【008】激突!モンスター大行進(上)
「」は台詞。””は思い・心の中の台詞。『』は名称・擬音・その他
モンスターの『大行進』が想定外のコースを進んでいる。
報告に来た偵察隊の隊員が一本東の道にズレた状況・理由を話し出す。
「問題の場所は此所なんです。」と地図のとある場所を指さした。川を渡って少し南下した後に曲がって南東に道が延びていく場所。
「地図上では川を渡り道は南から南東に緩やかに曲がっています。ソコから南南東に道が延びていますその先に十字路が有ります」と、まずは地図に書かれている道筋の説明をする。
「問題はここ、南東に延びている道が南南東に緩やかに曲がっている部分です。地図では斜め一本線ですが、実際には南東のまま真っ直ぐ更に伸びてから急角度のL字に道が曲がっているのです。」
偵察隊の隊員はココで一度言葉を切り、息を整えた後続きを説明する。
「この地区では始点から終点まで斜めのほぼ直線ですが、実際この直線上に小さい岩山が存在します。その岩山を迂回する様に道がL字に曲がっています。
そして『大行進』は曲がりきれずに森の中の道を逸脱。そのまま南東方向に進みに、一本東の道に到達。その後道に沿う様に進み出しました。」
シェイクスオード、トワイライト、トシゾウは説明を聞きながら開いた口がふさがらずに
「マジかいな?」と声を揃えて突っ込んだ。
「マジです。今居る此の道から一本東の道の10マイル北の位置を南に進んでいるのが確認されております。」と偵察員は現状も報告した。
少々の沈黙の後、トシゾウが喋った。
「仕方ねぇな。一本東の道で網を張り直すか。」と喋りながらグッと目を見開き地図を睨んでいる。
シェイクスオードはテント等を張り本営を設営している兵達に向かって「設営中止。移動するぞ。悪いが馬車に積み直してくれ。」と号令を掛ける。
トシゾウとトワイライトは地図を見ながら相談し、偵察隊員に気になるポイントの地形の説明を求めた。
相談の結果トシゾウは地図に×印を付けた。新たな作戦の場所が決まった。
トシゾウはシェイクスオードに言ってA3位の紙を30枚用意して貰いそれに印の付いた地図をじっくり観察しスキルの『うつす』で印刷した。
地図を印刷した紙を『ミコライウ』の入り口広場にある参加受付所に届けて作戦予定地が変更になった事を知らせる様に手配した。
トシゾウ、トワイライト、ポルトス、マヤに加えてシェイクスオードとヘンリーの6名が馬車に乗り新しい作戦予定地へ向かって急ぎ出発した。
出発間際にシェイクスオードは近衛隊から5名招集し、現在の旧作戦予定地に止まり、訪れたイベントに参加する冒険者達に予定地が変更になった事を伝える任務を与えた。
馬車は御者席にトワイライト横の助手席にそらちゃん。後は荷台で揺られている。
時間はAM8:30頃。一台の馬車が少し道を戻り十字路で東に曲がり急いで作戦予定地に向かった。
馬車で移動する事15分、『大行進』が南下してくる道に入った。
馬車での移動中にマヤ『イーグルアイ』〜ポルトス『デン導』〜トシゾウ『うつす』の連携スキルを発動した。
初めて見るシェイクスオードとヘンリーは危ないオカルト集団を見る様ないかがわしい目でみたが、直ぐに有益な情報が入手出来たので感心した。
『大行進』が南下してくる道の上空からの視点で出来た地図をA3サイズの裏紙12枚に印刷した物が出来たのである。
上空から俯瞰した絵図をトシゾウは別々の端と端を重ねて繋げて一枚の道沿いの縦長の地図になる様にして地形等を把握しようとしている。
此の時トシゾウの目は薄く赤い光を宿していた。優遇スキルの戦術が発動している。
シェイクスオードは気付いていて口元が少し綻ろんだが、近くにいるヘンリーはそもそも優遇スキルの事は知らないので気付いていない。
シェイクスオードとヘンリーは、トシゾウが先ず戦場に出来そうな場所を確認して地の利が得られそうな場所、自分のやり方で戦いやすい場所を見定めているものと推測した。
”地形データが得られるなら、地の利を得るに越したことはない。”とヘンリーはトシゾウの行動を理解している。
そこにトワイライトが御者席から離れて検討に加わる。『大行進』の進行ルートに達したので馬車を止めて荷台に来た。
トシゾウとトワイライトが3、4回相談したあと、シェイクスオードに投入可能戦力を聞いてきた。
「兵力か?近衛中隊とゴールデン・バーボンの二個中隊。ゴールデン・バーボンは全員一致で志願してきた。あと、セイロンから一個小隊。お隣の街ポンテから一個小隊。」
と言いながら、シェイクスオードはメモを取り出して確認しながら続きを言う
