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【0014】 王都ラフレシア

「」は台詞。””は思い・心の中の台詞。『』は名称・擬音・その他

王立アカデミーに入学するべく願書を持って王都ラフレシアに到着したトシゾウ達。

序でに受けた商人クエストも果たせそう。

 一行・馬車6台の車列は北東の方向に伸びる道を走っている。

南レイアードの大きな都市のレグルスを出て二時間半、約50キロの位置で盆地の北東端に来ている。

レグルスから出て間もない頃は他の方向の山脈に比べ低い山脈に見えていたが、いざ近づいてみると山脈に見えていた山は低めの山が前後左右にずれて形の綺麗な三角型の山が乱立していて、それが遠くから見ると山脈に見える。

道は山と山の間の谷の部分を縫う様に道が走っていて、クネクネ山裾に沿いながら高原の盆地から抜け出て北レイアードに入った。

更に1時間ほど進み『アルテルフ』の町に到着した。

 一行はトイレ休憩を取り休憩しているが、トワイライトはトシゾウから貰った種籾の入ったマクラ程の大きさの麻袋6つを交易所付近の酒場に持ち込み顔見知りの酒場の姉ちゃんにシェイクスオードに送る様頼んだ。

此所はレイアード家の情報部門のアジト。情報収集と交易品の価格監視その他が主な仕事。

そのネットワークを通じてお米の種籾を入れた小さめの麻袋をオガミ領で難民問題にテンパッテいるシェイクスオードに送られる。

添付したメモに「田植えしろ」と書いて送った。

用事を済ませたトワイライトは酒場の女将(諜報部のこの町のボス)からバケットのサンドイッチを貰った。

「腹減っているだろう。持って行きな」と女将は身内トワイライトには優しいが、態度はあくまでも酒場の女将が顔見知りの客に対する接し方。

トワイライトも気を良くして「しゃーないなぁ嬉しくなって取って置きを出すぜ、ディンバで作ったオーク肉のベーコンでどうだ。」

と布で包んだブロック肉をどこからとも無く湧いた様に女将の前に置いた。女将の目が宝石の山でも見る様に大きく見開いた。

こんな物貰えると思っていない。海老で鯛を釣った気分だ。

「有り難う、サンドイッチ好物なんだ。コレはお返し皆で楽しんで」

女将は”おー”っと嬉しそうな笑顔。

トワイライトはバケットのサンドイッチを抱えて酒場を後にした。

皆も一寸遅めの『3時のおやつ』だと喜んで食べて今日の到達目標町『アルキエバ』に向けて出発した。

途中夕日で西の空が赤く染まり、あかね雲をぼんやり眺めながら馬車に揺られると景色に癒される気がする。

夕日に照らされている田園風景、少し遠目に見える茜に染まった村も風情がある。

日が暮れて辺りが暗く成りだしたら、馬車の列は一旦止まり魔導ランタンに魔力を注ぎ光を点した。

更に馬車は先を急ぐ。魔導ランタンを使い出して30分。辺りは真っ暗。

辺りの地形等はシルエットだが月明かりで何とか把握出来る。

盗賊・魔物対策で亜里砂とトワイライトが『魔力感知』・『気配感知』で一応は警戒をしている。

普通商隊は1個か2個パーティ(13人前後)の冒険者か傭兵を護衛に雇うのが常識だが、この商隊は雇って居ない。

剛胆に思えるが”急ぎだったので雇っている暇がなかった。”というのが実状。

