再会 13
ミトラは広場を抜け、人の多いマーケットを抜け、大きい街道へと出る。
そこは最高神テイワズが住んでいるという巨大な城から首都外へと通じる道。人と馬車が激しく行き来しているその道の中で見知った三人の顔を見つける。
「トーゼツ!!」
その叫びが聞こえてきたのか、呼ばれた少年は振り返り、声の主を確認する。
「あっ、お前は―」
トーゼツもすぐに相手が誰なのか、理解し、驚く。
数秒遅れてアナーヒター、エルドがトーゼツの目線の先を見る。
ゼンルジシスだけは何も分からない状態であったが、この三人の知り合いのようだ。さらにお互い驚いていることから何か待ち合わせをしたり、ここで再会することは予想外のことみたいだ。
そうして、ミトラとトーゼツの眼が合う。
合ってしまう。
ミトラは人込みを無理やり掻き分け、トーゼツ達へと近づこうとする。
それに対し、トーゼツとアナーヒターも逃げるように駆けていく。また、それに数秒経ってエルドとシスも走り出す。
「どうして、急に、逃げ出す、ん……ですか!?」
エルドはみんなに置いて行かれないように足を必死に動かしながら、スタートダッシュに遅れたにも関わらずトーゼツの隣まで必死に追いつき、呼吸を荒くしながら尋ねる。
「そりゃあ面倒な事になるからだよ!特にメユーの方がな!!」
メユーことアナーヒターは行方不明ということになっている。そういえばなぜ術聖で冒険者社会の中で誰もが羨む地位を手に入れているのに、それを投げ出すかのように名と職を偽っているのか。それはエルドには教えてもらっていないし、考えた所でそんなのは分からない。
それでも偽名、偽職を使っている時点で冒険者ギルド連合に戻るつもりはないのだろう。
そして剣聖ミトラは、冒険者ギルド連合本部に所属する人間だ。
「なるほど、少し複雑な事情と見たね」
明らかに説明不足なこの状況に、何故か納得するシス。やはり、その全てお見通しているかのような態度は神様であるからなのか。
「「「ッ!」」」
シスが何かしようだ。三人の頭の中に何かの情報が流れてくる。
これは……街の地図と時間、そして場所だ。
「私も長年来てなかったけど、それでもエムドノレスがどうなっているのか、把握している。その情報を君たちに共有した。四人全員で動いていると相手を撒きにくいだろ?いったん別れよう!」
なるほど、地図はこの街のモノか。そして時間と場所は合流のためのものか。
そうしてシスが先に路地裏へと入り消える。
「ナイス判断だろ、シス!」
そうして次にトーゼツが消え、次にアナーヒター、エルドの順に別れ、大通りから離れていく。
ミトラはとりあえずトーゼツの曲がった道を彼女も進む。すると、そこにトーゼツの姿が見えなかった。
大通りよりも人の往来は少なく、一直線の道だ。すぐにトーゼツが消えるわけがないと思い、周囲をくまなく見渡すと、トーゼツは上にいた。
並ぶ建物の屋根から屋根へとパルクールのように移動していたのだ。
「そこか!」
ミトラもまら軽快な動きで壁を登り、見失わないようにしながらトーゼツを追っていく。