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再会 11

 ミトラがエムドノレスに訪れたのは初めてではない。


 あれは剣聖になる前……つまりまだ剣士として冒険者をやっていた頃の話だ。と言っても、その頃から調和神アフラから『彼女は剣聖になれる器だ』と目をつけられていた。


 訪れたのも、剣聖になるための修行と称して与えられた任務が理由だ。


 確かあれは国際指名手配されていた犯罪者を捕らえよ、と言った内容だったはず。


 一ヶ月ほど滞在し、住民から聞き込んだり、抵抗する犯罪者と戦闘したりと色々と大変だった経験を思い出させる。それと同時に多くの冒険者にも情報収集を手伝ってもらった。また頑張る様子から多くの人から応援してもらった記憶もある。


 あれはもう四年以上前、だったか。曖昧な記憶に、あの頃はまだ精神的に幼いというか、子供の一面もあった。


 背が伸びて、色んな物事を知って……そうして成長した彼女の目に再度映るこの街の景色は変わらないようで、しかしとても小さく感じるものもあった。


 それは自分が大きくなったことの証明なのだろうか。


 「それにしても…うん、この感じ。とても懐かしいね!」


 何度か行ったことのある食堂や果物、野菜が並ぶマーケットがある。もちろん、年月が経てば見知らぬお店に変わっていたり、閉店してしまった場所もある。


 それでも彼女の心が少しばかり揺さぶられるほどには懐かしい気分になる。


 そうして懐かしさに浸りながらも歩いていると


 「おぉ!お前はミトラか!?」


 突然後ろから肩を叩かれ、話しかけられる。


 そしてその声にはミトラも聞き覚えがあった。


 そこには大剣を背負った一人の男。冒険者なんだな、と見て一発で理解できるその姿。


 「アンタはヴァルファか!」


 「覚えていてくれたか!もう俺のことを忘れたかと思っていたよ!」


 「忘れるもんか、アンタはこの街に来たばっかりの私にすぐ喧嘩を売ってきた相手だからな!」


 ヴァルファは悪い奴ではない。しかし、プライドが少しばかり高く、当時まだ十二、十三歳であった私に対し『こんなガキが剣聖候補だなんて信じられねぇ!』と言って決闘を申し込んできた。


 あの時はまだ剣聖ではない。それでも圧倒的な実力を見せてギャフンと彼に言わせた。今ならばより天と地の差というものを見せつけてやれるかもしれない。


 そんなヴァルファはミトラの実力を認めたあと、彼女に戦いなどを教えてもらったり、そのお礼に任務の手助けをしてくれたりした。プライドが高かったり、決闘を申し込んだり、善人とはいえないかもしれない。それでも優秀な冒険者であるのには変わりない。


 「おいおい、その話はやめてくれよ。もう痛い目見て、仲間からも時折酒の場で笑い話にされてるんだから」


 「あれからもう何年か経つのに未だに笑い話にされてるの?はははっ!それは喧嘩吹っ掛けてきたアンタが悪いんだし、しょうがないじゃん!」


 昔の記憶が一気に蘇り、より懐かしさで心を満たしていく。

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