【009】激突!モンスター大行進(下)
「」は台詞。””は思い・心の中の台詞。『』は名称・擬音・スキル・その他
遂に激突す。トシゾウ指揮の下で約700匹以上のモンスターとの激闘が繰り広げられる。
まずは、モンスター版『火牛の計』、オーク部隊をどう料理するか?
トワイライト達中央の大盾隊が横一線に並ぶ5メートルほど前で土煙、血地吹が舞い上がり『ボゴッ』っと骨の砕ける音が同時に幾つも鳴り響く。
一瞬の間の出来事であった。大猪の集団に続いて大牛の集団が防御陣中央のトワイライトの居る大盾小隊に集団で突撃を掛けたのである。
横一杯に広がった大猪が次々に血飛沫と骨の砕ける音を上げて止まる。窓ガラスに卵を投げつけた様な跡が大猪がぶち当たった場所に付く。真っ赤な血の色だ。
大猪が見えない壁にぶち当たり、直ぐ後ろにいた大牛も見えない壁にぶち当たりその場に崩れる。瞬く間に大猪と大牛の動かなくなった骸が死屍累々と積み上がる。
一瞬遅れてトワイライト達大盾小隊と大猪や大牛の死屍累々と積み上がった屍の山の間に、何も無い不自然な空間が横たわっている。
普通に景色の一部として見えていたその不自然な空間には、景色・画像に割れ目が次々と走り白い線が幾重にも入り乱れて線画の様になり瞬く間に半透明な氷河・氷の塊に見えてくる。
質感が変わり巨大な堤が横たわっているのが浮き出てくる。
パーンと割れて飛び散る感じでその不自然で白く成った空間は砕け散った。
砕け散った欠片が風に散る桜の花びらの様にヒラヒラと風の流れに舞い左側に流れていく。
不自然な空間が有った場所に石造りの防波堤が姿を現した。
トワイライトは『光学迷彩』と呼んでいるが、魔法使いの魔法で『幻影』の上位魔法で『インビジブル』と言う魔法が解けた時の現象だ。
高さ4メートル幅4メートルの長い石柱を横長に配置し防波堤にした物を『光学迷彩』(インビジブル)で見えなくしたものだった。
その防波堤を隠した『光学迷彩』は触れると魔法が解けるので触れない様に防波堤手前30センチの所に線を引き「この線から前に出るな」と厳命していた。
石の防波堤は、防御側・トワイライト達が居る側は2メートルの距離で高さ4メートルを上がる急角度の階段に成っていて、反対側は垂直の絶壁になっている。
トワイライトが右手を挙げる。右肩から肘まで右真横に、肘から先を垂直に上げて手の平は開いたまま号令をかける。
「弓隊ま前へ!!」
約30名のエルフの弓兵が駆け足で大盾小隊の間をすり抜け追い越し防波堤の上まで駆け上がる。
階段を駆け上がり広さ2メートルの平場の端に着くタイミングで次の号令がかかる。
「打ちー方用意!」
防波堤の上部の前端でエルフの弓兵達が弓を射る動作のし易い横との距離を開けて射る体勢に入る。
その行動、中央が射撃体勢に入ったのを見て両翼にある横長の櫓に登っているエルフの弓兵達もヴァネッサやミレイの声で「構え!」と号令が掛かり、それぞれ弓に矢をつがえ引き絞った。
防波堤の上では数メートルの至近距離に大牛が約38頭、大猪が数頭が突然現れた石の壁に驚き突撃を止めた。止まろうとした所で十頭前後は後ろから『玉突き事故』の様に追突されて石の壁に衝突し動けなくなった。
辛うじて停止し、激突を免れた残りの大牛たちも混乱してどっちに行けばいいのか判らないままたたらを踏んだ状態に成っている。
動きの止まった大牛たちを至近距離の斜め上からエルフの弓兵達が急所へ狙いを定めている。
そして「打ちー方始め!」と号令が飛ぶ。
中央の矢が放たれたのを見て両翼の横長の櫓からも「放てー」と号令と共に鋭い矢が放たれる。
17頭の大牛が数本の矢に急所を射貫かれ崩れる様に倒れる。
一呼吸ほどの後、また数頭の大牛が倒れる。全ての大牛が倒れるまで3分も掛からなかった。
当に、防波堤の前は死屍累々。圧倒的ワンサイドゲーム。
「打ちー方止めー」とトワイライトの大きな声、徹る(本来は『通る』の漢字が正解)声、多くの雑音も征して皆が聞き取れる声が殺戮の終わりを告げる。
号令を聞く前に、既に矢を放っている者はい無かった。殲滅が終わっていた。
『シーン』と静まりかえっている。場を静寂が支配している。
今回迎撃側(人間側)で参加している人達、近衛中隊、ゴールデン・バーボン傭兵中隊、街の守備隊二個小隊、エルフの弓兵隊、冒険者のパーティも含めて、五百名以上が目の前の光景に衝撃を受け唖然と事実を黙視している。
敵の先鋒を殲滅した。死屍累々・・完勝である。皆の士気が嫌でも上がる。
モンスターの『大行進』は危険とか、過去に立ち向かった地方領主の軍の十中八九が大敗して大惨事に成っていると云う負の前評判を耳にしている多くの者に対して、目の前でその先鋒を殲滅して見せた。鮮やかに完璧に。
近衛隊、ゴールデン・バーボンの各隊の士気も上がり心の中に有った僅かばかりの不安、疑問の他言葉に出来ない雑念が晴れる。
心が晴れたのか?麻痺したのか?恐れが無くなり”俺もいっちょやったろうか!”と心の中をポジティブな思考が湧いてくる。
迎撃側の皆の面構えが良くなり少しイケメンになった。腹が据わったのだろう。
トワイライトは無表情、眉一つ動かさぬまま「作戦の第一段階終了」とボソッと呟く。周囲は士気向上による意志に満ちた静寂で周囲にも容易に聞き取れた。
トワイライトは転生前の日本で戦国時代のドラマの中で何度も『戦は緒戦が大事』と聞いた覚えが有った。
実際に周囲の現状を改めて確認し”頷ける”と思う。仕事でもやる気の無い者と”遣ったるぞ”とか”稼ぐぞ”とやる気に成った者では2割以上仕事量に差が出る。戦場では特に此の差は有難い。
士気が向上し少しでもマシな状況でオークに対応出来ればとトワイライトは士気向上を歓迎している。
”果たして一番の懸念事項のオークの戦列をどう料理するかだが、一つでも多く勝因の足しに成りそうな事を積み上げるに越したことはない”と慎重。
