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手合わせ 6

 ミトラの二度目の攻撃は下から上へと斬り上げる攻撃であった。


 速度を乗せて威力を倍増させるその一撃をトーゼツが真正面から受け止めれば、簡単に後方数百メートルまで吹っ飛ばされてしまうだろう。


 だが、避けられるほど身体能力は高くない。


 避けれない。だが、受け止めるわけにはいかない。


 では、どうするか。


 (まずは、逸らす!)


 トーゼツはミトラの攻撃とは対照的に上から下へと振り下ろす。


 ガチッ!と大きな音と衝撃が鞘を伝って二人の体に襲い掛かる。


 「ッ!」


 トーゼツはその衝撃によってまるで雷にでも打たれたかのような強く痺れた感覚へと陥る。


 「ははッ!」


 それに対して、軽く笑うミトラ。


 「また同じような状況に……」


 観戦しているエルドは、やはりトーゼツには勝ち目なんてないのか……なんて考えていると


 「いいや、まだだよ」


 メユーはやはり、トーゼツにも勝機が残っていると思っているようだ。


 「ッ!?」


 ミトラは体勢を崩す。それは、最初の攻撃でも行った、攻撃を逸らす技であった。


 しかし、想定の範囲内。


 下から上へと移動した剣の刃の向きをすぐに変え、今度は振り下ろすように斬り変えてくる。


 だが、その攻撃もすぐに逸らしてみせるトーゼツであった。


 その後も、何度も、何度も、何度も逸らされるたびに追撃するのだが、それをなんともないように、冷静に、それでいて確実に逸らして対処していく。


 (全部、逸らされる!?)


 逸らす、とだけ言えば容易に出来るように感じるが、かなり至難の技だ。力の向き、入り方、速い攻撃ならばそれを完全に捉えなければいけない、そして受け止める時のしなやかさも重要だ。


 これを一度、二度ならず、何度でもやってのけるとなると—


 (私の想定していたよりも、この男、かなり強い!!)


 才能ないゆえに、努力する、弱点があるのであれば、それをどう対応するべきなのか、事前に考え、行動できる技術を身につけている。まさに、努力の天才だ。


 (これは、使わざるを得ないな……)


 身体能力向上に使っていた一部の魔力を剣に乗せる。それと同時に、あんなに素早い動きをしていたのにも関わらず、ほんの一瞬、されど一瞬、ピタ、と動きが止まる。それはより強い一撃を行うための溜めであり、剣術を使おうとするその前触れであった。


 (来るか!)


 トーゼツは後ろへ素早く五歩下り、より強く意識して構える。


 「上級剣術」


 ズズズ、と鞘に纏う魔力が蠢き始める。


 「飛翔一閃ひしょういっせん


 バスンッ!と剣を振り上げる。その瞬間、魔力は飛ぶ巨大な斬撃となってトーゼツへと襲いかかる。


 「ちぃッ!」


 さすがのトーゼツもこの一撃は逸らしきれない、そう悟った瞬間、考えていた別の手段へと移行する。


 「中級魔術!」


 三つの魔法陣がトーゼツの目の前で展開される。そして


 「〈ハード・ウォール〉!」


 魔法陣に魔力が流し込まれ、中の図形がまるで機械の歯車のように呼応して動き出す。そして、魔術発動に必要な工程を魔法陣内部で終わらせると、三つ全ての魔法陣が消え去る。しかし、消えた代わりに三つの透明な壁、つまりバリアが出現する。


 「防御魔術か。だが、中級程度の魔術だ。しかも三つ重ねることで威力を殺そうとしているようだけど、その程度で無力化できるほどの弱い一撃じゃない!」


 彼女の言う通り、トーゼツの狙いは威力を殺すことであった。だが、完全にバリアのみで止めようなんて思ってなどいなかった。トーゼツにはさらにその先のことを見据えての魔術展開であった。

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