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神都 7

 ミトラは再びエレベーターに乗り込むと下の階へと戻り、中庭の見える廊下を通ってあのホテルのようなロビーへと戻る。


 すると、来た時には誰もいなかったその場所に見知った顔が三つあった。二人は女、もう片方は男である。また女のうち一人は背丈が子供と勘違いしてしまうほどの低さ。


 しかし、共通してあるのは魔術師であると証明するように持っている三つの杖であった。


 そんな三人の魔術師は仲良くソファに座って飲み物を飲んでいた。


 「おや、あなたは—」


 真っ先に彼女の事に気づいた男。コーヒーの入ったコップをテーブルに置き、彼女へと意識を向ける。


 「お久しぶりですね、剣聖ミトラ・アルファイン様」


 「ええ、そうね。久しぶりね、テルノド。魔術学連合本部に引きこもりのアンタがこんな所にいるなんてね」


 魔術学連合とはその名前の通り、魔術を一つの学問として勉強、研究する機関である。また冒険者連合の設立者が同一人物であるため、この二つの組織は色んな面で密接に関わっていることが多い。


 ちなみに連合設立者はあの調和新アフラである。


 「私たちはアフラ様に研究結果を報告しに来ただけですよ。ったく、コレを外へ出すためにどれだけ頑張ったことか……」


 そのように背丈の低い女は少しばかり怒りというか、失望というか……。なんだかめんどくさい雰囲気を纏わせながら、その感情の押さえ込むようにズズズっと紅茶を飲みながら言う。


 「はぁ、私はあまり外に出たくなかったんだけどなぁ……」


 背丈の低い女の言葉に、軽くため息をつきながら反応すると


 「バカじゃないの!?今、本部で行われている大規模プロジェクトはテルノドを主軸に進んでいますのよ!なのにアンタが定期報告に来ないってありえませんわ!!」


 そのように鬱憤を晴らすように叫ぶが、テルノド本人は全く反省するような素振りはなく、軽い気持ちで「あぁ、悪かったね」と思ってもいない謝罪を述べる。それにまた怒りが増長される彼女を見て


 「アンタも大変ね、エイル」


 と背丈の低い女に同情するような目を向ける。


 「全く、騒がしいわね」


 もう一人、ずっと黙っていた女も口を開け、怒り狂いそうになるエイルを制止するように言葉を紡ぎ始める。


 「二人も術聖でしょうに。ったく、せっかく地上支部から本部へ昇格して来たっていうのに……。先輩の一人は外へ出ない、自分事しか考えないエゴイスト。もう一人は叫んで怒りを発散させるヒステリックな人だなんてね。本部はもっと私が輝ける場所だと思っていたのに」


 その女は立ち上がり、ミトラがやってきた方向……つまりエレベーターへと繋がる廊下のある方向へと歩き始める。


 「さっさと定期報告済ませて帰るわよ」


 そうして、一人でさっさと行ってしまう。


 「ったく、ファールジュはせっかちで他人見下してばっか。私のことをエゴイストって…傲慢にもほどがあるよ」


 「そうですわね、エゴイストのアナタと変わりませんわね」


 「君も私をエゴイスト呼ばわりか!?ひどいなぁ」


 そのように冗談か本当か、分からないような会話をしながら二人も去っていくファールジュの後を追うようにソファから立ち上がり、歩き始める。

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