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狂気 37

 トーゼツはアルウェスへと接近し、蹴りを入れようとする。


 話している最中の攻撃。卑怯と言われるかもしれないが敵の目の前で会話をしだすのも大概である。


 しかし、アルウェスはそれを華麗に躱して会話相手であるイルゼの方へと歩いていく。


 「少し喋って頭が冷えたよ!あと、脳内に酸素が行き始めたかな?どちらにせよ、今日はもう君の相手をするのは止めることにするよ。トーゼツ・サンキライ」


 「おいおい、逃げるつもりか!」


 トーゼツもふらふらと不安定な動きでアルウェスを追いかけるように歩き、挑発する。


 しかし、その挑発もまた嗤って見せる。


 「はっはァ!分かりやすい挑発だな!俺がそれで君にかまうと?なわけがないじゃないか!まぁ、まだまだ君への興味は尽かないし、次のタイミングだな!さて、イルゼ。俺にはもう魔力が残ってないんだ。すまないが、術の発動よろしく」


 そういってアルウェスは紙切れを渡す。ただの植物由来の紙ではない。動物の皮で出来た紙……つまり羊皮紙である。その紙切れには一つ魔法陣が描かれていた。


 その時―


 「やっと追いついた!」


 それは逃げていたイルゼを追いかけていたアナーヒターであった。


 「おっと、術聖も来たか。その行先は決まっている。さぁ、頼むよイルゼ!」


 「そうだな。ここで捕まるのは勘弁だし、今後も君たちと遊びたいからね。いったん、引き下がらせてもらうとしようか」


 そうしてイルゼは羊皮紙へと魔力を流し込み、魔術を発動させる。


 すると二人の前の空間にヒビが入る。それはまるで石を投げつけられたガラスのように。そして、パリッ、パリパリッ!と完全に割れて黒く大きな穴が出現する。


 「逃がすか!!」


 アナーヒターは体内に残ったすべての魔力を使って絶大級の魔術を発動させようとする。魔法陣の展開も、詠唱するほど時間に余裕はない。一刻も発動させなければ逃げられる。


 体に無茶をさせるのを理解しながらも、彼女は拘束系の魔術を発動させようとした瞬間


 「ッァ!!」


 脳が破裂しそうなほどの痛みが頭を駆け抜け、一気に鼻に口、眼から血が噴き出る。


 「ははッ!少ない魔力で、そんなに脳の負担をかけるからそうなるんだ!」


 イルゼは嗤う。


 「まぁ、安心してよ。このリターンマッチは必ず来る。それが近いうちか、遠い日か。その時を待っててよ。その時こそ、アンタをぶっ殺してやるからさ!」


 そうしてイルゼは真っ先に空間に空いた穴へと入っていく。


 「では俺も去るとしよう。それではごきげんよう!トーゼツ・サンキライにアナーヒター!また会える日を楽しみにしているよ!」


 そうして、その場から彼もまた消えていく。


 そこに残ったのは、ボロボロで体が思うように動かないトーゼツと最後の最後まで体に無茶させたことで血まみれになっているアナーヒターの二人だけであった。

 

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