問答 7
それに対しシスはなんともないようであった。
最高神ともなる存在の威圧など人間であれば耐えきれないかもしれない。しかし、同じ神である彼女だからこそテイワズの殺意を軽く受け流しているのだろう。
「だって私の神域を厄災は通ろうとしているのよ?アナタだって厄災の進行ルートに自分の城があったらどうにかしようと動くでしょ?」
「しかしだな、厄災は—」
突如としてテイワズは口を閉じ、紡いでいた言葉を遮断する。
今度はシスからとてつもない威圧があった。
それ以上は言うな、黙っておけ、と。
熱くなってきていたテイワズもまた、女神である彼女の威圧に恐怖などは抱いていない。しかし、場を理解した次第に激しくなっていた心の熱も冷えてくる。
「……ここは私とお前だけの空間じゃない。そもそも壁の外にこの会話を聞いている者もいるかもしれない。聞かれた所で問題はないだろうが真実を述べることで変わってしまう未来がある。それ以上言い過ぎると消さなければならない人間が出る可能性、いいや、人の時代も訪れなくなるかもしれない事を知れ」
人の時代が訪れない……それこそテイワズの恐れていることだ。
人と神の間にはまだ絶対的な壁が存在する。ゆえに人を見下しがちなテイワズだがそれが愚かな行為であるというのは彼自身が理解していた。
神は成長することはない。それに比べ、人類はさらに背を伸ばし、腕を広げ、神すらと到達出来ぬだろうその遥か先へいける存在である。
そもそも神というものも人の想いが形取ったもの。
だからこそ遠い昔……今のテイワズから何世代も前のテイワズは人類に次の時代を託すと決めたのだ。
「私もアンタの言いたいことを理解しているさ。だからこそこうして首都エムドノレスに来たんだ。私が厄災討伐する気ならばとうに私が単独撃破している」
「……そうだな。ようやく頭が冷静に回ってきた。これ以上は何も言うまい。我々の意思を継ぐであろう次代にも会えた。であればここは一度、退く。いくぞ、継承者よ」
そのテイワズの言葉に少女が「は、はい!」と返事する。
二人は入ってきたドアからまるで立ち去り、まるで何もなかったかの様に静寂が訪れる。
突然の出来事。突如として現れた最高神。
誰もがすぐに状況を整理することができず、言葉を発する余裕もなかった。
しばらくしたのちに……
「とりあえず腹が減ったからごはんにしようか!」
静寂から脱出するためにシスのその言葉に全員が乗っかり、その空き部屋から出ていくのであった。