なので、亜里砂とトワイライトは索敵に神経と魔力を使っている。

そして三時間の後漸くレイアード領の『アルキエバ』に到着した。夜の9時半を回っていた。

 みんな疲れていた。肉体労働をしたわけでもなく、只馬車に座って手綱を握っていただけだが、皆もうヘロヘロに疲れていた。

馬車も乗用車同様で長時間の運転は疲れる。

宿屋兼酒場に入り、先ず軽く食事を取りドッとベットに倒れ込んだ。皆馬車の旅は慣れて無く疲れたのだろう無駄な悪ふざけやお喋りもせずに寝た。

夜が明けて間もなくトシゾウ達は「よく寝た」などと言いながら朝食を取りトイレ・身支度をして宿を出る時にトワイライトが地図を見ながら言うのには

「今日の昼頃は近くに適当な町は無いので昼の弁当を買っていこう。」

だそうで、各自お昼の弁当を買った。

そして朝のまだ早い内にレイアード領の主都『アルキエバ』を後にした。

レイアード領は南北共に治安はかなり良い方で、野盗・盗賊の類は殆ど無い。領主サイドが治安維持・取り締まりに力を入れているからだ。

レイアード領を出ると野盗の類が増えるので領線を出る手前の町で護衛を雇うのが常識なのだが、今5人の受けているクエストは日数制限がある緊急クエスト。

護衛を雇う手間と護衛を運ぶ手段の確保を考えると2日は最低掛かる、そんな暇はない。

トシゾウ、ポルトス、トワイライト、亜里砂の戦力を考えると、護衛無しでも40人程度の野盗ならば何とか成るだろう。

 3時間ほどで北レイアード領から出る。更に其処から10分ほどで今までより道幅の広い4号大街道に出た。

馬車の車列は4号大街道に入って直ぐに王国の騎士団の詰め所兼休憩所があり一旦休憩を取った。

王国には五つの騎士団が有りそれぞれの騎士団が従兵も含めて1万人規模で長大な大街道の警備・治安維持を受け持っている。

此所4号大街道の警備・治安維持は第四騎士団が担っている。

だが、現在王国は南から蛮族の侵攻圧力を受け第四騎士団の人員の七割は南方戦線の助っ人に駆り出されている。

4号大街道の警備に最低限必要な人員つまり残りの三割が居残り頑張ってカバーしている状態である。

だが、最低必要限の人員しか残されていない為に、余裕を持った十分な警備は出来ず大街道の所々の目の届きにくい場所で野盗の被害や魔物の被害が後を絶たない。

そんな中でも大街道沿いにある騎士団の詰め所には騎士団の一個又は二個中隊(一個中隊=135名前後)常駐しているので詰め所の近くは安全なのである。

そして詰め所の隣には馬車の大駐車場があり、休憩施設・トイレ、出店、屋台等が有って宛ら日本の高速道路のパーキングエリアみたいな状態に成っている。

トシゾウ達はその騎士団詰め所の横に有る休憩施設で朝買った弁当を食べて、トイレ休憩の後馬車の隊列を変更して出発する。

 隊列は先頭にトワイライトの馬車だが、助手席に亜里砂が座った。亜里砂の馬車はトワイライトの馬車の後ろに繋がれて付いてきている。その後にTemper、マヤ、トシゾウ、ポルトスの順で続いている。


トワイライトは馬車の手綱を握りながら『魔力感知』の広域・パッシブ(常時継続)モードで使用している。トワイライトの横にいる亜里砂は『気配察知』の広域・パッシブモードで使用していいる。

