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忍び寄る影 3

 そのような会話の最中、まさに神が住むにふさわしい豪華絢爛で、一般人でも近寄りがたい神聖な空間に何かが起こる。


 何かが満ちていく。神聖とは真逆のナニカ。それを形容するのであれば、人々を狂気へと導く闇。そんな場所に黒い風が吹き荒れ始める。


 「ははははははははっ!」


 気分が悪くなってしまいそうなほどの嗤い声。


 黒い風は小さな渦を巻き始め、その渦の中央に人型の影が形成されていく。


 それは、死神が持つような巨大な鎌を持った、ローブを見に纏う少年。アルウェスであった。


 少女は驚きや恐怖さえなかったが、警戒しながら自分の身を必ず守ってくれるだろうテイワズへと近寄る。


 「また来たか。不浄の死者よ」


 テイワズは先ほどの気だるそうな雰囲気を正し、堂々とした態度……というよりも相手を見下した態度と言った方が正しいのかもしれない。ともかく、テイワズはまるで生ゴミで見るかのような目つきでソレを睨んでいた。


 「勿体なき言葉として受け取っておこう!ハハッハっハァ!!」


 相変わらずな嗤い声を上げながら、アルウェスは続けて話し始める。


 「貴殿の力であれば厄災など簡単に倒せるでしょうに、動かないとはね!それは好都合!!」


 「……それだけを聞くために訪れたのならばさっさと立ち去れ」


 「もちろん、それだけじゃあ、ありませんよ!なぁに、私が今日ここに訪れたのは不可侵の契約についてですよ!貴殿が契約を結んでくれれば我々の計画はさらに進む!!そしてこの国も万年と言っても過言ではない太平の時代が来るんです!!」


 「不可侵……か。何度も言わせるな。今のところ、心変わりはない。お前の計画は賛同出来ないし、この国はこの国の人間が何とかする。それにお前らの計画が成せるものだとは到底、思えん。仮に達成しようとするならばその時は全力で捻じ伏せる」


 その威圧的で、非友好的な態度にアルウェスは動じず、やはり嗤っている。


 「我々の全戦力と貴殿一人じゃあ、どっちが勝つのか?それは貴殿自身が理解しているでしょうに!」


 「……今、ここで試してみるか?」


 嫌な雰囲気が漂うこの空間にテイワズの影が伸び始める。それは影でありながら全てを飲み込むような黒くではない。逆にあらゆるモノを生み出しそうな暖かな白。


 アルウェスの狂気とテイワズの神の力がその密室の部屋でゴゴゴッ!と拮抗し始める。


 片方は口が裂けているのではないかと思うほどの嗤い顔。一方は全く動じず、やはり汚いモノを見ているかのような目で睨んでいる。


 その時、テイワズの服のすそを掴み傍で震える者がいた。


 それに気づいたテイワズはすぐさま伸ばしていた白い影を引っ込める。


 「()めだ。結果が分かっている事をやるのは面白くない。本当にこの国をお前らが荒らすというのであれば殺す。世界を破滅へ導いても殺す。私に喧嘩を売れば、それも殺す。それを肝に銘じておけ。少しでも長生きしたいのであればな」


 その恐ろしいほどの表情で、たんたんと述べたセリフに対し、「クックっク!」と嗤って黒い風を纏い始めるアルウェス。


 「なるほど。それは重要なことだ。であれば、それを肝に銘じて、忘れないようにしておきますよ」


 そうして、黒い風と共にそこから消えるアルウェスであった。

 

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