防波堤の上にいたエルフの弓兵隊が階段を下りて戻ってくる。その中心に二人の見覚えのあるしなやかで屈強そうなエルフの戦士が機嫌良さそうにトワイライトを見る。
二、三日前『ディンバ』の里で出会った門衛をしていた二人だ。改めて見れば見るほど優秀さが滲み出ている戦士である。
「お二人さん此所を頼みます。手筈通りに・・。」
「ああ、任せろ旦那。酒場で気持ちよく自慢話が出来そうで楽しみだ。」と口元に笑みが現れている。
もう一人の戦士も無言で微笑んでいる。士気が上がり心の中で”勝つ時は何時もこんな感じだ”て予感がしているからであろう。
「酒場での自慢話は楽しいだろうな、えーっと・・。」とトワイライトは名前を聞いていなかった。
「ゲリーだ。」
「ラーだ。」二人は誇らしげに我が名を名乗った。
「敵に回したくない名前だな。覚えておくよ。」とトワイライトは手を振って近衛隊の方に歩き出した。
心の中で”うわー、ホントに敵に回すと縁起の悪さは最高な名前だ。くわばら。くわばら。”と背筋に寒気を催す名前だった。
トワイライトの動き始めに合わせて大盾の小隊が近衛隊の元に早足で戻っていく。この時点での段取りを聞いていたので指示を待たず動き出した。
近衛中隊の陣に戻りながらトシゾウをチラッと見た。
トシゾウは中央のトワイライト達がいた場所の15メートル程後方に居た。トシゾウの左斜め後ろにマヤとそらちゃんも居た。更にその20メートル後方には本営のテントと治療用テントが有る。
トシゾウの右隣には誰も居ないのだが、右隣に透明人間がいてその肩をポンと叩く様に誰も居ない所で肩を叩く仕草をした。
その辺りから周辺の風景画像がひび割れの様な白い線が無数に走り、白い線画の様に形が浮き出て崩れメッキが剥がれる様に粉々になり破片が左側に流れていく。
その辺りの視界がクリアになると石作りのステージが姿を現した。
魔法『インビジブル』の効果が解けた。
5メートル高さに十畳の広さのステージ。ステージの前端に50センチ低くなって一畳程のバルコニーがあり一段の階段・上がり段兼、腰掛けがステージとの継ぎ目にある。
ステージの石の外壁に階段があり、ぐるっと階段がステージを螺旋階段の様に取り囲み上まで続いている。
まず、トシゾウが階段を登っていく。少し遅れてマヤとそらちゃんも登っていく。
トシゾウはバルコニー・指揮所の腰掛けに座る。
そらちゃんはトシゾウの横でゴロンと横になり傍観者モード。
トシゾウは「まあ、念の為。」と独り言を言いながら。アイテムボックスからエンフェイールド銃を取り出し弾込めを始めようとする。
其所にマヤが駆け寄りまた銃口を上にして両手で支え弾込めの手伝いをする。
右翼近衛中隊の陣でも、指揮所の目立つ場所でトシゾウとマヤが二人で弾込めを遣っているのが見える。
「若様、あの二人又やってますね。」とロナウドが半笑いでシェイクスオードに話す。
「ああ、前回アレを見た後快勝だったからな。縁起が良いよ。」とシェイクスオードもニヤニヤして縁起が良いと歓迎している。
「アレって、戦勝祈願の儀式でしたっけ?」とぼけるロナウド。
「ふふふ、まさか。只単に銃に弾込めてるだけだろ(笑)」と漫才している様でシェイクスオードも楽しい。
「じゅう?」ロナウドは銃を知らない。
「ああ、この世界には銃は無かったな。飛び道具だよ超強力な奴だ。使う予定は無いはずだが、何か武器を持っていないと手が寂しいのだろうな。」とシェイクスオードなりの解釈。
丁度トシゾウの銃の弾込めが終わり、指揮所の腰掛けに座り直す。エンフィールド銃を杖代わりに右手に持っている。しっくり来た様だ。
自分の持ち場に戻るマヤにトシゾウが「有り難うね。マヤ」と礼を言う。
マヤは戻りながら右手を挙げて「どう致しまして」と微笑んでいる。
マヤは自分の持ち場、ステージの真ん中に戻り左手の指をパチンと鳴らし舞台衣装に換装する。
前回の時より今回の衣装の方が可愛くて似合っている気がする。
迎撃側のモンスター『大行進』第二陣への対策の準備が整った。
広場の反対側では森の暗がりには赤い眼がギラギラと無数に輝いている。
森の木々の陰、暗がりからオークがゾロゾロ出てきた。
今度は猪達と違い隊列は縦長の楕円形に近い。横に広がってはいるがオークの数が多いので自然と縦長の隊列になっている。
オークは2メートルを超える巨体で頑丈。更に怪力に任た大斧の攻撃が強烈。動きも巨体に似合わず速い。頑丈な身体の皮は分厚く硬いのでショートソードやダガーではダメージを与えるのは困難。
エルフの放つ矢でも硬い皮を貫通するか微妙でまともなダメージは期待出来ない。切れ味の良い槍か大型の剣で大技を使うのが効果的な対処法なのである。
手間の掛かる厄介な相手なのは確か。
オークが歩く速度で接近する。作戦の第二段階の開始である。
まず弓矢の射程圏内に入ったが、中央の防波堤裏にいるエルフの弓兵と両翼の櫓にいるエルフの弓兵は矢を射掛けない。沈黙したままだ。防波堤裏に居る弓兵は階段を下りて身も隠している。
中央にいるゲリーとラーが命令を改めて伝えている。
「いいか、頭出すなよ、手ー出すなよ、チョッカイ出すなよ。オークに矢はほぼ通じない。此所は黙ってスルーだ、俺達の出番はその後だ。」
と待機を厳命している。
「1、2、3、4・・」『チャー、チャジャチャジャー、ジャージャージャン・・』マヤのユニークスキル『バトルソング』のイントロが始まった。
迎撃側各隊員に『ATK Up↑ DEF Up↑士気UP↑』のバフが追加された。
右翼近衛隊の前衛に居るトワイライトが大声で前衛の戦闘準備の号令を掛ける。
「大盾!、『フォースシールド』の展開を確認しろ。効果時間が微妙な奴は掛け直せ。」
反対の左翼ゴールデン・バーボン傭兵中隊でもその徹る声の号令に従いスキルの展開を確認した。
左翼にいるヘンリー隊長は苦笑を浮かべながら
”あ、コッチも言おうとしてたのに・・。此所まで余裕で聞こえている。徹る声だ。何で人材が豊富なんだ此所は?”
