再会 9
数十分後、お昼を食べ終わった一同は旅の目的地へと向かうために荷物をまとめ、焚き火の火を消し、歩き始める準備をするのであった。
しかし、昼が遅くなってしまったこともあり、もう四時過ぎ。夕刻である。普段なら今日の夜を過ごす場所を探し、晩飯の準備を始める時間帯である。
しかし、昼に少しごちゃついたせいでまだ腹は空かないし、目的地へとは少し急がないといけない。
ということで三人は目的地に向かって進みむことにした。
「よし、準備はオッケーかな?」
トーゼツは二人に忘れ物はないか、ちゃんと荷物はまとめ終わったか確認する。
「問題ないわ」
「大丈夫です!」
と二人は軽く返事をする。
「そういえば君たちは何処へ向かう予定なんだい?というか今のスールヴァニアはあちこち荒れているのは分かっているでしょう?逆に色んな人材が外へ流出している状態だ。一体、何が目的?」
やはりどの国でも同じなようだ。
セイヘンでの刃の厄災侵攻時も貴族や商人が逃げ出してしまい、街に残ったのは移住するためのお金もない一般市民や体が不自由な老人であった。
また他国へ逃げられても仕事にありつけられるのか、家族を養っていけるのかと不安要素も大きく、やはり半分以上の人たちが残らざるを得なかった。
しかしトーゼツたちが事前にそれを予測出来ないはずがない。が、スールヴァニアは神が王の国であり、まだ安定していると思っていたがシスの口ぶりからして想像以上の荒れ方のようだ。
だが、トーゼツたちの目的にそんなのは関係ない。
「驚くかもしれないが、俺たちは厄災討伐のために来たんだ」
無職で才能の無いトーゼツが厄災討伐など、いかに神でも驚かずにはいられないだろう。そう思っていたが、シスの表情は変わらず、また驚いた様子もなかった。
「やっぱりね。だったら私と無関係ってわけじゃないし、ついていっても良いかな?」
「そりゃあとても嬉しい話だが……」
トーゼツはエルドとアナーヒターを見る。
神である彼女はとても心強いし、神の力抜きにしてもこの国の事を詳しく知っているはず。であればとても頼りになる存在だ。
しかし、一人で旅をしているわけじゃない。旅仲間の同意を得られない限りハッキリと答えることは出来ない。
「私も良いわよ。ゼンルジシス様が旅仲間になるなんて……もう道祖神の加護を貰ったどころじゃないわよ!」
ゼンルジシスは水と農耕の神だ。旅の神様と一緒にするのは少し違う気もするが……まぁ、言いたいことは良く分かる。
「俺も反対じゃないですし、そもそも俺だって元々部外者な気もするし……」
「そんなわけないだろ?お前も何かあったらすぐに意見を出してくれ。もちろん、俺たちの出す意見に確かな理由があれば反対してくれたって構わないからな」
やはり自分では足手まといにでもなっていると思っているのだろうか。一緒の旅に苦があるわけではなさそうなのだが、発言や態度からするに一歩引いているように感じる。
隣に立つことのできない存在と一緒にいられるわけがない、と。
トーゼツは対等なつもりだし、その関係でいきたいのだがエルドの方が勝手に引いていくのだ。
(まぁ……今は無理でも一緒に居続けたらどうにかなろうだろう)
そのように思考し、意識を切り替える。
「ということだ。今後ともよろしく、シス」
「あぁ、よろしく頼む」
厄災を倒すまでではあるが、新たな旅の仲間、ゼンルジシスを三人は迎え入れるのであった。