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問答 5

 これにて一通りの問答が終わったようだ。


 エルドはミトラと一緒に神都へ行くことになり、アナーヒターはアナトによってギルド連合本部へと強制連行されることが決まった。


 トーゼツは何処にでもいる一介の冒険者に過ぎない。本部への招集を受けて居なければ捜索されている身でもない。しかし、厄災に立ち向かえるほどの強い心と力を持っているのはミトラが知っている。きっとトーゼツも神都へ連れて行かれることだろう。


 仮に連れて行かれないにしてもたった一人で旅を続けるのはやはり不可能とは言わないが出来ることが限られてくる。なのでついていくしか選択はないだろう。


 「これにて一件落着だね!私たちの縄を解いてもらおうか!!」


 シスは動けないように背中で縛られた両手首の縄を解けといわんばかりにミトラとアナトへと向ける。


 「全く私はずっと暇だったんだよ?三人と違って一番の部外者なんだから!」


 確かにシスはずっと黙ってこの問答が終わるのを待って居た。しかも、一緒に居たからという理由で同じ様に縛られていたのだ。


 まぁ、仲間であるというのには変わりないし縛られるのは仕方のないことかもしれない。シス本人も縛られていたことに怒りなどはないようだ。


 しかし、自分の番が回ってこないと知っており、何もすることがないと分かっていたからこそずっと暇を持て余して居たのだ。


 「……分かったから少し大人しくして。上手く解けないからさ」


 そうしてアナトは縄を解こうと手を伸ばすその瞬間


 コンコンッ!とドアをノックする音が響く。


 普通、ノックというのは入って良いか?という確認だ。返事がないのであれば、ノックし直すか。もしくは一度諦めて出直すはずだ。しかし、ノックの主はこちらの反応する前にドアを開けて入ってくる。


 「邪魔するぞ」


 そこに出てきたのは一人の男と少女。


 「キサマがアナトで、オマエがトーゼツだな」


 二人とも冒険者のようだ。男は立派な槍を背中に抱えている。少女の方はまさに魔女を彷彿とさせるような帽子をかぶっている。しかし、少女の見た目は十歳をいくか、いかないかほどのものだ。


 女性であれ、男性であれ、身長で歳を測ろうとするのは難しい。しかし、その纏う雰囲気で断言できる。彼女は十歳ほどの子供であると。


 「ちょ、ちょっとお忍びで来てるんですし、ここは同じ一般市民としての言動を取るべきですよ!」


 「知るか。それにここに居る者に招待がバレたとてさほど問題にはなるまい」


 少女から何かしらの注意を受けるが槍の男であったがそれを彼は無視する。


 「……あなた方はどちら様で?そして何用ですかな?」


 アナトは警戒しながら二人に尋ねる。


 ここは冒険者ギルド。冒険者がいた所で何もおかしな話ではない。


 しかしここはギルドの空き部屋だ。そこに用があって入ってくるのはとても奇妙なことだ。ここには何も無いし、本来は誰かがいることもない。


 ではこの二人は何をしにこの部屋に入ってきたのだろうか?

 

 ……数秒経っても二人からその答えは返ってこない。


 ただ彼はアナトとトーゼツの二人を見下ろしていた。まるで品定めでもしているかのように……。


 「これが次代に託す者とは信じられんな。アフラめ、何を考えている」


 それだけ言うともう興味を無くしたのか、視線は別の方向へと向けられる。


 それはまだ縛られているシスであった。

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