声が徹り遠くまで聞こえる・命令が伝わる。コレは指揮範囲が広い事を意味し即ち戦術レベルが高い事を意味する。ヘンリー隊長はコノ連想的結果に気付いている。
オークの先頭が防波堤手前十数メートルの位置、大猪、大牛の死体がポツポツと転がっり出している場所に差し掛かった。
両翼、近衛隊とゴールデン・バーボン傭兵中隊の陣から『大盾』職のスキル『挑発』が中央の正面にいるオークに飛んだ。
オークが右翼の陣地と左翼の陣地に向きを変え進み出した。両翼の『大盾』達はそれぞれ何発も『挑発』を使っている。
距離があるので多少効き目が落ちているがその分だけ数を多く打っている。
トシゾウの戦術系の技でも『挑発』はあるが使わない。今使うとトシゾウにターゲットが移る可能性があり、仮にそうなると防波堤を越えようとするオークが出る。
防波堤を越えられると、其所にはエルフの弓兵しか配置してないので本陣を蹂躙されて大打撃を受ける。
ターゲットが向いている両翼に向かって進み『大盾』の隊と殴りあって欲しいのである。
対策は取ってある、対策と言っても連携を使った正攻法で少しずつゴリゴリとオークを討ち取っていく段取りである。
後は両翼に到達するオークの量を多くならない様に調整するのだが、両翼のエルフの弓兵が詰める櫓で魔法使いが六名ずつ前に出てきた。右翼は一名多い。亜里砂だ。
右翼七名、左翼六名の魔法使いは一斉に詠唱を始めて『泥沼』を発動した。
『泥沼』は水系魔法と土系魔法の混合魔法で。指定したフィールドを50センチの深さの泥沼に変える。泥んこ、不良馬場、田んぼ状態。
6人+6人+1人の13人が何発も繰り返し魔法を掛ける。
近衛隊やゴールデン・バーボン隊が居る左右両陣地から5メートルの位置を始点として30メートルまで扇形に泥沼が広がった。
泥沼に成った場所はポツポツと草が生えてる土の平地で1メートル位に適当に切られた丸太がランダムに転がっている。転がっていた丸太は自重で七割ほど泥に沈む。
モンスター側の第二陣のオークは左右に分かれて先頭の8頭は泥沼に引っ掛からずに陣地に襲いかかる。その8頭より後ろは泥沼に引っ掛かり、進行速度が極端に遅くなる。
あるモノは足を滑らせ泥の中で転倒。あるモノは泥の中に隠れた丸太に足をぶつけ痛そうに呻いている。あるモノは右足を抜いて一歩前に踏み出す時にバランスを崩し転倒泥まみれ。
とりあえず混合魔法『泥沼』での足止め・左右の陣地への到達時間の分散や遅延は成功。後続はもたついている。
『泥沼』に掛からなかった8頭は歩速をややあげ左右の陣地を目指す。
右翼の近衛隊の前列の中央にはトワイライトが居る。二発、三発と『挑発』を打つ。
トワイライトに合わせて横の近衛隊の大盾隊員も『挑発』を打つ。組織的にフェイト(敵視)を稼ぐ事を意識している。
目の前のオークの目が血走り、前衛の『大盾』達に引き寄せられる。
オークの先頭が大斧を振り上げ『大盾』に振り下ろそうとしている。オークは日本の力士・関取の風体だが更に一回りでかい。身長も人間より二回り以上大きく迫力満点で振り下ろせば盾を持った人間ごと両断しそうに見える。
先頭のオークが目に赤い光を宿し、吠えながら斬りかかってくる。迫力満点で相当肝が据わっているか、経験を積んでいないとオシッコちびって失神してしまいそうである。
オークが振り下ろす大斧が当たる寸前にトワイライトは盾を前に突き出し、自分から大斧に盾を打ち付ける。
バシンと音がする。ジャストガード(最良のタイミングでガード)のいい音が響き大斧が弾かれる。
『フォースシールド』の効果もあり反作用の衝撃波を受けたオークは体勢を少し崩すが怪力で再び大斧を振り下ろす。
バシン。再びジャストガードで大斧が弾かれる。
トワイライトがオークの攻撃を防いでいる間、トワイライトの背後からバディ(相棒)がロッドをトワイライトの頭越しに覗かせて『気絶の息吹』をオークに吹き付ける。
『気絶の息吹』を吹き付けている間少しずつオークの状態異常値が上昇する。更に大斧での攻撃をトワイライトに盾受けされて、ジャストガードなので割り増しで状態異常値がドカッと増える。二度目の盾受けでも更に増えた。
バシン。三度目の盾受けで状態異常値が規定値を越えた。オークは茫然自失状態になり、頭の上でピヨピヨが回り出した。
トワイライトは邪魔にならない場所に身を引き「ピヨった。シェイク!」と合図を送る。
トワイライトのバディも遅れずに身を引き通路を開けて、ピヨった無防備なオークへの動線が確保される。
トワイライトが退いた場所を通りシェイクスオードが、素早く踏み込み「面ーん」と叫ぶ。
溜めが必要な強力な技を大剣に乗せて叩き込む。
「面」と言ったが、右の首元から左脇腹に斬り下ろした。
袈裟懸けに両断されたオークはその場で崩れ落ちた。即死である。
「ひゅー」シェイクスオードは腹に残った息を口から全部吐き出した。
「見事。だが、面じゃねーじゃん」と褒めてから突っ込むトワイライト。
「いや、久しぶりで緊張したんでつい少しズレてしまった。ははは」と白々しく笑うシェイクスオード。
久しぶりでもオークを一刀の元に両断出来るのは流石である。
そのシェイクスオードの左右では『ボフ、ボフ』と盾受けの音がする。ジャストガード(良いタイミングでのガード)では無いので音が違い、反射の衝撃波もダメージが少し落ちる。状態異常の数値の溜まりもやや低い。
シェイクスオードの右隣のオークがピヨり出した。大盾のバディ二人は道を空けてアタッカー三人に後を託した。
一人目はシェイクスオードと同じ上段に構え袈裟懸けに斬るのだろう大剣をオークの首元に叩き込んだ。首筋から胸に達した所で大剣は止まった。大剣を噛んでしまった。一寸やそっとでは動かない。
二人目が「どけー」と叫びながら踏み込んでくる。一人目のアタッカーは抜けない大剣を手放し、身を避ける。
二人目が体重を乗せて突き系のスキルで正面からオークに突きを入れ大剣がみぞおちの辺りから貫通し背中に出る。
次にオークの左側から突き系のスキルで三人目が大剣で串刺しにする。
オークは血を吹き出しながら膝から崩れ絶命した。
このチームは5人がかりで仕留めた。
この5人は辺りを見渡し、自分達が次に当たるべきオーク又は、フリーでウロウロしている個体が無いのを確認してから、倒したオークを5人掛かりで引きずって後方迄持っていった。
後方でオークの死体を仲間に引き渡すと戦列に戻っていく。後方の方が安全にオークを捌けるからだ。
オークは一体で戦士3人相当の強い個体ではあるが、5人掛かりでしかも正しい手順・組織的行動で対処して仕留める事が出来た。
また水系と土系の混合魔法『泥沼』の効果で、右翼・左翼の両陣地に到達するオークをタイミング的にばらけさせる事が出来ている。
泥沼に足を踏み入れていれば平地を歩く事に比べれば移動速度は大幅に落ちる。更に輪切りの丸太も重さで泥の中に半分沈み、泥を被り隠れていて大変邪魔。その中を動くのは大変手間が掛かる。
泥沼を渡り切るのは時間が掛かり、個体差が大いに生じる。泥沼を活用し小口に分散させて泥沼から上陸した個体を各個撃破。渡り切ったオークが隊伍を整えようとしても、渡り切った単体のオークを『挑発』で釣り脇に引っ張り出す。
引っ張り出されて孤立したオーク一体に対し5人チームで寄って集って仕留める。