つまり、先頭のトワイライトと亜里砂が継続的に索敵を行い乍ら進んでいるのである。

騎兵の護衛が付いていない馬車6台の商隊である。野盗に取ってこの車列は見た瞬間に「カモだ」とほくそ笑むに違いない。

野盗達の餌食に成らない為の行動を二人は手慣れた段取りでこなしている。

馬車の車列の先頭で手綱を取るトワイライトの横、助手席の亜里砂が目を瞑ったまま眉を動かして「んん?」と唸る様な反応を見せてから

「前方2時の方向約150メートル感有り。騎馬かな?斥候が・・・3」

と盗賊の斥候が大街道の広い道から横に離れた草原にチョコッと突き出した大岩に潜んでいるのを亜里砂は感知した。

「了解。一発派手なの撃っといて。威嚇で・・・当てない方が良い」とトワイライトは淡々と日常茶飯事な事柄をこなす様に言う。

「あいよ」と亜里砂は返事してから詠唱を始めた。

亜里砂の詠唱が終わり魔法を発動する「エクスプロージョン」

前方2時の方向遙か先の轟音と共に火炎爆裂が起こった。


 亜里砂が魔法を発動する少し前、馬車の車列の前方2時の方向で街道から少し離れた草原小高い丘の上。

丁度大きな街道を見渡せて、何が通っているか見やすい場所。

その丘にポツポツと角張った大岩が突き出でている。丁度公園のジャングルジムぐらいの大きさの大岩。

その一つの岩陰に馬に乗った男が3人潜んでいた。

一人は30代前半で、この3人の中では兄貴分のようで、あとの二人に

「ペケ、どうだ?」と様子を問う。

「はい、どうやら馬車の商隊ですね。120メートルほど手前を道に沿って此方に近づいて来ている。護衛の騎馬はいないようです。」

ペケと呼ばれた若い男は目が良いのだろう眼を細めて遠くの馬車の列を観察し兄貴分に報告する。もう一人の若者は無言で馬車の車列の方を注視している。

「うんんー。6台の馬車に護衛無しか・・」

兄貴分は思い当たる事があるのだろう、判断に迷っている。ソコに自分達のいる場所の側だが、右10メートル位の位置で魔法による爆裂が起こった。

『チュドーン』

爆音・爆煙は派手だが3人に被害はない。少し遅れて草の付いた土と小石がパラパラと降ってくる。

斥候3人の内の兄貴分が判断を下した。

「撤収。街道から更に50メートルほど離れるぞ。ユックリとな」

さきほど『ペケ』と呼ばれた弟分が疑問を口にする。

「え?引くんですか?コヨーテの兄貴。向こうは撃ってきたんですよ」とペケは少し興奮気味。

「ああ、撃ってきたが当っていない。コッチが回避行動を取っていない状態で魔法が外れる事はまず無い。つまり威嚇なんだよ。」

『コヨーテ』と呼ばれた兄貴分は冷静に手下に説明する。手下に斥候の仕事を覚えて貰いたいのだろう面倒臭がらずに説明する。

「威嚇ですか?」

「ああ、『此方には中級以上の魔法使いがいる無謀な襲撃は止めておけ』と暗に言ってきているだ。」

「はあ、魔法使いがいるのでしょうね・・・」と手下の二人はそれがどうゆう事か理解していない。

コヨーテの兄貴は手下の理解していない顔を見て溜め息を一つ|吐≪つ≫きヤレヤレの表情をしながら言う。

「あのな、爆裂魔法を使えるって事はな、俺達の本体があの馬車に襲い掛かるとして、馬車に近づいて馬車を止めるまでに爆裂魔法が数発飛んで来て仲間の半数は黒コゲで死んでるだろう。」

その話しを聞き進むうちに手下の二人は険しい表情に変わっていく。

「そして馬車を止めたとして、魔法使いが一人でいる訳がない、爆裂魔法が使える中級以上の魔法使いがいるって事はな、戦士やハンターなど中級以上の冒険者の強者が何人も仲間にいるって事だ、その戦い慣れた強者達に残った俺達15人で戦って・・まあ、全滅するだろうな。」

ペケともう一人の手下の表情に恐れが表れだした。

コヨーテの兄貴は漸く事の重大さに気付いた手下達をみて口元に笑いを浮かべて

「斥候はな、仕掛けて良い相手と良くない相手を見極めるのも仕事だ。中級以上の魔法使いが居た時点で俺達の手に負えない。わざわざ盗賊団討伐の手柄を献上しに行く必用はない。」