「エルフの弓兵が60+30+15で・・105名、エルフの魔法使いが12名、バリスタ(大型の弩)が何とか10台確保出来た。あとクエスト受けた冒険者が約70名。冒険者抜きで500名前後」
とシェイクスオードは言い終えて渋い顔を少し滲ませて
「敵は約七百から八百。此方は敵兵力の三分の二か・・相変わらずウチはショッパイ(状況は美味しくない)な。兵力が上回ってない状況だと冒険者の参加は減るかもしれん。」
と今回指揮官でないシェイクスオードは緊迫感が無く淡々と話す。
トシゾウは一分ほど思案したあと、トワイライトに二言喋っり、トワイライトは頷き、トシゾウは作戦地を地図で指さした。
「此所で『大行進』を迎え撃つ。今居るこの十字路から10分程北に上がった辺りだ。」
上空からの視点を写した地図を一同は見た。森の中に道が通っているだけで周囲に障害物や大きな岩、崖、谷、川などは無い。
広い平地の真ん中に道が通り周りの森も木の密度が薄くポツポツと生えている程度。
「何も無い平坦な場所に木がポツポツと生えている程度だな。」とシェイクスオードが感想を言う。
そしてトワイライトが続きを言う
「ああ、そうだ密度が低いから少し切るだけで広場になる。戦場になる。森や林の中だと多人数での連携が取れにくい。」
「では行こう我らの戦場に。早く行って罠を張り巡らせねば。」とトシゾウも残り時間でどれだけ準備を積み上げられるかが俺達の戦いだ。
「ああ。」と再びトワイライトが御者席で手綱を取り、『大行進』進路上の道を馬車は北上しだす。その馬車の後にシェイクスオードの率いる近衛隊の馬車の一団が続いている。
荷台では残った3枚の絵を見て「これは、『大行進』を空から捉えた絵だな。」とヘンリーも打ち合わせに少しずつ参加しだした。
「『イーグルアイ』で遙か北方の敵の本隊を効果時間ギリギリで捕らえたわ」とマヤが説明する。
「先鋒はやはり豚ロース(ワイルドボア)と上カルビ(グッドカルビバッファロー)で間違いないか?」
とトシゾウは確認する。呼び方が少しずつトワイライトの影響を受けて焼き肉の呼び方に成ってきている。
聞いているシェイクスオードとトワイライトは”ああ、良い響きだ。その名を聞くと焼き肉食いたくなってきた”と食いしん坊な二人。
「ん・・んん。上からの絵なので判りづらいが、それで合っていそうだ。」とヘンリーが紙を顔の前に近づけて目を凝らして見ている。
「その次、第二陣がオークで、その後に中小の魔物・野獣が続いている。」と二枚目三枚目もかくにんしてヘンリーが編成を伝える。
トシゾウはトワイライトが昨日教えてくれたいつもの編成通りなので
”トワイライトから聞いている通りだな。ならば罠も同じ感じで設置すればいいな。”と心積もりした。
ジッと地図の方を見ていたポルトスが提案をしてきた。
「手前で兵を伏せといて、『大行進』通過中に俺が横から本陣を突いて大将首取って来るのはどう?それで終わりにならないか?」
トシゾウは”さすがはポルトス。本陣を落として終わりなら其れで正解だ。お前なら其れも出来るだろう”と高評価をするが、首魁を討つ、御旗を潰す事は避けたい。
「流石はポルトスだが、お前の本陣への突入は最後だ。仕上げの段階でお前の武力が必要になってくる。其れまでにオークを成るべく倒して欲しい」と言葉を選んだ言い方をトシゾウはした。
「そうか、解った。最後の仕上げだな。」とポルトスは自分の出番を確認した。
途中で首魁や御旗を討ってしまうとモンスター達は統制を失いどっちの方向に走り出すか判らない。また何を仕出かすか判らない。予想していない事態が起こり手間が増えてテンパる。最終的には頭を抱える事になるだろう。
一番厄介な状況は蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げ散る事だ。
こちらの人数は相手より少ないので全部追うのは無理。結果周辺の村や里に被害が続出するだろう。
更に森の中を捜索すれば必ず人員をパーティ程度まで細分化しなくてはならず、奇襲、不意打ち、待ち伏せ、伏兵を食らい人的被害が積み上がっていく。
一方敵の統制の効いている状態なら御旗を中心に押し寄せてくるのだから、砦や防御施設で迎え撃てば周辺の村や里に被害は及ばないし、砦を利用し防御力への+αを活かせる。
広く隠れる場所のない見通しの良い場所で待ち構えて居れば、奇襲・不意打ちを食らう心配もない。
集団戦に持ち込めれば戦術や戦法を駆使して例え相手がオークでも対等以上の戦いに持ち込める。相手は戦術・戦法・陣備えを使ってこないはずだから。
