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再会

 『ピピピピピピ……』


 目覚まし時計のアラーム音により目が覚め、スイッチを切った後でトイレに行こうとした時に壁掛け時計の時間も確認する。


 ………マジか…!!

 何でこんな時間…!?

 痴漢を捕まえた次の日の朝、目覚まし時計の電池が無くなりかけていたのか、アラームが鳴り出したのが急いで準備して出発すれば遅刻をギリギリ回避出来るくらいの時間だった。


 クッソ、今日家に帰ったら目覚まし時計の電池を替えないととダメだな…


 急いで支度をし家を飛び出て府中駅に向かうと、昨日と同じ時間の電車に乗れそうだったが、やはり混んでいた。

 


 くさびを打ち込む様にムリヤリ身体を車内にねじ込むと扉が閉まり発車する。

 もうこのモミクチャ感がイヤだ…明日からは本当に早く家を出よう。

 そう思った時、電車が揺れて車内の人が全員よろけ、俺の背後に少しだけ隙間が出来た。

 その後背中に柔らかい感触がしたのと同時に、誰かが俺の頭をワシャワシャと触っている。

 …そういえば一昨日もワシャワシャされた気がする…

 フザケるなよ、誰だ俺の頭を撫でくり回すヤツは…!

 混雑で身体を動かせないため首だけ後ろを振り向くと、昨日痴漢から助けた女の子が目を瞑りニコニコしながら右手を俺の頭の上に乗せて、


「わふーっ。」


とか言いながらワシャワシャと動かしていた…ナニコレ?

 

「オマエかっ、一昨日俺の頭をワシャワシャしたヤツは!」


「あっ…バレちゃいましたかっ、貴方の頭を見てたら昔飼ってた犬を思い出して…テヘッ。」


「テヘペロじゃねーよ、全く…。」


「あの、昨日はありがとうございました。

 ちゃんとお礼がしたいので、連絡先を教えてもらえませんか?」


「あぁ、別に構わないケド…」


「じゃ、また明日、さようなら。」


「エッ、どういう事!?

 まだ連絡先の交換してないのに?」


「私、この駅に学校があるので、ここで降りないといけないんです。」


 女の子が言った通り、丁度俺が乗った駅の次の駅、昨日の痴漢の逮捕場所である分倍河原駅のホームに電車が着いたところだった。


「じゃあ俺達、一駅分しか一緒に電車に乗れないのね!?」


「そうみたいで〜す〜ね〜……」


 女の子は扉が開くと同時に人混みに攫われてホームへと降りて行ったので、


「俺はこの時間に電車に乗ると学校遅刻しちゃうから、明日は出来たら2本くらい前の電車に乗ってくれると助かる!」


と叫んではみたが、聞こえたかな…

 まぁ聞こえなかったらそれまでだ。


 扉が閉まり、発車した車内にいる人達は皆俺の方を見てニヨニヨとしていた。

 ……ハッ!?

 恥ずかしい会話を聞かれてしまった…!

 そこに昨日ビニール袋をくれた中年男性が居て、俺に声を掛けて来た。


「昨日は無事に痴漢を警察に引き渡せたか?

 青春だなぁ、オイ!」


とニヨニヨしていたので、俺は女の子の真似をして、


「テヘッ!」 


とテヘペロをカマしたった。

 

 …まさかここでニヨニヨしてるヤツ等全員、俺達のラブコメを見たいがために明日2本前の電車に乗り換えて来るなんて事、しないよな…?

等と考えていたら、思い出した。

 

 そういえばまだ女の子の名前聞いてないや!

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