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忍び寄る影

 南方諸国の一つ、スールヴァニア。


 近年では爆発的に人口が増え始めている国で、将来は大国へと成る可能性のある国として多くの商人、政治家、資本家に注目されている国である。


 また北には大きな山脈があり、現在でも登り超えることは困難である。また北は海に面しており、昔は他国との交流が少なかったとされている。そのため、スールヴァニアは他国に比べ、とても独特な文化が発展してきた。


 食文化、思想、政治に歴史……本当に調べるだけで飽きない国だ。


 そんなスールヴァニアの面白い点は『神話』にあった。


 この世界のほとんどは共通の神話である。調和神アフラが頂点に立ち、神々の時代があり、時を流れて人の時代へと変遷してきた、と。


 しかしスールヴァニアの神話は全く異なっている。


 この国において、神々が世界と人を創造した。そしていつか現れるとされている世界を覆う闇に対抗するために人々を導いているとされている。


 そこからさらに面白いのが、この神話では神も寿命を持つとされている。そのため、神は死ぬ前に一人の人間を選び、その者に記憶と力、そして名といった全てを継承させるという。


 そして現在、この国の王はテイワズという者であり、彼こそが名を継いだ今代の最高神とされている。


 そんな彼はスールヴァニアの首都、エムドノレスの中央にある大きな城に居た。



 「テイワズ様!テイワズ様!!!」


 それは城の中。そこでは一人の少女が叫びながら廊下を走っていた。その廊下の奥には一つの大きな扉がある。それは人、一人では開けきれないように感じるほどの扉。


 それを少女は歯を食い縛りながら開け、「はぁ、はぁ!」と息切れしながら叫ぶ。


 「テイワズ様!!」


 「なんだ、うるさいなぁ」


 その部屋には多くの甘くて美味しそうな果実が乗ったテーブルに、そのそばで高そうなソファに寝ころびながら葡萄を一粒ずつ楽しんで食べている男がいた。


 「どうしたというのだ、我が継承者よ。また熱い夜を今日も過ごしたいというのか?」


 その言葉に、少女は少しばかり頬を赤らめるが頭を強く振って雑念を払う。


 「そんなことじゃありません!外の騒ぎの事に決まってるじゃないですか!?」


 そういわれ、彼は体を気だるそうに起こし、ソファから立ち上がる。そして一番近い窓から外を見る。すると、外壁には多くの人が集まっており、何かを訴えている。


 「ふん、飽きずに毎日よく居るわ。十五の厄災程度、どうってことなかろうに」


 そうして、彼は持っていた葡萄の最後の一粒を食べると、テーブルへと手を伸ばし、今度は赤くて綺麗な林檎を齧り始める。


 「そりゃあ国民は不安ですよ!それに今回はチャンスでもあるんですよ!神々の力で厄災を討伐し、国内外へと見せつけてやれば、神の力を疑わなくなり、内政は安定!他国はより一層、干渉する余地はなくなる!」


 と言ってテイワズを何とかして動くように焚きつけるのだが


 「全く、何度言わせるのだ。私は(まつりごと)のために神をやっているのではない。この世界を……正確に言えば人類を守るために神をやっているのだ」


 彼はソファへと戻り、そのふかふかのクッションがついた背もたれに体を預けるのであった。

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