なのでトシゾウの心の中では”ポルトスにあの様に言ったが、頼むから最後まで本陣に殴り込むのはやめて。お前なら余裕で大将首取るだろうけど其れだけは勘弁してくれ。”と祈るばかりだ。
そこに、トシゾウの渋い顔を見るに見かねてトワイライトが
「ポルトース!!、お前解ってねぇーな。」と『この忙しいのに手間掛けやがって!』って時の横浜弁に近い口調で言う。
「なんだよ。振られ野郎。」と咄嗟に強がるポルトス。
トワイライトは胸が苦しそうなオーバーアクションをしながらポルトスの肩を掴み。苦笑いで
「その呼び方、勘弁して(苦笑)」
「判った。わかった。すまん。」ポルトスも”仕舞った、言ってしまった”と苦笑い。
気を取り直してトワイライトはポルトスの脇腹を肘で軽く突きながら
「分かってねぇーな。今回大将首なんてどうでも良いんだよ。」
「ええ?」と理解出来てないポルトスの顔には”大将首が一番じゃないの?”と書いてある。
「コレを見ろ、コレを」とトワイライトはクエスト受付時に貰ったチラシを見せた。
「今回のクエストの紙じゃん」
「コレ見ろ、副題に何と書いてある?」と指で指す。
「オーク肉収穫祭・・だが。」とポルトスはまだピンと来ていない。
「今回の最重要任務は大将首よりもオーク肉なんだよ。どんだけオークを仕留められるかが重要なんだよ。」
「!!」ポルトスは”あ?!”という顔をした。
トワイライトは調子に乗る感じで「お前も食っただろうオーク肉」
「食った。あの超激旨な肉」
「旨かっただろう。」所々トワイライトは芝居がかった言い方が出る。
「旨かった。絶品だ。また食いたい」ポルトスは目を閉じてやや斜め上に顔を向け思い出している。
「だろう、其れを食べる為に多くの人間が参加してくる。大将首を狩ってオークが逃げ散って狩れなかったら、お前、オーク肉当たらんぞ。」とトワイライトは脅しを掛ける。
ポルトスは「え?、其れは困る。」と仕舞った顔。
「他の参加する奴は少しでも自分の貰える分を増やす為に一匹でも多くオークを倒そうしてるのに、敵の本陣気にしてオーク倒すのが少なかったら貰えてもコレぽっちよ。皆オーク肉ほしくてオーク狩ってるのに・・。なあシェイク!」
トワイライトは脅すだけ脅してシェイクスオードに振った。
ポルトスもシェイクスオードの方を見る。急に振られたシェイクスオードは多少戸惑いながらも。
「ああ。結果を出せなかった奴にはオーク肉は当たらん。働かざる者食うべからずだ。腹一杯食いたければバンバンオークを倒すことだな。」
とシェイクスオードもアドリブで調子を合わせてくれた。
「そやったんかー。アブねぇ危ぶねぇ。オーク肉逃す所だったよ。」
「ポルトスお前だけ御馳走当たらなかったら可愛そうだなと思って。」と態とらしいトワイライト。
「助かったよ。早目に気が付いて・・・。自分の食べる分を稼いでから、オーク全部殺ってからでいいんだな。首領は後回しで。」
「そうだ、今回の任務はオークをどれだけ残さす収穫出来るかがが最重要だ。」
「理解した。任せてくれ。」とやる気を出した。
ヘンリーはトワイライトの代わりに御者をやっていたが、楽しそうな会話を聞きながら頬が緩み意図せず薄笑みを浮かべている。
“普通は『大行進』と聞けば悲壮感が漂い泣き言を並べる輩が多いのだがな”と思いながら、楽勝ムードのこの面々凄いなぁと感じている。そして
「そろそろ、目的地です。」とヘンリーは到着を告げる。
馬車は止まり先ずトシゾウ、トワイライト、マヤ、ポルトスの4人は急いで降りて作業を開始した。
シェイクスオードとヘンリーは後続の馬車の一団が到着するのを待ち近衛隊の隊員達に戦場予定地の樹木の伐採を指揮しする。
近衛兵達が木を伐採し枝を落とし、馬車から馬を外し丸太を引っ張らせて運び戦場になる広場が徐々に広がっていく。
少しして、エルフの里『ミコライウ』から弓兵とゴールデン・バーボン傭兵中隊のメンバーが到着し、隊員達は隊長のヘンリーとの再会を喜んだ。ゴールデン・バーボン傭兵中隊が到着し一気に130人増えたことで辺りは騒がしくなり、活気が溢れる感じに成ってきた。
エルフの里『ディンバ』からも弓兵が到着した。弓兵の中に2、3日前トシゾウ達が立ち寄った時に門衛をしていた青年二人が弓と槍を持って参じている。
その後にディンバの物産店のお嬢さんが馬車で後に続いている。そのお嬢さんどうやら、商売繁盛で御機嫌の様だ。荷台には樽が多く積まれている。
その後『セイロン』の街から近衛隊の事務方、ヴァネッサとミレイ2名が馬で到着した。
屋敷の中での服装と違いローブに革鎧を着こなし、背中には弓と矢筒、スタッフを背負い肩からベルトで下げられた小さめの雑嚢が左右のお尻のやや上から下げられていた。
