再会 12
このまま長話にもなりそうだったのでミトラとヴァルファの二人は近くの広場にあった階段に座り込む。
二人の手には広場の屋台で売られていたモノを持っている。それはケバブやタコスなどで使われるピタパンのような生地に魚の骨が抜かれた身と野菜、そして大量のソースで味付けされたモノが包み込まれている食べ物であった。
それを頬張りながら会話は二人の会話は続いていく。
「この味もなつかしいね。醤油ベースの味に魚の味。うーん、これぞ郷土料理!」
「ずっとこの街で生きてきた俺からすれば慣れた味だな」
ミトラは数年ぶりに広がる味に笑顔になり、ヴァルファは慣れた味でありながらも美味しい味に腹が満たされていくことに幸福を感じていた。
「しかし、お前の任務が終わってしばらくしたあと、ラジオを通して無事に剣聖になったって聞いた時は皆、喜んでたぞ」
「あれ?ここのギルドにラジオってあったっけ?」
「お前が去って二ヶ月してから来たんだよ。ここのギルドもそれなりに儲けてるしな。ラジオっていうのがあるとは聞いていたが、あの時はかなり驚いたな。それに最近では西方諸国から流れてくる物品が多くてな。金持ちとか稼ぎのある家に大抵、ラジオが置かれてるし、一家に一台、なんて時代は近いのかもな」
世界的に見ればまだラジオは普及していないし、高価なものだ。
放送局も少ないし、放送が始まってない国も存在している。
しかし、それは世界的な話。ラジオを発明したりと技術的発展が著しい西方諸国では神都を始め多くの国々でラジオが普及してきている。
きっと全世界で普及されるのはそう遠い話ではないだろう。
「もう少し前までは人類の時代なんて来るの?って思ってた。けど、近年は人口は増加してるし、情報の往来も速くなってる。厄災も半分以下になろうとしてる」
未だに馬車が使われているが、それでも列車や車と言った蒸気を用いた乗り物も増えている。人や物もあっという間に行き来している。
「……そうだな。俺たちは時代の変化点に生きているのかもな」
技術だけが発展しているわけではない、知識も広がり、あらゆるモノの価値も変動している。常識もどんどん廃れ、新たなものに変わっていっている。
自分たちも駆け巡る時代に置いて行かれないようにしなければならない。
そんなを話している中、会話の内容が吹っ飛んでしまうほど驚くべき者がミトラの視界に入ってくる。
「……おい、どうした?」
突如、口が止まり、唖然とした表情をするものだからヴァルファもそれに驚きながら彼女の顔を覗き込む。
「……どうして、ここに居るんだ!!」
彼女は食べていたモノを口に放り込むとすぐさま走っていく。
「おい、どうしたんだ!?」
素早いう動きで視界から消えようとしているミトラに大きな声で叫ぶが、そのヴァルファの声も届いていないようだ。あっという間に彼女はいなくなってしまう。




