再会 7
あれから一時間後。すでに昼を過ぎ、三時近くなった頃。
ゼンルジシスとの遭遇でかなり時間を食ってしまった。が、あのあと最初の約束通りトーゼツと一緒に釣りをして、釣り上げた魚を昼食として一緒に食べることになった。
どのように調理するか、油で揚げるか、それともフライパンでバター焼きにでもするか……と考えていたが全員の腹がぺこぺこであったこともあり、単純に塩振って串焼きにして食べることにした。
「ん〜、コイツはもう中まで火が通っているかな?トーゼツ、先に良いよ」
アナーヒターが焼いていた魚のうち一本を取り上げ、それをトーゼツへと渡す。
「おっ、良いのか?」
「もちろん」
そうしてトーゼツは誰よりも先にその釣ったばかりの新鮮で出来立ての焼き魚を食べる。
「ん!身が引き締まってて美味しい!」
パリパリと焼けた皮に、淡白な味わい。そしてそこに飽きないように広がる塩の味。
その幸せそうなトーゼツを見て、残りの三人はわくわくしながら次の出来上がりを待ち、次にアナーヒター、エルド、そしてゼンルジシスと食べていく。
「いやぁ、いつもと同じ魚を食べているけど、やっぱ誰かと食べるご飯は美味しいなぁ!」
ゼンルジシスもまたトーゼツのような幸せいっぱいの顔で串に刺さった魚を頬張っていく。
「だったら人間社会の中で暮らしていけば良いじゃないか。神の力……しかもゼンルジシス様だったら魔力を誤魔化したり出来るんじゃないか?それとも何か出来ない理由でもあるのか?」
神の中にも等級のようなものがある。と言ってもそれはハッキリ定められているものではない。何か基準があって、一級、二級と言った区別はない。それでも、力の差というのは確かに現れる。
神とは人の信じる想いで生まれるモノ。
つまり、神の力=信仰の強さだ。
どれほど長く信じられていたか、その規模は?どれほどの人間が信仰しているのか。どれほどの地域にまでその信仰は広がっているのか。
ゼンルジシスは世界規模ではない。それでも国内では人気の神の一人と言っても過言ではない。
であれば、彼女に不可能という言葉は無縁だろう。
「……毎度、丁寧にフルネームを言わなくて良いよ。シスと気軽に呼んでくれて構わない。私も神の力と記憶を継承しただけの人間に過ぎないからね。それで私がどうして人間社会から離れているのか、だったね。それはもう知ってるんじゃないのか?」
「神代の幕切れ、人類時代の幕開け、ってことでしょ」
そのシスが逆に問いかけたその言葉に答えたのはトーゼツではなく、アナーヒターであった。
「私は術聖で調和神アフラにも会ったことがあるからね。彼女から神々の総意を聞いたよ。もう数千年前から人は神を信じるのを止め、自分たちの知識で世界を開拓し始めた。だから神の居場所はなく、人の時代が訪れる。だからもう神が人間社会に介入することは極力せずに、人類が完全に独り立ち出来るのを見守るのに徹する。でしょ?」
「ええ、その通りよ」
アナーヒターの答えに彼女は正しいとシスは肯定する。しかし、より正確なものにするために彼女はアナーヒターの言葉に少し付け加えをする。
「と言っても全ての神がそのように思っているわけじゃないけどね。人間だって、一つの物事に対して多数派、少数派って別れるでしょう?反対派の神もいるけど、力を失って自分の存在維持させることも出来なくなってる神が大半。もう人の時代が来るのは確実なのよ。なのに、まだ厄災は残ってるし、今の人類だけじゃあどうしようもならないことが多すぎる。だからこうして神は極力、人との関わりを避けるけど人類だけでなんとか出来るぐらいには成長するまで見届けないとね」