胸と腹を守る胴体の革鎧は一枚物では無く、手の平位の大きさの革を本来の革の色のベージュ、暗緑、黒、茶色に染め上げた断片をパッチワークみたいに繋ぎ合わせて緑系の迷彩柄にしてある。
デザインも色合いも良くおしゃれ着としても通用する程でセンスの良い革鎧である。
二人とも帽子はベレー帽だが、革の迷彩柄で胴の革鎧と基調が統一されておりお洒落である。
二人ともまずはシェイクスオードの居る所に行き敬礼して到着を告げた。
二人はシェイクスオードに言われてトシゾウの加勢に向かった。
トシゾウは砦や備え罠を作るのは昨日を含めて三回目であり、もう手慣れたものだ。
トシゾウとトワイライト、マヤが連携して作業しているのを見付けて近づこうと歩み寄るヴァネッサとミレイだが、歩く速度が緩くなる。
近づくに連れて土系魔法や錬金術を使って次々と急ピッチで備えや罠が出来上がっていく様子を見て、罠や砦に関して素人目でも凄いのが分かる。
周りの雑音が多くなっているので近くまで行かないとトシゾウ達は二人に気付かなかった。
丁度罠を仕掛けている所だ。トシゾウが錬金術の手袋を嵌めて『造形』で横二メートル縦三メートル深さ三メートルの落とし穴を先ず作る。
続いてトワイライトとマヤが『ストーンウオール』で落とし穴の本陣に近い方の縁の地面に石製のプレートを設置する。防御側が誤って穴に落ちない様にである。
其れが終わると、作業の兵がハシゴで穴の底に降りて底に木製のスパイク、尖った杭を埋め込み落とし穴は完成する。
トシゾウは次々に穴を造っては次のポイントに移る。トシゾウの退いた後にトワイライトかマヤがプレートを設置し、マヤ達が退いたら作業兵が梯子で下りていくといった流れ作業である。
ヴァネッサとミレイの二人に気が付いたトシゾウは、挨拶をして一寸お喋りをした後に
「幻影魔法使えるか?イリュージョンとかいうやつだ」
「あ、はい。使えますが」とヴァネッサとミレイの二人は頷く。
「大体の罠の設置が終わって、作業兵達の退避が終わったら『落とし穴』に蓋をして行って欲しいんだ。遠い方から」とトシゾウは術を発動しながら二人に作業の依頼をする。
「蓋?」二人は蓋の意味が分からない。
「うん。蓋。幻影魔法で落とし穴の入り口に道や周囲の地面の映像を貼り付けて落とし穴を隠して欲しいんだ。」
「あ、そうゆうことなんですね。」とヴァネッサとミレイは理解した。
「只ね、落とし穴の数が多いから相当MP消費することになるんで。イベント参加者が来だしたら冒険者の魔法使いに協力頂いて幻影魔法で落とし穴を隠す作業を手伝って貰って欲しい。」
「分かりました。」と言ってヴァネッサとミレイ二人は作業に掛かりだした。
落とし穴は30個目で尖った杭や木製スパイクを使い切ったので、尖った杭のない穴だけの落とし穴を20個作り合計50個の落とし穴が出来た。
その頃には作業していた兵も作業を終わらせて本営の周りで休んでいる。
本営の右隣にギルド職員が3名でイベントの受付をしている。その横で昨日受付嬢やってた女性ともう一人で参加冒険者の割り振り、部隊編成を補助していた。
時間もそろそろ11時半を超えるが、本営から一寸離れた広場で、近衛中隊とゴールデン・バーボン中隊が合同でブリーフィングを行っていた。
物資コンテナを寄せ集めてステージを作りその上で、中央やや右寄りにゴールデン・バーボン傭兵中隊のヘンリー隊長、中央に近衛中隊の隊長ロナウドが立っている。
そのステージの前に二個中隊が群がっていて|胡座≪あぐら≫をかいて座りリラックスして聞いている。
ヘンリーは大盾装備で立っている。ロナウドは大剣を持って説明をしている。
「今回は二個中隊で迎撃に当たるが、中隊で持ち場を分ける。近衛中隊は左翼端の櫓の前で、A地点だ。ゴールデン・バーボン中隊は右翼の櫓の前B地点がそれぞれの持ち場だ。
で、俺達の最初に当たる敵はオークだ。今回の一番の難敵もオークだ。オークへの対応だけは慎重にたのむ。オークの攻撃は重くて早いが大盾なら何とか受け凌ぐことが出来る。
大盾は二人一組でバディを組んでくれ。前後2段で前列が『フォースシールド』を使って盾防御で防ぎ相手の状態異常の蓄積を進める。後列がロッドを掲げて『気絶の息吹』を照射して状態異常値の蓄積を進める。」
ロナウドは一旦話を切り一息入れる。
ここで『大盾』に関する情報のおさらい。
『大盾』とは戦士系のジョブで別名『タンク』。防御力が高く攻撃力に乏しいのが特徴。
ジョブ特典は装備重量軽減と防御力割り増しがある。
主武器の大盾はそのジョブの名称になっているほど特徴的な武器で防御力が高く、ダメージカット量が高いのが特徴で中盾・小盾とは比べものにならない。
