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忍び寄る影 2

 全く動じない、というかただひたすらめんどくさそうにしているテイワズに少しばかり苛立ちを覚えながらも少女は続けて叫ぶ。


 「ですが国民の意見は違います!それにこの国の王でもあるんですよ、アナタは!先代のテイワズ様だってより国を発展させるために多くの留学生を西方諸国へと行かせ、子供のためにいくつもの学校を設立させました!なのに、アナタは……!」


 今代のテイワズの評判はとても悪いものだ。


 何せ、国のおおまかな方針を決めた程度で、あとは全部、官僚や高官と言った者に政治を任せている。さらに近年は西方諸国の目覚ましいほどの技術発展が顕著である。


 それは魔術に留まらず、蒸気を利用した乗り物も発明されているという。


 スールヴァニアの港に貿易で訪れる船の中には、モクモクと強く、それでいて激しく煙を吐き出しながら見たことないスピードで進む船があるという。


 しかし、未だにスールヴァニアは風の力だけで動かす帆のみを頼りにした船しかない。


 技術で負けているのは明らかだ。そして西方諸国の製品が国内に流れてきており、経済も不安定になり始めている。唯一、増えているのは人口だけだ。


 そこになんと、あの十五の厄災の一つ。支配の厄災が北の大山脈エルドノーンを超えて接近中との事だ。それで国内は混乱状態。


 去年までは多くの商人や投資家が人口増加によって経済発展されると予測し、いろいろと投資をしてくれていたが、それにもかげりが出来始めている。


 「先代のおかげで技術と知識だけはある国なのですから、それを国内で活かしましょうよ!活かせてないから、多くの優秀な人材が他国に流れていくんです!」


 「だから何度言わせる。それは神の仕事ではない。西の果てに居るあの調和神も人間社会へ介入することを良しとしていないだろう?先代が介入したのは、介入しなければならないほど国内状況が悪かったからだ。不作で食べ物はない、経済は回らない、官僚では汚職が当たり前、他国のスパイがあちこちで情報戦が起こってた。いつ乗っ取られてもおかしくなかったのだ。だからそこにテコを入れただけに過ぎん」


 まさにテイワズは聞く耳を持たないという言葉がふさわしい状態であった。


 それに対し、少女は「はぁー」と諦めの気持ちを込めた深いため息をする。


 「まぁ、お前の気持ちも分からんことはない。数千年、人類の障害となり、災害として暴れてきた十五の厄災。我が国、ルールヴァニアは大山脈エルドノーンのおかげでそれらとは無縁だった。しかし、一千年以上の年月をかけてエルドノーンを登り切って来るというわけだ。だが、安心しろ。どうせ冒険者ギルドの本部から剣聖やら術聖が来る」


 「結局、他国から来る冒険者に頼るってことですよね?」


 「他国も国内も変わらん、同じ人間だ」


 テイワズが食べていたリンゴはもう芯だけになっており、それをテーブルへと置いて、綺麗な白い布で果汁で汚れた手を拭くのであった。

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