理由って……」
ミトラは念のためにそれを訊く。
「……支配の厄災、討伐のためだ」
お互い厄災討伐のためにここへとやって来たというこの状況……なんだかデジャブを感じてしまうのは気のせいなのだろうか?
「へぇ、アナーヒターはともかくアンタが厄災討伐、ねぇ?」
ニタニタと小馬鹿にするように笑いながらトーゼツを見るアナト。
「何が可笑しい?」
「いいや、何も可笑しな事はないさ。それにミトラの言葉が真実なら刃の厄災討伐に一役買ってるんだろう?だったら別に変な所はない。それにせっかく目的が一緒なんだ。この任務、せっかくだし六人でやっちまうとするか!」
そのアナトの言葉に全員が同じ反応をする。
「「「「「…………………はぁ?」」」」」
厄災を単独撃破出来る実力者であるアナトの方からその言葉が出るなんて。
いやいや、トーゼツとしては部外者にされるより、厄災討伐任務に同行出来るというその誘いは嬉しいことなのだが……。
厄災を単独撃破出来るアナト。厄災討伐を協力ではあるが果たしたトーゼツ、アナーヒター、ミトラ。そして術聖に達する可能性のあるエルド。そして神であるシス。
……まさしくオーバーキルという言葉がふさわしいかもしれない。これでは厄災の方が可哀想だ。と思うトーゼツであった。