主武器大盾には盾受けする事で相手に状態異常値を蓄積させる。状態異常値が一定量貯まれば状態異常になる。
盾技『フォースシールド』を使えば、主武器大盾の防御力は更に上がり、盾受け時に敵の攻撃を反射し、相手にダメージを与える。反射ダメージにより状態異常の蓄積値も増える。
副武器ロッド。ジョブ『大盾』の純正副武器なのだが、個人の好み又は状況に応じてロッドを持たず、片手剣やショートソード、メイスを持つ者も居り副武器は絶対条件ではない。
ロッドは各種状態異常の息吹を噴射する。吹き付けられると状態異常の値が累積する。また状態異常だけではなく、敵視上昇の息吹も選択出来る。
『大盾』職で設定出来る状態異常は『気絶』『毒』『睡眠』『暗闇』『石化』『遅延』の六種類の状態異常があるが、今回は『気絶』を選択。
『気絶』は約13秒前後の間は気を失った状態か、自失呆然となり攻撃出来ずに、無防備に成る。
その間攻撃を受けても効果時間が切れるまで『気絶』状態は続く。
『気絶』の効果時間中は頭の上でピヨピヨ鳴くヒヨコが走り回っている。別名『ピヨ』る。
ロナウドは隊員達への説明を続ける。
「前列のスタミナが底を突いたり、しくじったり、多めのダメージを貰ったら前列と後列を交代して、後列で回復する。ポーションでの回復を越えるダメージを貰ったり、怪我したら早目に戦線から下がり手当を受けてくれ。抜けた穴は後列が代わり保たしている間に予備隊から補充し抜けた穴を埋める。」
ここでロナウドはまた一旦話を切り、説明を聞いている隊員の様子を確認するが、大丈夫で皆話しに付いてきている。
続いて今度はヘンリーが説明を始める。
「次にアタッカーだ。アタッカーは三人一組だ。アタッカーの出番はオークが『ピヨ』(気絶状態)って無防備に成ってからだ。
大盾の二人が前後連携して状態異常の値を高める。その間にスタミナを回復し、『ため』を使う大技をチャージして準備しておく。
オークが状態異常になり『ピヨ』ったら大盾はアタッカーの攻撃の邪魔にならない様に身を避け一旦下がる。アタッカーは3人がかりでオークに大技を叩き込み息の根を止める。
大盾はこのタイミングでスタミナを回復しておくこと。
そして次のオークが出てくれば大盾が相手をする。この時に盾技『挑発』を一発飛ばして、ターゲットが他に飛ばない様にタゲを確保しておくこと。
その間にアタッカーの3人は、大技のインターバルチャージ(次に技が使える様になるまでの使用不可時間の消化)と平行してスタミナの回復と、あれば別の大技の『ため』開始をしておく様に。
あ、あと言っとかないといけないのが、角笛が鳴ったら3秒以内に地に伏せること。何があってもだ。コレは絶対厳守!いいな。」
と言い終えてからも言い忘れがないかヘンリー隊長は気にしている。
今度はロナウド隊長が「質問あるか?」と一同を見渡す。
近衛隊の中から手があがり、ロナウド隊長が「何だ」と問う。
「えっと、角笛の件ですが、3秒に間に合わなかったらどうなるんすか?」と素朴な疑問。
ロナウド隊長は平然とした言い方で
「うん。背後からヴァリスタが飛んでくる。当たれば跡形もないが、手足だとかするだけで吹き飛ぶ。即死する本人は良いが、その光景をみた仲間が恐慌状態になるから、必ず3秒以内に伏せること。厳守ね!」と念を押すロナウド。
ロナウドの返答の中で『ヴァリスタ』と言う名が出た頃から「うお」、「こえー」、「まじかよ」と何人かが漏らし、ざわついた。
『ヴァリスタ』とは超大型のクロスボウで、持ち運びの出来る大きさではなくほぼ固定式で解体すれば持ち運びは可能。よく城壁の上部に設置されている事が多い。
もし仮に解体せずに運ぼうとすると、十人以上で日本の『御神輿』を担ぐ感じに成る。
威力が高くオークでも一撃で倒せるが、再装填には時間が掛かり、照準を合わす速度もゆっくり。
もう一人手を挙げてゴールデン・バーボンの若手の隊員の一人が立って
「報告?噂?だったか、敵の先鋒・第一陣はグッドカルビバッファローとワイルドボアって聞いたんですが、自分達は先鋒を相手しなくて良いんですか?」と質問をした。
質問を聞いて、集まってブリーフィングを聞いている兵のなかから
「豚と牛かー」とか「焼き肉セットだよ(笑)」、「夕食の材料が来るの?」、「俺はBBQがいい」など笑い声や軽いジョークと共に楽観的雰囲気がひろがり隊員達に笑顔が広がった。
”コレは不味いな”とヘンリーは顔の表情に渋さが混じり
「牛や豚と言って侮るなよ。数で上回る貴族の軍隊が何度もその牛と豚に打ち破られているのを今朝聞いた。」
