神々の計画
六人が飯屋へ行こうとギルドの外へ出るともう空は真っ赤に染まっており、太陽はこの世界から消えようとしていた。
ここにいる誰よりも早くエムドノレスに訪れ、一週間ほど前から厄災討伐に向けて準備していたアナトの行きつけのお店へと向かった。
そうして三十分後……、六人が囲むテーブルにはそれぞれが頼んだ食事が並んでおり、全員が空っぽになった腹に食べ物を入れ込んでいく。
その食事の間にも、先ほどの問答で起こった色んな情報を整理しようと話し合っていた。
「それで……とりあえず驚いたのはアナトとトーゼツが姉弟だったことなんだが?」
ミトラは魚の煮付けを食べながら二人へとその言葉を投げかける。
厄災討伐を何度も果たした最強の冒険者で多くの者が憧れを抱き、尊敬しているアナトに対し、神からの祝福を与えてもらえず落ちこぼれとして馬鹿にされているトーゼツ。
こんな対極的な存在が最も関係の深かったのは驚きを隠せない。
「そりゃあ誰も聞いてこなかったからな」
もぐもぐと、トーゼツは炊き立てのご飯を頬張りながら反応する。そのご飯の中には貝や魚といった海鮮系にブロッコリーやにんじんといった野菜も一緒に入れて炊き込まれており、パエリアを彷彿とさせるような料理であった。
「そりゃあ誰も初対面で二人が血縁関係だなんて分かる人、世の中いないでしょう!?」
その投げやりな答え方に尋ねたミトラが声を荒げながら叫ぶ。
「俺と姉貴のことは良いんだ。俺はそれよりもシスの方に色々と聞きたいことがあるんだがな」
アナトとトーゼツが姉弟の関係であったのをこの場で知らないのはミトラとエルドだけだ。シスも知らなかったかも知れないが女神である彼女にとってはどうでも良い情報だろう。
それに姉弟と分かったからと言ってこれ以上、掘り下げる事柄ではない。それよりもテイワズが突如現れた事と。テイワズとの会話内容が気になる所だ。
「確かにね。シスとテイワズが顔見知りなのは分かるわ。しかしテイワズは数年間、城に篭りっぱなしと聞く。アナタに会うためにわざわざ出てきたのかしら?しかも冒険者を偽って?」
トーゼツの聞きたい事という言葉に乗っかる形でアナーヒターが尋ねる。
それに対し、昼間にミトラが食べていたモノと同じピタパンに魚をサンドされたモノを口へ放り込みながらシスは返答する。
「私と彼はもう百年以上会ってなかったし、もう数少ない神仲間として会いに来たのかもね。あとは君たち二人の顔を見ておきたかった所かな?」
そうしてシスはサンキライ姉弟の方を見る。
「俺たち?」
「私たち?」
さすが姉弟か。タイミングを合わせようとしたわけではないのに同じ反応を、全く同じタイミングで行う。その視線の先も同じくシスの方へと向けられている。
そうして見るとやはり二人の顔は少しばかり似ており、本当に家族なんだなとミトラとエルドは思わされるのであった。