コレが今回のトシゾウの選択した対オーク対策なのである。
もし仮に、『泥沼』を使ってなければ両翼にオークが各150頭程度隊伍を組んだまま押し寄せる事になる。オークは兵士3人相当で換算すると450兵力、兵士450人分の戦力が有ると考える。
迎え撃つ側は一個中隊つまり130人程。3倍の戦力差で攻められれば、ほぼ勝ち目はない。
今回は泥沼が機能し、タイミングもバラバラに泥沼から脱出してきたオークを『挑発』で釣って分散させて討伐出来ている。上々な出だしだ。
トシゾウは中央の防波堤の後方の指揮所から目視で、近衛隊のいる右翼がどうにかオークを狩れているのを確認し、左翼に目を遣る。
左翼のゴールデン・バーボン傭兵中隊はトシゾウが『益荒男ども』と評しただけあり安定してオークを倒している。
やはり近衛中隊より練度も戦闘レベルもゴールデン・バーボン傭兵中隊の方が高そうだ。見ていて動き等に余裕がある。幾度となく依頼をこなし、困難を乗り越えてきた猛者の集団である事が伺い知れる。
オークへの対処が左右両翼で順調に行っている中で『大行進』の本陣近くの中小型のモンスター達が前に上がりだしてきた。
中型、小型のモンスターがオークを援護・支援する為である。ホーンラビット、グレイウルフ、突角鹿、ジャイアントラット、大サソリ、大具足虫他が入り乱れて進みオーク達の支援に加わろうと前進している。
進むにつれて泥沼に差し掛かり、泥沼に入る。中・小型のモンスターも例外なく移動速度が鈍りユックリになる。泥沼を半分渡った辺りである。
オークが泥沼を渡る時には矢を射なかった横長の櫓の弓兵達が中・小型のモンスター達には矢を放ちだした。
泥沼のせいで動きの遅くなった中・小型のモンスター達に狙い澄ました矢が刺さり、討ち取られていく。
外れる矢は殆ど無い。ほどほどの距離で動きの遅い標的などエルフの弓兵にとって「外しようが無いではないか」と笑われる。
実際に次々と討ち取られていく。
両翼の陣のやや後ろにある横長の櫓に詰めるエルフの弓兵にはヴァネッサとミレイを通じて“オークには矢が効かないからオークは無視ですよ。中小型のモンスター、特にオークを支援しようとするヤツを最優先で倒してください。”
と通達してあるが、命令通りよく仕事をしてくれている。
オークの援護をしようとすると泥沼に入る事になり、動きの遅くなったホーンラビット、ジャイアントラットや大サソリ等が弓で射貫かれ骸になって数多転がっている。
一部足の速い突角鹿やグレイウルフが、オークと対峙している陣に対して横から攻撃を入れるべく泥沼を迂回し陣に迫るが、左右陣地の後方の予備隊の隊長の指示で冒険者のパーティを即応部隊として派遣して対処している。
戦況は良い形で回っている。
指揮所ではトシゾウが一人腰掛けで座り戦況を見ながらうずうずしている。
遠目でトワイライトが『大盾』で奮戦しているのを暫く見ていて、『大盾』の役割、戦い方が何となく解ってきた気がしている。そうなると『大盾』の戦い方を試したくなるトシゾウ。
トシゾウは試したくてうずうずする心を我慢して腰掛けから動かない。
実はシェイクスオードとトワイライトから「頼むから指揮所から動かないでくれ。」と釘を刺されている。その理由はスキル『戦術』の指揮範囲の影響によるモノである。
スキル『戦術』はスキルレベル4を達成した時点で指揮範囲というものが付き、その範囲内に居れば攻撃力・防御力・命中等に+αのバフ『指揮効果』が付く。
更に『戦術』のスキルレベルが高いとバフの効果も上昇する。 現在、左翼のゴールデン・バーボン傭兵中隊の陣地と右翼の近衛中隊の陣地の丁度真ん中に指揮所・マヤのステージが有る。
左右の陣地で奮戦する兵達には土方歳三指揮による『指揮効果』とマヤのユニークスキル『バトルソング』の両方のプラス効果・バフが効いており、戦闘力が底上げされている。
それでも予期せぬ事、不幸な出来事は起こるモノでオークのクリティカル攻撃を受けてしまい重傷を負って倒れ込む近衛兵が何人か出ている。
大体は『大盾』が盾受けを失敗したケースが多くて一撃を食らって倒れ込む。直ぐさまバディの大盾が挑発でタゲ(ターゲット)を奪い惹き付けるて相手をする。
アタッカー等の手の空いてる仲間で後方へ運び傷口を圧迫し軟膏を塗って止血しポーションを患部付近に振り掛け、更に口に一本ポーションを突っ込んで「一本行っとけ!!」と言う。
其所までやっていのんで死者は出にくい。負傷者を予備隊に引き渡し、予備隊から担架で治療テントに運ばれる。
負傷者により戦列に空いた穴は予備隊から代わりの補充要員が入り穴を埋める。
そうやって戦列は維持されるのだが、負傷者が出たり、泥沼を越えて上がってくる敵の数に斑があり少ない場合は問題ないが、多い場合は大変だ。
左翼のゴールデン・バーボン傭兵中隊の陣地での事。泥沼から上がってくるオークが今回偏って多く、対処するチーム数が3チーム足りない。
ヘンリー隊長は”バディ(二人組)の片割れを当てて対処するしかない。”と思い指示を飛ばそうとした。
そのタイミングで『大盾』のバディ(2人組)が3組が対戦相手のいないオーク3体に張り付いた。
予備隊の隊長が情況を見ながら判断して3組のバディを派遣したのである。
陣地に到達しているオーク達がだいたい気絶を経て討ち取られたが、手負いを含めて4体ほど残ってしまった。
『パオー。パオー』ゴールデン・バーボン中隊の後方の予備隊から角笛が2回鳴った。
一瞬、ゴールデン・バーボン中隊全員の動きが止まった。
”えーっと何だっけ?・・あ!!”一瞬置いて思い出し、多くの者が地に伏せた。其れを見て忘れていた奴も思い出し、地に伏せる。
唸りを立てて、騎士の使うランスほど大きなヴァリスタの矢がゴールデン・バーボン中隊の頭上を飛び抜けていった。
2体の『ピヨ』(気絶状態)っているオークの胸の真ん中にヴァリスタの矢が一本ずつ貫きそのまま倒れた。
手負いのオーク1体はバリスタの矢が腹の胸寄りに命中し立っているのがやっとの状態。
残り一体は『ピヨ』る寸前であり、ほぼ無傷な状態だった。目の前の相手『大盾』が地に伏せたので、大斧を振りかぶった。
振りかぶった体勢の丁度その時に右胸と腹にバリスタの矢が貫いた。
地に伏せた『大盾』は盾を頭から被る感じで衝撃に備えて歯を食いしばったが、一向に無い。
気になって盾の横から覗くと、目の前のオークが右胸と腹から血を吹きだし、大斧を持っていた手はダランと下がり大斧を落としている。
ヴァリスタの矢が当たった衝撃で体が麻痺し掛かっていて後ろに倒れそうになっているのを歯を食いしばり耐えている状態。
そこへアタッカーが溜のないスキルを大剣で袈裟懸けに叩き込む。次の瞬間に、左側から槍持ちのアタッカーが『ズブッ』と刺し込む。
オークは仰向けに倒れ止めを刺される。
スタミナを回復した『大盾』の小隊が前に出て次の泥沼から出てくるオークに備える。
最後に止めを刺したアタッカー達は予備隊から来た『大盾』に「良く保たした。助かったよ。グッショブだ。」とポンと肩を叩いてから手でグッジョブマークをした。
流石、歴戦のゴールデン・バーボン中隊だ。頑張った人を褒める心の余裕がある。
ホッと息を吐いた予備隊からの助っ人もアタッカーと協力してオークを後方に引きずっていく。アタッカーはその後持ち場に戻り、溜め技のチャージをし出す。