ヘンリーの言葉に雰囲気は一変しブリーフィングの会場には静寂が戻った。皆意外だった。
さっき手を挙げた兵が立ったまま再び手を挙げて
「豚と牛が其れほど凶悪とは|俄≪にわか≫には信じがたいですが、我々が対処しなくて良いんですか?」
と若者は不安を隠さずに率直に質問する。ゴールデン・バーボン傭兵中隊の良い所は『分からない所は聞く』で分からないまま放置しない習慣が根付いており、隊長も疑問にはちゃんと説明する。
|偶≪たま≫に隊員の疑問や質問から『作戦の中の見落とし』や『うっかり、対処忘れ』等を気付くなど言い循環があり、皆で考える・気付くが普通になっている。
ヘンリーは”一応、釘は刺しといた是で侮らないだろう”と思いつつ。
「うん。牛豚と言えども長所を活かすと手に負えなくなるらしい。油断しない様に。ただ、今回は司令のトシゾウ殿が罠を張り、策を施しすので無力化出来るらしい。との事だ」
と淡々と伝えた。
立っている若者は「あ、それなら何も言う事有りません失礼しました。」と言って座った。
近衛隊の隊員が居る集団の方から「えらい、あっさり引き下がったなぁ」と声がした。
さっきの若者の隊員の横にいたリトルジョンが立ちあがって
「いや、近衛隊の方々は知らないと思うんですが、うち等ゴールデン・バーボン隊の人間はトシゾウさんの指揮下で戦ってみたいと思ってて、今回トシゾウさんが指揮を執る事を知て参加したんです。」
と自分等の事情を説明し出すが、近衛隊の隊員達はその事(トシゾウの名が司令官として出ていたのは、ゴールデン・バーボン傭兵中隊を参加させる為)は知っていた。シェイクスオードから”こいつ等誘き出す”って聞かされていた。
ので皆ニヤニヤして聞いている。こいつ等人が悪い。
「で、実際昨日、自分が『ミコライウ』の夜店でトシゾウさんを見たので、うち等全員で『ミコライウ』の村長さんと、ロナウドさんに頼み込んで何とか出して貰ったんだ。
だから、トシゾウさんの遣る事に文句ありません。念願が叶ったんです。何たって自分達の理解の遙か上を行く作戦を立てると聞きます。右向けと言われれば右向きます。左向けと言われれば左向きます。地に伏せろと言われれば地に伏せます。何とでも命令して下さい。」
とリトルジョンは意気込みを熱弁する。近衛隊の中から「おおー。」と賞賛の篭もった感嘆が聞こえる。かなり盛っている感じもあるが・・。
タイミング良くヘンリー隊長が
「こいつ等素直だな、悔しい。隊長の命令は聞かんくせに(笑)」とぼやく。
大爆笑が起こる『ドッカーン』。近衛隊もゴールデン・バーボン隊も一緒に大笑い。
ヘンリー隊長は仕事も早いし頭も切れて笑いの取れるイケメン。天は二物も三物も与える与えるのねと言いたくなる。
大爆笑が終わると近衛隊のロナウド隊長が締める。
「さあ、締めるぞ。小隊毎に円陣を組め、小隊長が『ファイトー』と言ったら続いて全員で『二発』と続くんだ。」
言われた通りに二個中隊とも各小隊毎で円陣を組み『ファイトー・二発』と歓声が上がり、気合いが入って、迎撃の準備に取りかかった。
解散の時にだれかが「何で二発なんだ?」と呟いている者がいた。
「追伸:角笛が鳴ったら何があっても必ず3秒以内に伏ること。絶対だぞ。」とロナウドが大声で叫んでいた。
関所街『セイロン』と領内の主都『ポンテ』から守備兵各一個小隊が援軍で到着した。
同じく近隣のエルフの里3カ所からも弓兵が援軍として到着した。
援軍も到着して本営より奥は冒険者も含めて五百名を越えたのでごった返して手狭になり、手の空いた兵達本営より奥の疏らな樹木を伐採し広場を広げて何とか落ち着きを取り戻した。
シェイクスオードとトワイライトは指揮官が足りない事に気が付いて相談していた。
まず、エルフの里から弓兵の援軍は3隊に分けて、ヴァネッサとミレイにディンバの門衛2人それぞれ隊長をさせる事にして手順・説明をしてから送り出した。エルフの指揮官はやはりエルフ同士が良いと判断したからである。
次に近衛隊とゴールデン・バーボン傭兵中隊は既に指揮官が居るので心配なく右翼と左翼を任せられる。
関所街『セイロン』から来た一個小隊(三十二名)は予備隊とし、22名が大盾、10名がアタッカー装備で右翼の後詰め。小隊長は冒険者パーティを管理運用しつつ。右翼の穴明いた所に予備隊から人員を派遣する仕事。
主都『ポンテ』から来た一個小隊も予備隊として左翼の後詰め。この隊長はなんと主都『ポンテ』の守備隊長が自ら来た。「面白そうだから」だそうだ。『ポンテ』の守りは部下に任せたらしい。大物隊長が来たが遣る事は右翼の後詰めの隊長と同じ。
伝令から「モンスターの『大行進』接近距離1マイル半(2Kmチョイ)」の報を受けたが、魔法使い12人の指揮官が居無くて頭を悩ませている。
