神々の計画 2
シスはサンキライ姉弟の反応を見ると続けて二人の疑問を解消させるために答える。
「アナトは厄災討伐を果たしてきた人間でその力は神にも引けを取らない。だからこそ私たち神々はアナタを次に来るであろう人類の時代の代表者として見ているの」
「私を?」
アナトはそんな大層な存在として神々に見られているのか?と驚きはしないものの、意外そうな顔をしていた。が、アナト以外の者は何の疑問も思い浮かばなかった。
彼女ほどの力を持った人間がこれまでの歴史上、居ただろうか?
否。
神話と呼ばれるまで歴史を遡れば分からない。しかし、そんな本当かどうか分からない部分を除けばきっとアナトは人類史上最強の人間だ。
それを人類の代表として神が見据えていると言われてもおかしな話ではない。
「もちろん、アナトだけじゃない。トーゼツ、君もそうだ」
「俺も?」
「アナトとは違い、協力してではあったが厄災討伐に一役買った君が神々から一目置かれて居ないわけがないだろ?君も多くの神々から期待されているんだよ」
これも特段、驚き話ではない。
トーゼツの実力を知らない者であれば『そんなお世辞を言わなくていいのに』なんて思うかもしれない。しかし、実際に彼がいなければ刃の厄災は討伐出来なかっただろう。
そしてトーゼツも期待されているというシスの発言に一番納得しているのはアナトのようであった。
それはまるで事前からトーゼツが神々から気に入られているのを知って居たかのような反応であった。が、シスの方と意識が皆向いているため、誰かがその反応に気づくことはなかった。
「それじゃあ、少し話の内容が変わっちゃうかもしれないんですけど、テイワズ様と話している時、聞かれる可能性があるとか、人類の歴史が訪れないなんて言ってましたけどあれってどういう意味なんです?」
エルドはアナーヒターの質問が返し終わった直後に重ねる様に訊く。
「それは……なんと説明すれば良いかな?」
シスは五秒ほど沈黙する。その間にどのように説明すれば良いのか、情報を整理したようだ。
「まず、何度も聞いているかもしれないけど神から人類の時代へと変わろうとしている。けど、今のままじゃあ人類は早かれ遅かれ滅びる可能性がある。その滅びの原因が何かは分からない。それは厄災かもしれない、急激な人口増加による食糧不足か、氷河期や大規模の火山噴火などの星の運行に関わるものか。はたまた人間同士の戦争かもしれない。ともかく今のままでは人類へと時代を託すのにはまだまだというのが神々の大多数の意見だ。しかし、古代から残る神はもう調和神アフラしかいない。私もテイワズも古代の神の力を持ってはいるものの、所詮はその力を継承した人間にすぎないんだ。そして人類へと時代を明け渡す前に神代を生きてきた神そのものがこの世から消えかねない。だからあと数十年……長くても二百年で人類を一気に成長させようという計画が神々にある。しかし、神がその計画に直接介入するのは人類の成長を妨げる要因になりかねない。また人類側がその神が立案した計画を理解し、実行することも神が介入することと同義。あくまで人間か神に頼らず考え、実行し、成果を出す必要があるのだ。そこで神々だけで計画を共有してさらには最低限必要な間接的な介入だけでこの計画を成り立たせようとしている。その計画の一部をテイワズが話そうとしていたから黙らせたんだ」