神都 8
立ち去る三人を眺めながら、少しばかりボーッとしていたミトラ。
「大規模プロジェクト、ね……」
エイルはテルノドへと怒りをぶつけている時にそう言っていた。
冒険者である彼女にとっては関係なく、また厄災討伐という大きな任務を背負っているミトラは別の事に首を突っ込むような真似はしたくない。それに特段怪しいものではないだろう。
しかしアフラへ定期報告をしている辺り、あの放置、放任、とにかく人間にやらせて自分は見守るだけに徹底しているあの調和神が珍しくかなり介入していると見てよさそうだ。
故にとても気になるプロジェクトだったが……まぁ、聞く前に立ち去ってしまったし、また聞く機会はあるだろう。
それよりも今は次の任務に向けての準備期間という名の休みの時間だ。明日、明後日は冒険者連合にある自室でこもって、美味しいご飯を食べて、自分のベッドで思いっきり安心して寝て、休んでしまおう。
そのようにだらける事だけを考えながら彼女は玄関のドアを開ける。
すると、目の前は明るくなり、太陽光の温かい光に包まれたと思えばそこは建物から入ってきた場所へと出ていた。
やはり、この黒い長方形の建物の仕組みは一生理解出来ないのだろうな。なんて思いながら彼女は冒険者連合本部に向けて歩き始める。
その最中も、やはり来た時のようにあちこちでミトラに向けて視線が注がれている。
しかし、彼女はもう気にしなくなっていた。
それは休みの時間を手に入れて余裕が出来たからなのか。それとも逆に休みが明けたのちにやらなければならない任務がキツいものだからなのか。
もちろん、その二つも要因としてあるのかもしれない。しかし、一番の要因は『知っている者もいる』というのが分かったからだろう。
ポットバックに、調和神アフラ。今のところ、この二人だけが私の力で厄災討伐を成し遂げたわけではないというのを知っている。討伐してから向けられた目はとても心が苦しくなるものだった。
自分の身の丈に合わない。実力に見合ってない視線に、祝いの言葉。それが自分にだけ向けられることがとても嫌だった。
だが、こうして知っている者がいることが分かれば、少しはその苦しみを和らぐものだ。それに、知っている者がさらに増えればきっとトーゼツとアナーヒターの二人の存在も露わになる。そうすれば本部へ招集しようという流れが出るはず。
それでようや自分のこの気持ちは救われるはずだ。そのように無意識のうちに考えていたミトラだからこそ、周囲の目が気にならなくなったのだ。
そうして歩いているうちに冒険者ギルド連合本部へと到着し、彼女は慣れた感じでその入り口のドアを開ける。
そこは大きな部屋。本部などと言っているが、普段のやっていることは他のギルドと変わらない。自治体や個人から依頼を受けたり、冒険者登録を行ったり……などだ。
ゆえに他のギルドのように入ってすぐには受付に、冒険者の待機スペースがあった。
……まぁ、他のギルドに比べれば圧倒的に立派で、広かった。また飲食などのサービスも行っており、冒険者だけではなく一般市民も昼食を食べに来ている。その空間はとても賑やかであった。