シェイクスオードが「トワイライトお前行ってくれるか?」と仕方なく話していたら、都合良く亜里砂が到着した。
「やあ、やぁ、真打ち登場。ども。ども。間に合った?」っと緊張感がない。
しかし、馬を飛ばして駆けつけてきた亜里砂は息が上がっている。
トワイライトとシェイクスオードの二人は大きな溜め息を着き亜里砂をウエルカムと歓迎した。
亜里砂は避難民が退去した村の『聖空界』発生装置をシェイクスオードの兵達と回収して回って関所街『セイロン』に帰った。
「私の知らないうちに、モンスター『大行進』の迎撃って面白そうな事してるじゃない。」と馬を更に飛ばして駆けつけ、間に合った。
二人に会うなり開口一番「私にもオーク肉食わせろ。」だった。実にタフな女だ。
シェイクスオードとトワイライトはほっとした風で笑みがこぼれ
「良く帰ってきてくれた。助かったよ。」と安堵の表情。
亜里砂に概要と諸注意その他を伝えて、『魔法使い班』を任せた。というより、もう丸投げ。「呉々も火系の魔法は使用禁止。後は・・兎に角、上手くやってくれ、一応遣る事はメモにも書いといた。」と念を押ししてメモを渡した。
亜里砂に懸案の『魔法使い班』を押しつけてシェイクスオードとトワイライトは漸く自分等の準備を始めた。
伝令隊がモンスターの『大行進』が1マイル(1.6?)ラインを越えた事を伝えて回る。
諸隊が配置につき、それぞれの隊員が緊張感を持ち表情が引き締まる。
モンスターの現れるであろう方向に向かって左から、
ゴールデン・バーボン傭兵中隊がまず布陣している。
ゴールデン・バーボン傭兵中隊の左斜め後ろに左翼の予備隊が控えており、ヴァリスタ5台が設置してある。
左翼予備隊の横でゴールデン・バーボン傭兵中隊の後ろに石作りで横長の櫓があり、エルフの弓兵が詰めている。
道を挟んで反対側、ゴールデン・バーボン傭兵中隊と対照的な位置に近衛中隊が布陣している。
近衛中隊の大盾が少なく見える。
近衛隊の後方に同じようにエルフの弓兵が詰める櫓がある。右斜め後ろには予備隊があって全く対照的な位置にある。
ゴールデン・バーボン傭兵中隊と近衛中隊の間、中央部分は5メートル下がって大盾一個小隊(35人)が横一列に並んでいる。真ん中に『大行進』が進んで来る道が通っていて、其れを塞ぐ形で横に並んでいる。
その大盾の後ろに弓兵もズラリと横に並んでいる。その後ろにトシゾウ、マヤとそらちゃん、亜里砂と12人の魔法使い達もいる。見るからに『ここが本陣ですよー』と判る。
一見、大盾の一個小隊で中央足りるのか?と疑問が湧く。横一列に並んだ大盾小隊の中央、丁度モンスターの『大行進』が進んで来る道の真ん中に居て一人だけ装備が違う人がトワイライトだ。
ダンジョン出土の品を装備していて高そう。デザインも良い。だが緊張感が欠ける感じだ。
『大盾』職のロッドを右手に持ち力を抜いてブランと垂れている。主装備の大盾を地に縦てて左肘を掛けていて上端を手の平で掴んでいる。
意気込むでもなく、畏れるでもなく、名将の様に険しく格好いい表情でもなく、笑むでもなく。ただ飄飄と涼しい顔をしている。
今、ジャストで考えている事は”注文した焼き肉のタレ届いているかなー?”と別な事を考えていた。
近衛隊の中ではシェイクスオードが此方もまたダンジョン出土の高性能装備で身を固めデザインの良い両手剣を背負っている。近衛隊の中央で、一段前の大盾を装備したロナウドとお喋りをしている。
少し時間が経過して、正面モンスターの『大行進』が来る方向から『ピーピー』と甲高い笛の音が聞こえてくる。
トシゾウ達迎撃部隊が布陣している場所から前方は伐採で森が広場に成っていて、広場の真ん中には幅3メートルの道が真っ直ぐ通っている。
広場は其れほど広くなく道から左右に幅30メートル合計65メートルの広さ、縦は150メートル先で森の木々が増えていき暗くなり視界を遮っている。
広場の奥・向こう側の左端木々の暗がりから騎馬が2騎走り出てくる。
また『ピーピー』と高い音の笛を鳴らしている。敵接近の合図である。
其れまでザワザワしていた迎撃側の陣地が『シーン』と静かに成った。一気に緊張感が増した証である。自然と無口になる。
10分もしないうちに広場奥の向こう側、森の端の暗がりから、赤い光を宿した目が浮かび上がる。辺りの森の陰の暗がりに赤い点が増えていき僅かな間に溢れていく。
赤い光を目に宿すなど明らかに一般の獣やモンスターと違う。支配されているのだろう。
赤い光を放つ両眼に黒っぽいシルエットだったモノが、ゾロゾロと歩くスピードで陰から出て来る。