と言いながらコヨーテの兄貴は顎を振って街道から距離を取るぞと手下を促し大街道から離れる方向に馬を進めだし、手下の二人も追従した。

この三人は大街道から約120メートル以上離れて馬車の車列をやり過ごす。

トワイライトと亜里砂の馬車を先頭に車列は盗賊の斥候3人の前を通り過ぎる。

「えらい、あっさり引き下がってくましたのね」と亜里砂は感心する。

「亜里砂を敵に回したら生きて帰れない事を知っているのさ」

トワイライトは横目で亜里砂を見ながら真実を言っている。

「あら、美しくか弱い女性を鬼の様に言うのはどうでしょうか?」としらばくれている。

トワイライトは”何を言っても無駄だよなコイツには”と実感しながら

「要は、バカじゃ斥候は勤まらないって事だ」

とトワイライトは『瞬時に相手の力量の洞察・計算』が出来て自分達の手に負えるか判断出来る優秀な盗賊の斥候だなと高評価していた。

 その後トイレ休憩以外では止まる事無く馬車を走らせて日が沈んで少し経った頃に交易都市『ガーベラ』に着いた。

一行は宿を取り酒場で夕食を食べた。

食べながら出た話題が「ズーと座っていたから腰が痛い」とか「力仕事をしたとか働いた訳ではないが、馬車で手綱を取って座っているだけってのも結構疲れるね」と言った話。

トシゾウ、ポルトス、マヤはまだ馬車の旅になれていない。昨日の晩飯でも同じ話題で話しをしていた。

 トワイライト、Temperの二人は古くから馬車で交易をやっているから、馬車の長旅なんて慣れていて屁でもない。

亜里砂も勇者パーティで馬車での移動が多かったのでまあまあ慣れている。トシゾウやポルトスが「だりーよな」と言っているの見て昔の自分達を思い出しシミジミしている。

食べ終わってポルトス、マヤ、亜里砂、Temperは直ぐに部屋に行って寝たが、トシゾウとトワイライトはチーズとピクルス、ジャーキーを肴にエールをユックリ呑んでいる。

呑みながら周囲のテーブルの雑談に耳をそばだてていた。

トワイライトは体調に余裕があれば良く遣るが、トシゾウも新撰組時代に探索等の情報収集で町人に扮して志士の集う酒場で呑んでいた事も有りさり気なくそれが出来た。

二人は黙々と少しずつ呑んでいて、呑んでいる様に見せながら実は殆ど呑んでいなく、呑んで話しをしている風な仕草をするが話しはほぼ無く声も発していない。

時折近くのテーブルの客と多少の雑談はしたが是と言った目新しい情報は無かった。

1時間半で酒場を出るがトシゾウとトワイライトが二人で交わした会話は「やっぱり、エールは冷やした方が旨いな。」と「だろ」の二言だけであった。

 夜が明けてトシゾウ、ポルトス、マヤは『朝の整備体操』を宿屋の裏庭で始めた。コレをした方が朝から体の動き、キレが良い感じがする。

トシゾウやポルトスは体の動きが良くなるような事を言っているが、亜里砂には違いが分からない。只仲間がやっているから自分もやる。亜里砂にはそれで十分らしい。

最近馬車の運転ばかりで座ったままが多く腰が凝る事が増えたというのも理由の一つ。

出発前のトワイライトの説明では今日の昼過ぎに王都に到着する予定。

「王都は間近ですが、道中気を付けていきましょう」と言って出発した。

もう王都に近く治安もマシなので野盗に会う事もなく、一行は昼の13時を少し回った辺りで王都に着いた。

「じゃあまたね」とTemperの馬車は車列から離脱していった。

そのタイミングでトシゾウも一旦パーティを解散した。

トシゾウ達はトワイライトの誘導で王都の商交区の駐車場に入り馬車を駐めた。

ポルトスもマヤも「お腹空いたー」と口にしながら降りてきた。

トシゾウも「先ずは腹ごしらえしないか?」と空腹の様子。

トシゾウと一緒に降りてきたそらちゃんも「わん」と飯の催促。

そこで亜里砂が「じゃあお昼の前にパーティ組んでから行きませんこと?。」と喋り出す前からパーティ編成を始めていた。

トシゾウの視野の右上に『亜里砂からパーティに誘われました。パーティに参加しますか?』と表示が有り『はい』を選択。

『亜里砂のパーティに参加しました。』と告知が出る。同じ様にしてポルトス、マヤ、トワイライトもパーティに参加した。

パーティ編成が終わり取り敢えず商交区にある食堂兼酒場に急いだ。

入った食堂兼酒場は窓も多く中も明るい。昼を過ぎているのでチラホラテーブルや席は空いている。お昼の忙しさは一段落した様だ。

トシゾウ、ポルトス、マヤ、トワイライト、亜里砂の5人は丸テーブルに座り『日替わりセット』を5人分頼んだ。

 『日替わりセット』は売り切れが少なく頼んだ後出て来るまで待つ時間が他のメニューに比べ大幅に短いので、時間に追われる商人達の定番メニューなのだ。

 勿論、トワイライトが最初に頼み、何が美味しいか知らないトシゾウ達が「俺もそれで」と言う台詞が続いた。

 案の定5分少々で料理が出てきた。

先ずカボチャのスープ、分厚くスライスしたライ麦パン3個。赤ワイルドボアのローストンカツ大とキャベツの千切り。

と品数は少ないがボリュームはそこそこあり、赤ワイルドボアのローストンカツ大は脂が乗っていてソースのデミグラスソースが良く合い大変美味しい。5人はお喋りも殆ど無く御馳走を平らげた。空腹は満たされた。

