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再会 3

 トーゼツは向こう岸にいる女が何処から来たのか。尋ねようと口を開けるが、先に相手の方から話しかけてくる。


 「おや、珍しいね。こんな所に人だなんて。もしかして冒険者?」


 その澄んだ水色の女は気さくに、笑顔での質問。全くの無警戒であった。


 「旅をしながら冒険者活動をしていて、ちょっと歩いた上流の場所に仲間もいる」


 「おや?一か月前から野営していた冒険者じゃないのね」


 「ん?なんだ、この近くにも冒険者がいるのか?」


 そのように尋ね返すトーゼツだったが、冒険者がいることは別におかしな事ではない。魔物狩りに来る冒険者もいるだろうし、トーゼツのように旅の最中かもしれない。


 しかし、一か月前から来ているという言葉と、彼女の雰囲気にトーゼツは引っかかりを覚える。


 「そうなのよ。十五の厄災が来るとかなんとか言って、一か月前にテントで簡易基地を作って色々している冒険者がいるのよ」


 「あー……なるほどね」


 トーゼツは聳え立つエルドノーンへと自然に視線が向かう。


 十五の厄災の一つ、支配の厄災。


 それはエルドノーンを登頂し、超えてスールヴァニアへと着実に向かってきているらしい。さらに厄災の進路方向から予測すると三週間後にはこの辺りへと到達するらしい。この情報は旅の道中で寄った冒険者ギルドで聞いた情報だ。


 だからこそトーゼツ達もスールヴァニアを訪れ、ここに来たのだ。


 だが、これらの情報を冒険者ギルド連合はとっくの昔に把握しているはずだ。きっと本部から派遣された冒険者の野営基地なのだろう。


 「そういうアンタは何者だ?冒険者じゃないんだろう?」


 トーゼツは話を戻し、追度、尋ねていく。


 「私はもう少し下流の方にある場所で、自給自足の生活をしているの。一人で気楽にね」


 「アンタ一人でか?ここら辺は魔物も時折、出現するしかなり危険じゃないのか?」


 すると彼女は腰のベルトからぶら下げた短剣をトーゼツへ見せつける。


 「私も戦闘の心得はあるのよ」


 確かに、意識してみれば腕の筋肉は剣士のような付き方をしている。と言っても仕事として常日頃、魔物と戦っている冒険者や兵士ほどはついていない。やはり自分の身を守る程度の力と技術しか持っていないのだろう。


 それでも毎日は素振りはしているのだろうな、と思うぐらいの筋肉だ。


 「なるほどね。それなりに戦えるってわけか。そういえば釣り竿持って上流の方へ行こうとしているみたいだが?」


 彼女の口から下流の方へ住んでいると聞いたのだ。下流とは反対の上流に向かっている時点で、家に帰ろうとしているのではなく、何処かへ行こうとしているのは明らかだ。


 「上流の方が魚が多く釣れる場所があってね。今日のお昼ご飯を調達しようと思ってそこへ向かってたんだけど、たぶん君もお昼ご飯目当てで釣りしているんでしょう?せっかくだし一緒に行かない?」


 そう言って彼女は飛んで川へと入ったかと一瞬、思ったが川から顔を出している岩の上へと乗っていた。そしてぴょんぴょんと岩から岩へと飛び乗り、濡れないようにトーゼツの元へと移動してくる。


 「一緒に、か。そうだなぁ」


 地元民しか知らない釣りスポット。


 彼女の口ぶりからしてこのまま下流を行ってもあまり良い釣り場はなさそうだ。相手の方から誘っていることだし、ここは彼女の提案に乗った方がよさそうだ。


 「良いよ。そっちの方が自分で釣り場探すより良さそうだ。そういえば自己紹介がまだだったな。俺の名前はトーゼツ・サンキライだ」


 「……私はシスよ」


 シスが自分の名前を言うときに少し間があった。


 トーゼツは気づいていないが、トーゼツというその名前を聞いた瞬間に彼女の動きが少し硬くなっていた。なんだか思考も鈍くなっているようであった。


 だが、そんな事にトーゼツ派全く気付くことなく、上流の方である来た道を引き返していく。

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