光を浴び、大猪と大牛が姿を表す。
無秩序に横に広がったまま森から出てきていた大猪と大牛が『速歩』程度に速度を上げ隊列を組みだした。間隔を狭め横長の密集隊形に移行する。道を頼りに徐々に迫ってくる。
その奥では次の集団が木陰の暗がりで赤い眼を光らせて人型の巨大なシルエットがゆっくりと次々に姿を現す。オークである。
大猪と大牛の密集隊形が速度を上げる。走る速度の違いで大猪が前列に出て、大牛がその後列に続く形に形成された。
密集隊形が通った後に所々土煙が上がる。その土煙の地点を通った隊列に穴が開く。
まるで小さめの砲弾が着弾した時の様な光景なのだが、実は落とし穴である。トシゾウが錬金術の『造形』で造った落とし穴に、『幻影』の魔法で隠蔽してあった。そこに大猪が通って落ち、後ろに続いた大牛も同じ所を通り落ちた。
落ちた落とし穴は幻影が解けぽっかり穴が開いている。
密集隊形は速度を上げていく。通った跡の|彼方此方≪あちらこちら≫で土煙が上がり「ブキー」「ブモー」と悲鳴が上がる。隊列に穴が空くが直ぐさま埋まる。
多くのモンスターが密集隊形で迫り来る。近衛隊は多くの隊員が顔に恐怖が現れているのを隠し切れていない。
何たって、敵の先鋒で百匹以上の重量級の魔獣達が密集隊形を取り自分達に向かって突進して来る。地響き振動、ゴッツイ迫力で恐怖を撒き散らして迫ってくるのである。
恐くて当たり前だが、反対側左翼のゴールデン・バーボン傭兵中隊は事情が違う。
ゴールデン・バーボンの多くの隊員は密集隊形で突撃を始めた敵の先鋒が纏う迫力と恐怖に怯んでは居ない。むしろ羨望の眼差しに近い。
ヘンリー隊長が隊の皆を怪しんで「おい、ヴィックモロー副長。一寸会わないうちに皆変なモンでも食ったか?変な宗教でも入ったか?」
「はい。旨いもんを食いました。」
「フン。それはいい。では何だ、その目は。あの重量級の密集隊形での突撃は恐怖の対象だろう。」
ヘンリー隊長の横にいるヴィックモロー副長は目が笑っている。ニヤけてる。隊長と副長の側にいる他の隊員も同じである。
ヘンリーは明らかにお前等おかしいだろうって顔で「お前等おかしいだろう。何でニヤけてる?」と突っ込む。
ヴィックモローは「え?。あれ、美味しそうじゃないっすか?」とボソッと。
ヘンリー隊長は「え?・・。」絶句して”あれは『危険な敵』というモノだ危機感は何処へ行った?”と思っていると
ヴィックモローが「おい、リトルジョン」
「はい」と返事をしてリトルジョンが振り返り「みんな!、アレは何?」と皆に問う。
皆は一斉に声を揃えて「上カルビ、上カルビ!。豚ロース、豚ロース!」と答える。
隊員皆の目にはステーキ・焼き肉に写っている。
リトルジョンは生き生きとして嬉しそうに語り出す。
「隊長。『ミコライウ焼き肉のタレ』ってご存じですか?、捕虜になって『ミコライウ』の里で木工の手伝いしたんですが、其所の人が良い人ばかりで名産の『ミコライウ焼き肉のタレ』で焼いた肉を振る舞って呉れたんですよ。超美味かった。」
リトルジョンは思い出して顔が緩み、ヨダレが垂れかけている。
「それでね、里の村長が『大行進』を上手く撃退出来たら『秘伝の焼き肉のタレ』樽で持って行ってやるよって言ってくれたんですよ。コレつけて食べると”生きてて良かった”って思いますよ。隊長も楽しみにして下さい。」
と何故か自慢げな口調。
ヴィックモロー副長がリトルジョンの後に言葉を継ぐ。
「トシゾウ殿が手は打ってあると言われてました。なので皆心配してないのです。心配が無い以上感心は旨い肉料理、晩ご飯です。だた、後のオークが一筋縄では逝きませんがね(笑)」
とヘンリー隊長に説明した。
ヘンリーは”そういえば、うちの皆は食いしん坊だったなぁ”と思い出して、改めて筋金入りだなぁと苦笑いに成った。
その頃迎撃の布陣中央のトワイライトが大盾を構えて「『挑発』はじめー」と号令する。
モンスターの『大行進』先鋒の大猪と大牛が道沿いに突進してくる。落とし穴でボコボコと数は減っているが、まだ三分の二は健在でトップスピードに達する。
丁度進路上の道上にトワイライトその左右に大盾隊がいて共にスキルの『挑発』を発動させて敵視を更に集めている。
恐いぐらい大猪と大牛の目が血走っている。目の前一点しか見えていない。
トップスピードでトワイライト達が待ち構える場所に・・・。
飛び散る血飛沫。土煙が巻き上がり、『ボゴッゴッゴッ』骨の砕ける音が響き渡る。
書いているとどうしても食いしん坊に流れて行きます。重要人物は多分みんな食いしん坊に染まっていくような気がしています。
漫画のロメリア戦記読みました面白かった。