神都 3
ポットバックは彼女の言葉を肯定したうえでさらに話を続ける。
「お前は剣聖だし、世界屈指と言っても過言じゃない強さだが、史上屈指じゃないだろ?厄災に打ち勝つには人類史上で最強と思われる強さが必要だからな」
厄災討伐に向かっている時は倒す気満々であったため、こうして元から厄災を倒せないと思われていたのは少しばかり癪なのだが、実際戦ってみてぞれは事実であるため彼女は何も言えなかった。
「話はそれだけ?」
「ああ、そうだ。俺はその事実を確認しに来ただけだ。俺も暇じゃないし、お前もやることがあるだろ?だからあとで誰がお前の手助けをしたのか、時間があればじっくり聞かせてもらおうか」
そうしてポットバックは玄関にある大きなドアから開けて外へと出ていく。
「はぁー…少し疲れるわね」
ポットバックの事は嫌いではないのだが、あまり得意な相手ではなかった。そのため、少しばかり無駄な神経を使わされた彼女はさらにため息を重ねながら奥へと進んでいく。
ロビーを抜け、廊下へと出る。
廊下は吹き抜けとなっており、中庭とつながっていた。
あんな真っ黒の窓のない長方形の建物の中とは思えない光景で、さらには上には空が広がっており、太陽光もしっかり流れている。そして、地面は整えられた芝生が広がっており、そのうえで何人かの冒険者が剣の素振りを行っていた李、模擬戦などをして訓練を行っていた。
そんな様子をちらりと見ながら
「本当、この建物の仕組みはどうなっているのかしら?」
と思うミトラであった。
もう慣れてしまっているからこそ、今では驚きはない。が、それでもなおこの建物の構造、仕組みが理解できていない彼女は時折、頭の中で疑問が現れる。
だが、建築士ではないし、この建物は人間が造ったわけではない。ので、きっと構造を知っている者に話を聞いても理解できないだろう。
そうして彼女は中庭が見える廊下を過ぎると、そこには二つのドアがあった。そして、そのドアの中間には二つのボタンが壁に埋め込まれていた。その有様はまさにエレベーターである。
彼女は上へ向かうボタンを押すと、すぐにそのドアは開き、彼女は上の階層へと向かう。
何も言わず、動かずのためそのエレベーター内部ではウィーン、と上へ昇っていく音しか響かない。
これまで広がっていた中世ヨーロッパの世界だったが、急な現代的なモノが現れて驚いているかもしれないが、本当はこのエレベーターの稼働に使っているエネルギーは電気ではない。魔力である。
この建物は実は神代の頃、神々によって造られた建造物である。神々は異世界の技術をも利用して建造しているため、きっとこの世界に人間がこの仕組みを理解するのにはあと数千年もかかるだろう。
そうして神々のエレベーターは最上階へと到達し、チーン!と到着したことを知らすベルの音を鳴らす。