多めに来た時も何とか凌げた様だ。
中央の防波堤に隠れているエルフの弓兵隊だが、ゲリーがチラッと覗くとオークの後ろの方の部隊がもうすぐ通過しようという処。目の前は泥沼に入る直前で前が支えて渋滞に成っている。
弓兵隊の中に初陣の若者が居た。目が血走り極度の緊張状態。
緊張の糸がプツと切れて走り出した。「わーー」と大声で喚きながら防波堤の最上段まで駆け上がり、弓を番えて前方10メートルほど先の間近にいるオークに矢を射る。
立て続けに3本射るが肩・首筋に刺さるが木の板に矢が当たり止まる感じに皮膚で止まってしまう。
矢が当たったオーク並びに周辺の5匹が赤く光る目で矢を射った若者を睨む。向かっている陣地にいる『大盾』が『挑発』等で保持していたタゲ(ターゲット)が若者に跳んだ。
矢を受けたオークの顔には”この野郎!テメー殺す!”と書いてある、そして大斧をトマホーク投げで飛ばし若者の居る防波堤に走り出した。
周辺にいたオーク5匹も後に続く。
投げられた斧は回転しながら、若者の持っている弓を両断し、左脇腹を切り裂き向こうに飛んでいく。若者は後ろに倒れ込み下り階段の手前で止まった。
見ていたゲリーもラーも”ああーあ。やっちまってるよ”と心の中でぼやいた。
其れと同時に二人とも弓と矢筒を下に置き槍を手にした。そして溜技をチャージしだした。
付近にいたエルフの弓兵達はベテランなのか慣れた者達で冷静に淡々と姿勢を低くしたまま、倒れた若者を階段の途中まで引きずり下ろして軟膏やポーションで手当を始める。
オークの方は先ず一体が防波堤の所まで来た。4メートルの高さはオークがジャンプしても届かない。
オークは一旦後ろに目をやり、アイコンタクトを取った後に、頭と両手で壁を押す姿勢を取った。
両手は肩の真横で頭は防波堤に密着。左足は真下で右足は半歩後ろに下げている。
壁を押しているオークにもう一匹が背中合わせになり片膝立ちになる。両手の指を絡めながら手を組み、バレーボールのレシーブに似た体勢を取った。
そのレシーブ体勢のオークに一匹のオークが走り込む。レシーブの様に組んだ両手に右足を掛けて反対の左足で肩を踏む。
レシーブ体勢のオークの両腕と肩の筋肉がグッと盛り上がり、踏み台にした両手をすくい上げる。
走り込んできた方のオークは抜いた右足を壁を押している体勢のオークの肩を踏みジャンプ。
高さ4メートルある防波堤の天辺に肘から手が掛かる。両手で上半身を持ち上げて下半身を右に振り『スタッ』としゃがんだ状態で天辺に登り切る。
オークは前を向き眼前に弓兵が何人も身を潜めているのを見て不気味に破顔する。
素早く立ち上がり防波堤裏の階段を駆け下りる体勢に入る。大斧を振り被り目の前のか細い弓兵達をどう薙ぎ払うかイメージが先走りながら、後追いで体が漸く追い付いて来る。
しかし、直ぐに体の前進は止まった。エルフが二名目の前にいる。イメージと違うこいつ等は背中を向けて逃げ惑うはずだ。
よく見ると目の前のエルフは二名とも槍を手にしている。二本の槍は自分の胸を貫き穂先が背中に出ていて、心臓を貫かれている。
二人は防波堤の裏側の急な階段に伏せていて、大ダメージを与える溜の要する槍技をチャージして待ち、飛び出してきたオークの不意を突き襲いかかったのであった。
オークは取り敢えず大斧で目前のエルフ二人を薙ぎ払おうとするが、手がいう事を効かず感覚もない。背後で『ガラン』と大斧が落ちる音がする。
「させるかよ!」とラーがオークを睨み付けて喋る。二人は槍を引き抜き、オークは胸と背中から血を吹き出しながら膝から崩れ倒れた。
その瞬間に二頭のオークが防波堤の上に這い上がっている。左側の一匹のオークの顔に十数本の矢が刺さった。階段下のエルフの弓兵達が放った矢だ。
顔に十数本の矢を受けたオークは両目を射貫かれ、鼻の穴や口の中にも刺さっている。激痛で動きが止まり、大斧を落として両手で顔を覆う。
右側のもう一匹の方のオークは、ゲリーとラーが槍で戦いやや優勢だ。
もう一匹登ってきた。ゲリーとラーが戦っている姿を盾にする様に隠れて、ゲリーに大斧を振るおうとしている。
『パン』銃声と共に今上がってきたオークの頭に血飛沫が上がる。オークは斜め前に倒れる。
仲間が不可解に倒れた事に気を取られたオークは少し隙が出来た。その隙に右胸の右肩付近をゲリーの槍に突かれ、大斧を落としてしまい、ゲリーとラーにその後討ち取られた。
ゲリーもラーも窮地を脱し発砲音のした方向を振り返ると、指揮所ではニーリング(片膝立て射撃体勢)のトシゾウの銃口から煙が上がっている。
トシゾウは右手を挙げて”大丈夫か?”と合図する。
ゲリーとラーの二人も”あそこから、何か遣ってくれたんだな”と理解し片手を上げる。
矢を受けて盲目になっているオークにトドメを刺して、一段落。
ターゲットが飛んだ六体のうちの二体は防波堤の下で先に上がった仲間が引き上げてくれるのを待ったが、左右の陣地から飛んでくる『挑発』に掛かり、方向を変えて陣地に向かって泥沼の中を進んでいった。
事が治まった防波堤の上ではエルフの弓兵達が数人掛かりでオークの骸を階段下まで引きずり下ろし、指揮所の後方まで運んでいった。
其所には非戦闘員の『解体屋』が待機しており新鮮なオークを解体すべく仕事を引き継いでいった。
ゲリーもラーも冷や汗をかいている事に気付き深い溜め息をはく。「危なかった」と漏らしながらチラッとトシゾウの方をみる。
指揮所ではトシゾウは立って弾の装填をしていた。地に着けた銃尻の前で銃に向かって小型犬のそらちゃんがお座りをして両手で銃腹を押さえている。大変器用だ。そらちゃんは尻尾をパタパタと振りながら手伝っていて、とても可愛い。
丁度トシゾウは手に持った薬包から黒い粉を銃身に注いでいた。
今回もトシゾウの居る陣営は人手不足で無駄な場所には人手を配置される事はない。従ってトシゾウの周りには誰も居らず猫の手も借りたい状態だった。借りたのは犬の手。
モンスターの『大行進』に対して何とか受け止めている感が有る迎撃部隊。難敵と警戒していたオークの猛攻も対処出てきていてオークの討伐数も既に半数を超えている。
ペースは遅いがこのまま行けば無難に難敵のオークは殲滅出来そうだ。
所々イレギュラーや困難は起きているが個々現場指揮官の機転でリカバーが効いている。
トシゾウは参戦したい気持ちを抑えウズウズしながら戦場を眺めている。
指揮所のベンチに座り右手にエンピール(愛用のエンフィールド銃)を杖代わりに持ち自分に”動いちゃダメだよー”と言い聞かせて居る。
その一段上ではステージの中央マヤが歌って振り付け踊って、宛らアイドルのライブステージの様である。マイク片手に汗がキラキラとライトで輝いている。
『バトルソング』継続中。
トシゾウはチラット後ろをみて”『バトルソング』だろ、踊る必要有るの?大変だな”と素朴な疑問が浮かぶ。
昭和初期では直立不動で歌手がマイクの前で歌っている姿があったが、それをトシゾウは知らない。
左翼のゴールデン・バーボン中隊の陣では変化が起こり始めている。
オークを討ち取る量と速度が上がっている。その要因にはポルトスが一枚噛んでいた。
左翼の予備隊に居たポルトスはゴールデン・バーボン中隊のアタッカーとして途中から参加した。
ポルトスは元々溜の必要とする大技を持っていなかった。
