再会 2
トーゼツはエルドが何を考えているのか、分かっていないようであった。が、彼が何かネガティブな感情を抱いているのは読み取ったようだ。
「何を考えているのかは知らないが、心配する必要はないさ。それに今は俺たち三人ともあの戦いの傷が癒えないんだ。助け合っていかなきゃな」
ハルドの首都、レーデルの戦いからは二週間以上が経っている。
激しい戦闘で、特に無茶な魔術運用をしたアナーヒターとエルドの体内はボロボロであった。今でもふとした拍子に吐血したり、鼻血が出たりしている。
しかし、見た目からして痛々しいのはトーゼツであった。
体中に出来た擦り傷に、巨大な鎌で斬れらた痕も多い。二人が体内に対しトーゼツは体外の傷が多いため、ぐるぐるの包帯を巻いた生活が続いている。
歩いくだけでも傷口が開いてしまうときもあり、今も包帯の一部は赤く染まっている。
しかし、体内に問題がある場合、何処に、どのような負傷を負っているか分からないため使える回復魔術は限られてくる。それに対し体外の傷口は何処に、どのような、そしてどれほど深い傷を負っているのか見てある程度分かるためどのような回復魔術なら効くのか分かるのがまだマシな点である。
「さて、俺も釣りを始める前に包帯を変えて回復術をかけておくか」
そういって、まずは腕の包帯を外し始め、綺麗な川の水で洗い始める。
「じゃあ私がかけてあげるよ」
「おっ、本当か?サンキュー」
そのように疲弊していた自分たちの体をまずは休ませていく一同であった。
それから数十分後。体が落ち着いてくるとエルドは魔術で熱を発生させることで空気を燃焼。それで火を生み出し、近くの林から拾ってきた木で焚火を始める。
アナーヒターは近くに魔物がいないか索敵し、トーゼツは川で魚を釣っていた。
「うーん、二匹釣れたがもう他の魚が警戒して良い反応がなくなってきたな。もう少し流れが緩くて色んな魚が居そうばスポットを探して移動するか」
そうしてトーゼツは川を下流の方へと少しばかり歩いていく。
心地よい風が吹き、川から感じる冷たく空気も日が照っている今では気持ちの良いものであった。それは疲れ切ったトーゼツの心を心地よくさせてくれる。さらにこんな良い場所から見る大山脈は美しく見え、感動を覚えるものであった。
そうして歩いているとトーゼツがいるのとは反対の岸から上流へ向かってくる、つまりトーゼツへ近づいてくる形で向かってくる影があった。
「こんなところに人?俺と同じ冒険者か?」
スールヴァニアへ前にも来たことがあり、その時もここを通ったことがある。その時の記憶からしてこの辺りには村や集落などはなかったはずだ。
ゆえに、人がいるなんて珍しいな。なんて思いながらトーゼツは近づいてくるその影を眺めていた。
そして、一分も経たないうちにその影はよりはっきり見えるほどに近づいてた。
それは自分よりも年上の女であった。この川のように澄んだ水色の髪をした女で、トーゼツ同様に釣竿を持っていた。