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狂気 36

 一方、その頃。


 トーゼツとローブの少年は未だに戦っていた。しかし、これまでのような熾烈な戦いではなくなっていた。魔力もなく、体力も少ない。ゆえに、体が思うように動かない。


 お互い、息切れしながらも重い武器を持ち、ゆっくりと動いている。


 ローブの少年はぶん!と大きく持ち上げた鎌を振り下ろす。しかし、そこに力は入っておらず、魔力も纏われていない。また気迫のようなものもない。戦闘経験のないものでも捉え切れる速度。


 トーゼツはそれを避けて剣で下から上へと斬りかかろうとする。しかし、トーゼツは疲労で視界がぼやけており、体もフラフラ。ローブの少年は避けるまでもなく、その刃の行先が勝手に逸れていく。


 攻撃を外した隙に攻撃しようとしたが鎌が持ち上がらない。少年は鎌を一旦捨てると拳を強く握りしめ、一歩強く踏み出しよりトーゼツへと近づ。そして、その拳で殴り掛かる。


 その一撃は右頬にクリーンヒットする。が、トーゼツは倒れることなかった。だが、もうトーゼツにも剣を上手く扱えるような力もないのは明白。先ほど攻撃を外したことでトーゼツ本人もそれは理解している。だからこそ、彼も剣を捨てる。


 しかし、攻撃に使ったのは拳ではない。腕にも力が入らないため、パンチなどダメージを与えることすら出来ないかもしれない。では、どうするのか?


 トーゼツは両手でローブの少年の両肩をつかむと、そのまま思いっきり頭突きを喰らわせる。


 「っらァ!!」


 ローブの少年の顔面にぶち当たり、ぽたり、と鼻血を出させる。しかし、頭突きをしたトーゼツ本人も痛いことには変わりない。


 トーゼツはさらに視界が揺らぎ、今にも意識を失って倒れそうになる。


 「ははッ、痛み分けだねぇ!」


 「なんの…まだ……まだァ!!」


 二人はどちらかが潰れるまでこの戦いを止めないつもりだろう。だが、それを邪魔するようにソレはこちらへと逃げてきた。


 「撤退だよ、アルウェス!!」


 そうして現れたのは、金色の髪をしたエルフ……イルゼであった。


 「おや、イルゼ。君もかなり痛々しい姿になっているじゃないか。ハハハッ!」


 彼は仲間の負傷さえも嗤う。まるで弱いお前が悪いというようにあざけて楽しんでいる。


 「アンタも他人ひとの事言えない状態じゃないか!」


 イルゼもまたローブの少年こと、アルウェスと呼ばれた少年を見て嗤う。


 お互いを馬鹿にして嗤っている。その口調や表情を向けられると、普通の人間は怒るだろう。メンタルの弱い者であればへこむかもしれない。


 だが、嗤われることすらも楽しんでいるようであった。


 「その雰囲気からするとアナーヒターもヤバかったようだね!」


 「そりゃあとんでもなく!初めて術聖と戦ったけど、化け物だった!あぁ、あの時間はとても素晴らしく楽しかった!あはッ!」


 「ほう?私の知る中で一番の戦闘狂であるイルゼがそう言うんだ。やはりアナーヒターも侮れないということか。これはまた面白くなりそうだな!!」


 二人だけで会話がはずんでいく。まだ完全に戦いが終わったわけではないのに、もう大盛り上がりだ。

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