再会 10
スールヴァニアの首都、エムドノレス。
その首都内にある冒険者ギルドの二階、そこにはとある部屋があった。
部屋の中央には魔法陣が描かれている。が、今は発動していないようで動かず、光ることもなくただ描かれているだけであった。
そんな部屋に数人のスタッフとギルド長が待機していた。
「そろそろだ」
腕時計を見ながらつぶやくギルド長。その言葉と共に部屋に変化が現れる。
まるで電気の付いた機械のように魔法陣が光り、内部の図形がぐるぐると呼応して回転しだす。ゆっくりと、しかし着実に回っていく。そして、次第にその回転は速度を増し、風を生み出す。
風は小さな竜巻のようで、しかし周囲の物体に影響を与えることはなかった。床も天井も吹き飛ばず、スタッフもギルド長もそれに巻き込まれることもない。
そして、竜巻の中心で何かが現れる。
それは人影。しかし、竜巻の風によってまだハッキリと見えない。
竜巻は次第にスピードが落ち、その風は落ち着き、見えなかったその影の正体がどんどん現れていく。
それは剣聖ミトラ・アルファインであった。
そう、この魔法陣は転移系統の魔術が発動する陣であったのだ。
とても便利……と思うかもしれないが、この魔術には膨大な魔力を消費しなければならない。そのうえ、神が生み出した魔術であるため現代まで人類が積み上げてきた魔術学では理解出来ない術である。
ちなみにこの陣は調和神アフラの手書きである。
また調和神アフラの術であっても転送まで五分以上の時間がかかるうえ、陣から陣へとしか移動出来ない、転送までの五分間は動いてはならないなどと条件も多くある。
そのため全てのギルドにこのような転移部屋があるわけではない。一部の国の、主に首都や世界都市と言えるレベルの街にあるギルドにしかない。
ミトラは目をぱちぱちとさせながら辺りを見渡す。
何度もこの術を使って転移してきたが、やはり急に目の前の景色が変わるのには慣れないし、やはり時差ボケというのは起こってしまうものだ。
部屋の窓を見ると、空が綺麗な青に染まっている。
(……こっちじゃあ昼過ぎか)
神都で朝でようやく人々が活動し、日常が始まった時間帯であった。
こりゃあ夜になる前には眠くなっちゃうだろうな、なんて思っていると
「どうも初めまして。私はここのギルド長をやらせて頂いております、トラウと言う者です」
と目の前に居るトラウと名乗った男が深々とお辞儀する。
それに合わせてミトラも軽くではあるが、ちゃんと自分もお辞儀するのであった。
「初めまして、さっそくだけどアナトと合流したいんだけれど、彼女が何処にいるのか分かる?」
「申し訳ありません、彼女も転移してすぐに『やるべきことがある』と言ってギルドを去ってしまいました。戻ってくるとは聞いていますが、いつお戻りになるかは存じ上げません」
「そう……分かったわ」
さて、先に行ったアナトの行方先が不明、と。
(まぁ、ギルドで合流するってのは事前に決めてるから合流には問題ないでしょ。でもずっとここにいるのは退屈だし、外に出るか)
そうしてミトラは部屋から出てギルドの外へと出る。