横にいるアタッカーの真似をして何とかスキル『廃人斬り』を習得したのだが、この『廃人斬り』を使えば一撃でオークを倒せる・・・のだが、その前に使っていた溜の要らない『パワーストライク』でも充分一撃で倒していた。
ポルトスの攻撃力は三千を超えているので本当初期の剣技『パワーストライク』でも充分であるのだが、本人は気付いていない。
最初は嬉しくて何度か『廃人斬り』でオークを倒す。しかし数回でMPを使い果たしMPポーションを飲む。効率が悪い。
ケリー隊長がポルトスの事を見ながら首を捻って考えて、指示を出した。
ポルトスに「『廃人斬り』は止めて、『パワーストライク』を使うように」と伝えた。
ポルトスの所持スキル『パワーストライク』は技のレベルも3に成っていて、消費Mpも軽減され、溜も要らず即発動。コレでオークを討ち取れるなら此方で充分と考えた。
ケリー隊長の工夫を加えた指示は更にポルトスに3組の『大盾』バディと1組のアタッカー3人を付けた。
『大盾』の1組目は直衛兼、リード役でフランダースとヴィックモローの優秀な二人を付けている。
先ず襲い来るオークにフランダースがジャストガード(最良タイミングでのガード)で攻撃を弾き、体勢を崩す。その僅かな隙にポルトスが『パワーストライク』でたたき切る。
ポルトスが剣技『パワーストライク』を出した後の硬直やポルトスへの攻撃はフランダースのバディのヴィックモローが間に割り込み、『挑発』等を使いつつ攻撃を受けたり弾いたりする。
ヴィックモローがジャストガード等でオークの隙を作ると、其所にポルトスの一撃が入りまたオーク一頭を討ち取る。
要はポルトスならではの、ピヨらせずともジャストガードの生み出す僅かな隙でも対応出来るデタラメさを十二分に活かしている。
ヴィックモローとフランダースが交互に身近にいるオークに当たり隙を作る。その隙を突いてポルトスが叩斬る。僅かな隙もしっかり捉えるポルトスの能力・剣技の高さは尋常じゃない。
ポルトスを活用して単位時間内にそこそこの討伐数を稼いでいる。
ポルトスの助っ人には『大盾』のバディーがあと2組いるが、地道にオークの相手をして状態異常の『気絶』に陥らせる。
オークが気絶状態に入るとポルトスが大剣を肩に抱えて急いでやって来る。死に神の様に。
ポルトスはサクサクとオークの数を減らしていく。ケリー隊長から「防御のことは考えずに数を減らす事に専念してくれ」と指示を受けてその通りにしている。
ポルトスは何度もオークに狙われるが、その都度ヴィックモローやフランダースが防御に割って入り、又はタゲを奪って張り付き邪魔をさせない。
ケリー隊長の判断でポルトスの武勇を最大限活かす工夫をした事によりゴールデン・バーボン中隊の陣は大分余裕が出てきた。
オークに当たるチーム(5人組)に大分空きが出てきて、2チームが仕留めたオークを後方の予備隊に運ぶ仕事を主にやり出した。それでも念の為1チームは即応する為に待機している。
ゴールデン・バーボン中隊の陣では上手く回っていて泥沼からオークが出してくるのを余裕を持って待っている状態。
それに対して反対側の近衛隊には少し荷が重かった感が有る。情況が一杯一杯のちょっと手前で何とか間に合わせている様な状態。
トワイライトとシェイクスオードのコンビが頑張って破綻寸前のポイントを抑えて回って何とか持ち堪えて居る状態。この二人が居無ければ近衛隊は崩壊していたかも知れない。
左翼のゴールデン・バーボン中隊の後ろの予備隊の隊長が予備小隊から半数の3チーム(『1チームが盾2名アタッカー3名』×3)を苦しそうに見える右翼の近衛隊に派遣した。
援軍を受けて近衛隊も安定しだした。左翼の予備隊の良く出来た隊長に『グッドジョブ』だ。
右翼の近衛隊が安定しだして時間と共にオークの数を順調に更に減らして最後の1頭を近衛隊が仕留めた。
既にゴールデン・バーボン中隊はオークの左翼への打ち止めを確認後、左翼の陣地から沼地の外端に沿って前進。陣地はすぐ後ろの予備隊が与る事になった。
オークを援護する為に泥沼の外縁に来ていた中小型のモンスターと戦っていた冒険者パーティは陣地に一旦引きあげ予備隊と合流した。
左翼の前進が始まった時点で戦いは終盤に入る。
右翼の近衛隊はまだ数匹のオークと対峙していて前進はしていない。だが大分余裕が出てきている。右翼のオーク殲滅も時間の問題と言える。
数分後、シェイクスオードがオーク最後の一匹を打ち倒して『ほーっ』と大きな息をつく。
辺りを見渡すと予備隊とかなりの人数が入れ替わっている。そこそこの怪我人が出ている様だ。残っている周囲の兵達も疲労の色が濃い。
「総員3分休憩。ポーション、スタミナ剤、MPポーション飲んどけよ。」とトワイライトが休憩を告げる。
トワイライトとシェイクスオードは元々冒険者レベルが30代そこそこと高いので平気な顔をしているが、自分達がポーション類を飲まないと兵達が飲みにくいのを知っているので、グビグビ飲んでいる。
近衛隊のロナウド隊長も疲れを隠し切れていない。
元々近衛隊は武芸の稽古には余念が無く腕の立つ隊員が多いのだが、警備・護衛の任務が多く戦闘経験が少ない。結果として戦闘レベル・冒険者レベルが其れほど上がっていなかった。
其れを考えるとゴールデン・バーボン中隊との実力の差は仕方ないと言えるし、よく頑張った方だと褒めてあげるべきかも知れない。
相変わらず飄飄と涼しい顔のトワイライトが「休憩終わり。泥沼の外を回って、左翼の隊を支援する。中隊前進!」
10分程遅れで右翼も前進を開始した。トワイライトを先頭に5人組のチーム単位で塊り続いていく。その後ろに櫓に居た弓兵隊も後に続く。
右翼の陣地も右翼後方の予備隊が引き継ぐ事に成った。
一方左翼のゴールデン・バーボン中隊の方は『大行進』の本隊に接敵した。
人の背丈程の高さ程ある小高い丘を背に、丘から下りきった所から少し進んで停止し戦列を整えてから、『挑発』を打って敵を呼び込み戦いが始まる。
ゴブリン、ホブゴブリン、グール、リザードマン、ヒュージスパイダー、ジャイアントクラブ、背赤ゴケガエル、ジャイアントソルジアント他多くのモンスター達が入り乱れて襲いかかる。
ゴールデン・バーボン中隊は先ずは『大盾』で敵の攻撃を防ぎながら『挑発』で敵の敵視を稼いで敵の攻撃を受け支えている。
その『大盾』を攻撃しているモンスターをアタッカーが攻撃して、敵の数を減らしていく。
オークに比べればサクサクダメージは徹るし、モンスターの攻撃の重さも知れている。
その戦っている後方の小高い丘にエルフの弓兵隊が到着し順次弓矢で援護を始めた。
ヘンリー隊長が戦列を丘から下りきった場所にしたのも、後ろから付いて来ているエルフの弓兵達が、モンスターを狙いやすい様にである。
戦列が平地や丘の上であれば、味方が邪魔で弓兵が弓矢での攻撃が出来ない事が多いが、丘の上は下りきった下から1メートル70センチ高くなっていて、弓で狙う射点の高さは3メートル50センチになる。
高い位置から狙える。少し後方の敵を狙うのであれば、味方に当たる心配はない。
そこら辺の配慮も入れて、ヘンリー隊長は持てる戦力を余すことなく活用する事を何気なく普通に出来る良きセンスを持った良将なのだ。
ゴールデン・バーボン中隊がモンスターの『大行進』の本隊と戦闘に成った時点でゴールデン・バーボン中隊の方が優勢で、強敵のオークの相手をした後なので楽に成った感じがある。
それ以上にヘンリー隊長がポルトスの攻撃力を活かす戦い方を此所でも行っていて、当のポルトス本人は機嫌良く暴れ回っている。ポルトス無双発動中。
『大行進』の本隊は防波堤の手前30メートルの位置、先鋒のワイルドボアとグッドカルビバッファローの骸が転がりだしている大分手前で止まっている。
進行方向防波堤に向かって右側の泥沼を迂回して接近してきたゴールデン・バーボン中隊と既にガッツリ殴りあっている状態。
10分程遅れて反対側左方向から近衛隊中隊が現れ挟み撃ちの形になった。
モンスター『大行進』の本隊はみるみるうちに数を討ち減らされて行き集団は百を切った。
そして漸く到着した亜里砂率いる魔法使いの12人も次々と攻撃魔法を放って、敵本陣付近で炸裂する。
無駄押しをせずジワジワと殲滅戦が進む中、トワイライトとシェイクスオードがポルトスの元にやって来た。
最前線からやや後方の安全な位置で、ステージを終えたマヤも合流した。
近くにヘンリー隊長がもいるが、直前にシェイクスオードから前線の指揮を頼むと言われて指示を飛ばしている。
トシゾウは首領の近くに居たナイトスケルトンを相手にロングソードを右手に剣戟を楽しんでいたが、次第に焦りだした。
倒しても倒しても少しすると復活する。初めて不死と戦ったトシゾウは理解出来ず混乱し乍らもまたナイトスケルトンを倒した。4回目である
アンデットの対処法を知らないトシゾウを見るに見かねて、ウォルトンが駆け寄ってきた。
ウォルトンはゴールデン・バーボン中隊の隊員で『神官』・回復役を遣っている。
ナイトスケルトンを4回目倒したばかりで多少息が上がり、顔が引きつっているトシゾウの横に着いて
「トシゾウさん一寸待ってて」と言って聖鈴を取り出して聖鈴に着いている棒の端を軽く摘んで振り『リーン、リーン』と鳴らしながら
「ターニングアンデット!」とウォルトンは言った。
ナイトスケルトンから水蒸気の塊の様な白っぽい半透明な空気が、ガソリンが引火した様な形で『ボッ』と立ち上った。
「往生せぇや」と拝みながら神官のウォルトンは引導の言葉を発した。
其れまでに倒されてから小さな骨片等は有るべき形にくっつき出し再生が始まりだしていたのだが、『ターニングアンデット』が成されてから力なく崩れ只の骨片として散らばった。
そのターニングアンデットの一部始終を見ていったトシゾウは
「おう、おお。すげぇ・・、再生が止まった。」と目を丸くして感心した。
ウォルトンはニコリと微笑みながら「トシゾウさん、コレは神聖魔法といいまして神官が行える神の奇跡というモノです」
と言って続きの長い説明を喋り出そうとした時に
「ウォルトン!、コッチも頼む」と横から要請が入った。
声の方向を向くと8人の兵が3体のナイトスケルトンを倒して『ターニングアンデット』をして欲しいと待っていた。
その横でもう一体のナイトスケルトンを2人掛かりで倒そうとしていた。
ウォルトンは笑顔で「興味お有りですか?時間が空いたらご説明しますよ。」
と後ろ髪引かれながら顔だけトシゾウの方へ向けながら体は仲間の待っている方向に動き出した。
「お、ああ。今度頼む。」とトシゾウも興味有る様だ。
ウォルトンは倒されたナイトスケルトンに『ターニングアンデット』を掛けて次々と成仏させていった。
そうしている横でトシゾウとマヤ、ポルトス、シェイクスオード、トワイライトの5人がパーティ編成を終えた。首魁を倒す為に精鋭パーティを編成したのである。
『大行進』の首魁、『御旗』を持ったミノタウロス1体が残っていた。
魔法や矢は弾かれ、兵が近寄ると大斧を横に大振りし、近寄った『大盾』達は薙ぎ払われて盾受けをするのが精一杯で後方に飛ばされ転げる。
転倒させられた『大盾』の兵に追い打ちを掛けようと迫るが、ゴールデン・バーボン隊の『大盾』の兵が一人、間に割って入る。
首魁のミノタウロスの前に割り込んだ『大盾』の兵は『挑発』を打つ。
ミノタウロスが振りかぶりながら踏み込んでくる。
普通の兵は迫り来る巨体と迫力に負けて無意識に後ろに引くのだが、丁度引いた位置がミノタウロスの一撃をモロに食らう場所。
対峙している『大盾』の兵は経験と勘で”あ!、此所で引いたらダメだ。逆に踏み込んで・・”と一歩踏み込み『シールドバッシュ』(大盾で殴る技。敵視アップ)を繰り出した。
ミノタウロスは避けきれずに盾でビンタを食らった感じになり、一瞬動きが止まり、苦し紛れに大斧を横に薙いだ。
『大盾』の兵は盾受けするが、後方に飛ばされながらも足捌きで何とか転倒を免れる。この男もかなりの手練れだ。
「強えーー。」と苦笑混じりの言葉が漏れる。
庇って貰った転倒した兵は立ち上がり体勢を立て直して、難を脱している。
ほんの一瞬双方とも動きが止まり静寂になる。一瞬後ミノタウロスはまた踏み込む。
『大盾』の兵は臆することなく一歩踏み出し、ジャストガード(最良タイミングでの受け)で攻撃を弾くがミノタウロスの体勢は崩れない。
一歩進んで受けて二歩下がる状態。押されている。
スタミナが切れて双方少しの間動きが止まる。スタミナの回復を待ち、戻り次第また攻防が再開される。
『大盾』の兵士は左前半身に体勢を戻し盾を構える。左手の盾を前に体を隠し視野の邪魔にならないスタンダードな構え方。
光の加減でヘルム(兜)の中の顔が浮かび上がる。ヴィックモロー副長だ。嬉しそうだ。
強敵との戦いを楽しんでいる。強敵を前に血が騒ぐ厄介なタイプかも知れない。
目に恐怖や畏れはなくアスリートがスポーツを楽しんでいる時のいい目をしている。
ミノタウロスは今度は振りかぶる事無く踏み込む。五回十回と大斧を撃ち込んでいくが悉く防がれ、弾かれている。
全ての攻撃を受けきった後、ミノタウロスが「ブッファ」と大きな息を吐いた。
この瞬間を狙っていたヴィックモローの目がキラリと光り
「キャパシタバースト!!」と叫び右手に持ったロッドから光の玉を高速で打ち出した。
『キャパシタバースト』とは『大盾』職の職業限定技の一つ。盾受けで受けた攻撃力を盾が吸収し蓄積してトリガーと共に一撃を放つ技。トリガーは技名を叫ぶ。放つ前に『武器に攻撃力を上乗せしてダメージ』か『ロッドで設定しいる状態異常の蓄積値の急上昇』か『属性の攻撃魔法に攻撃力を上乗せ』のどれかを選択して一撃を放つ技。決め技として使われる事が多い。
ヴィックモローの出した技『キャパシタバースト』は首魁のミノタウロスに見事命中。状態異常値が大幅に上がり60を越えていた。
”ダメージが来る”と身構えていたミノタウロスはダメージがスカだったので
”なんだこの野郎!痛くもかゆくもないわ”と鼻息も荒くなり怒りを露わにする。
シェイクスオードがヴィックモローの肩をポンと叩き「グッジョブ!よくやった」と声を掛ける。
トワイライトがヴィックモローの前に立ち「交代だ」と一言。
ヴィックモローは張り詰めていた気が抜けてほっと溜め息をつく。体のあちこちが限界を超えて悲鳴を上げている事に気が付く。
確り盾で受けたはずなのだが、強打のダメージが防ぎ切れず僅かばかり浸透していたのかも知れない。
特に盾を装備していた左腕はパンパンに腫れて疼いている。ガタが来る手前まで戦っていた証拠である。
トワイライトもシェイクスオードも元勇者パーティのメンバー。目利きや観察眼は高レベルに達している。
その二人が見ていてヴィックモローがダメージの蓄積で体の動きが所々アンバランスに成って来ていて限界が近いのを感じ、代わるタイミングを見計らっていた。
本来、ミノタウロスはレベル20〜23で、ヴィックモローもレベル23付近とトワイライトやシェイクスオードは見立てているが、首魁は『御旗』を装備している効果でレベル30に達している。
つまり、ヴィックモローは今回は対応出来るギリギリのレベル差で格上の相手に良く凌いだと言える。
今回ヴィックモローが助けに入って相手をしなかったら、首魁が他の兵達に対してレベル差による無双状態で大暴れして、甚大な被害を出したに違いない。
あと、この首魁を止められるのは元勇者パーティのメンバー(トワイライトとシェイクスオード)以外では、トシゾウかヘンリー隊長しか居無い。
『キャパシタバースト』を食らった首魁のミノタウロスは頭に来て、トワイライトと共にヴィックモローを叩き殺そうと突進する。
トワイライトに軽く|往≪い≫なされる。ミノタウロスの大斧を振り回す手が伸びきる手前、盾で軽く弾かれる。
次に外に受け流され、サイドステップで左側に回り込み『シールドバッシュ』で体勢を崩す。追い打ちで盾で二回殴ったが、所詮は盾でダメージは知れている。
稼げたのは敵視と状態異常値が少し。
此所で一呼吸置いてスタミナを整えながらトワイライトは”『御旗』のお陰で状態異常が貯まらんなぁ”と心の中でぼやく。
間が空いたお陰でタゲ(ターゲット)は完全にトワイライトに移り、上手くあしらわれたミノタウロスは怒り心頭に発し激怒する。
首魁のミノタウロスは怒りを爆発させ力任せに連撃を浴びせかけるが、テンポ良くジャストガードでトワイライトがあしらっている。
無表情で淡々と盾受けしているトワイライトだが内心”あーああ。状態異常値の溜まり方が悪いなぁ”とまだぼやいている。
首魁のミノタウロスは既に討伐された他の2頭と同じ様な個体であったが、『御旗』を装備して首魁になった事でレベル、HP、スタミナ、筋力や器用さ敏捷性等の各能力値、各状態異常耐性等、多くの能力値が上昇している。
トワイライトは首魁に対処する基本戦術はオーク達と同じで、『大盾』(自分)でターゲットを確保しながら状態異常値を稼ぎ、気絶させて攻撃力の高いアタッカーで討ち取る戦術だ。
ただ、『御旗』の効果のお陰で、状態異常値の溜まる量が少なく手数と時間を要している。
情景的に一騎打ちの様相の様に成ってきている。中心で首魁とトワイライトがガンガンやっている。
その間合い、5メートル程外でパーティのメンバーが待機(ピヨ待ち)している。
更に4メートル、中心から10メートル程外にグルッと取り囲んだ見物中の仲間の人集り、作戦も終盤で誰の目から見ても勝ったも同然、事の結末を見届けようと緊張感無く笑顔で見物している者が寄り集まっている。
そのピヨ(気絶)待ちの間に、マヤは舞台衣装を解除してエルブンボウを片手に待っている。
シェイクスオードは大剣を構え技の溜めを開始する。トシゾウも愛用の日本刀をベルトに差し左手のフックで押さえ普通に立っている。
ポルトスは右手に持った大剣の腹を肩に乗せすぐ動ける体勢。
亜里砂はやや後ろ見物の人集りの少し手前でブツブツ言っている。「死ね死ね死ね−。死ね死ね死ねー、死ね死ね死ね死ね死ねー・・」
すぐ側の仲間の兵は”コレは、詠唱なんだろうなー?、死ね死ねコール・・スゲー詠唱だな”
と見てはいけないモノを見てしまった様なしかめっ面の兵が数人、横目で見ている。
ヴィックモローが稼いだ分も有り状態異常の値もそろそろ溜まってきたのだろう、トワイライトが
「そろそろ行くよー。準備よろしく」と声を掛ける。
パーティのメンバーは即応体制に入り、身構える。少し間が空く、5秒してからシェイクスオードが「5・・4・・3・・2・・1、今」とカウントダウン声をあげている。
最後の「今」と同時にトワイライトは首魁の大斧の攻撃を大きく弾き、サイドステップして回り込み、横から『シールドバッシュ』で相手の体勢を崩す。
そして素早く一歩下がり、|右前半身≪みぎまえはんみ≫でロッドの先を首魁に向けて『キャパシタバースト』を放つ。
大きめの光の弾が体勢の崩れた首魁に命中する。頭上にヒヨコが3匹ピヨピヨ言いながら円を描く様に走り回り、ピヨ(気絶状態に陥)る。
トワイライトは撃つと同時にバックステップで緊急離脱。
まず、マヤの放ったエルブンボウの矢がバシッと胸の20センチ程手前で見えない壁に弾かれて下に落ちる。ダメな様だ。
一瞬遅れて亜里砂の発した水系氷魔法『ブリザーアロー』が首魁の斜め上から降り注ぐ。
命中寸前に首魁の20センチ程手前で防御障壁が生じ半数は食い止められたが、半数は貫通しした。
貫通はしたものの太さが半分以下に減り、ミノタウロスの手や足、腹、胸、肩に刺さり霧散する。効き目は薄そう。
『御旗』に魔法の『アンチミサイルプロテクション』、『アンチマジックプロテクション』の効果が有るのだろう。相性が悪い。
魔法の発動が終わったタイミングで「トシ!」と合図が飛んだ。
トシゾウが小走りでピヨっている首魁に近づき剣技『一閃』を出す。
トシゾウは超高速で首魁の右脇を通過し、通過後お約束通り『ぼよーん』と変な体勢で走り高跳びよろしく体が宙に舞う。「また詰まらぬ高跳びをやってしまった。」とボソッと呟く。
踏み込み後に右足の義足で踏ん張った時に義足のバネが超反発してジャンプしてしまうのである。
トシゾウは冷静に宙に舞っている間に素早い動作で愛用の日本刀、大和守源秀國を鞘に収める。落下時に人に触れると怪我をさせるからである。
落下予想地点には、手の空いたトワイライトが行動と落下地点を予想して近くにいたヴィックモローに「コッチ来て」と連れ出して二人掛かりのナイスキャッチで無事だ。
ナイスキャッチをしたが、何も聞かされてなかったヴィックモローは超ビックリ顔。
背後の観衆から「ナイス」とか「副長、グッジョブ!」の『いいね』の声が多数上がった。
首魁は右脇腹を切られ大ダメージを受け出血している。その首魁にシェイクスオードが踏込み溜た大技で袈裟懸けに切るが両断出来ず脇腹の辺りで止まる。
一歩遅れてポルトスが大剣を突き系のスキルで胸を貫く。
首魁の背中から血飛沫が上がり、『ガク』と力を失い膝から地に崩れる。仕留めた。
皆の注目が集まる中、静寂の間が一瞬流れる。
周囲から「乙ー!」とか「おつ」、「お疲れ様ー」、「02」等作戦の終了の歓声が拍手と共に挙がった。
戦いは終わった。
著作権の問題で本文には載せていないですが、2話での『バトルソング』は飛べガンダムと哀戦士でした。
野営場でガッツリ殴り合っている中でサビ手前のイントロの時にシェイクスオード、亜里沙、トワイライトは同じタイミングで「降りられるのかよー!!」って叫んでいます。丁度ガンダム哀戦士のドラマではジャブロー降下作戦の中で降下中のドムのコクピットでパイロットが叫んでいるのです。
当然ですが、3人は周囲の異世界人から白い目で見られてます。”何?この人たちは?”みたいな。
今回は『立て、闘将ダイモス』をイメージしてました。
燃やせ 燃やせ 真赤に燃やせ 怒る心に火をつけろ 倒せ 倒せ力の限り お前空手を見せてやれ
茜色の朝焼け~♪
後になって気が付くとオークが元気になりそうです。