 食堂を後にした5人は未だ昼飯の余韻で口数が少ないが、

「この世界はどの町へ行っても違がった料理で旨い物が食える。良い世界だなぁ」

とトシゾウはじょうきげんで同意を求める様に言葉の後半ポルトスに向かって喋る。

「全くだ。コッチ(異世界)の商人って食い道楽の食べ歩きしながら仕事になるのか?スゲー魅力的な仕事だな(笑)」

とポルトスも上機嫌。これが不味い飯ばかり食って回るのであれば話しの内容も変わってくるのだろうが、トワイライトは美味い店ばかり知っていて連れて行く。

今のところトシゾウ達と訪れた町ではその町の美味い店をチョイスしている。美味い物ばかり食えるのも当然である。

 余談だが、トワイライトはレイアード家の諜報部の隊長をやっているが、その諜報部が相場表、通称『花経』を定期的に刊行している。勿論、レイアード家の名は隠し民間の一般的な商会が発行元という事に成っている。

フローレンスランツ王国内の主要な町の交易品の|大凡≪おおよそ≫の価格を表にしている。

そのほか、特殊要因やトレンドがある品種について文書での説明も付けている。簡単な経済新聞的な内容に成っている。

レイアード家の諜報部が各町に張り巡らせた情報網から情報を得ている。顧客・購読者は商人や交易者が中心だが一部貴族にも読まれている。

情報誌としては高目の値段だがよく売れている。

もう一つの収入の柱が『名店録』と題した食事の美味い店の情報を集めた本、言うなる『グルメ本』である。

内容は王国内の町毎に食べに行って損はない店とその美味しい料理を紹介している。あと紹介した料理の説明と挿絵並びに食レポも掲載している。

7、8年前から王国内のグルメ人と交易商人にとっての必須アイテムに成っている。

この『名店録』によって交易商人にデブが増えたという噂もある。

それを出版した組織の長たるトワイライトが町々での美味い店を知らない訳がない。

結果、トシゾウ、ポルトス、マヤはトワイライトの食い道楽のお陰で知らず知らずのうちに食い道楽の道を歩みつつある事を本人は気付いていない。

トワイライトは影で「ウシッシッシシ」とほくそ笑んでいるカモ知れない。


腹も満たされて落ち着いたところで王都の交易所に5人は到着した。

トシゾウが交易所の店先に所員が2人いて、その二人に近づいて行きクエストの紙を取り出し

「クエストで食料を運んできた。納品したいんだが」と先ずは声を掛ける。

「クエスト?・・・」と右の所員は聞き返す。

左の所員が心当たりがある顔で話しに割ってはいる。

「あ、さっき女性の交易者が納品に来てたが、同じかな?クエストの紙を見せて。」とクエストの紙を見せてくれと右手を出す。

トシゾウはクエストが書かれている紙を渡す。

交易所の所員二人は紙を見ながら何ヶ所かチェックして

「あ、これこれ。さっきの女性と同じだ。」と所員二人は笑顔を見せる。営業スマイルだ。

左側の所員は自分達の後ろの交易所の建物の壁に地図が貼ってあって、その地図を指さして

「納品の品は馬車に積んであるんだろう。ソコの地図見て駐車場から第四倉庫街へ行ってくれ、そして、三角の印が付いている場所に所員が居るからそいつにクエストの紙を見せてから納品作業を終えてくれ、その後また指示が有るはずだ。」

と壁に貼られた地図の第四倉庫街の一角で三角の印を指さしていた。

「分かった。」とトシゾウは答え、地図の前まで行き地図をマジマジと見る。ポルトス達他の4人もトシゾウに続いて地図の前まで行く。

トシゾウが地図を見入り記憶して地図の前を離れ駐車場に向かう。ポルトス達もゾロゾロとその後に続く。

駐車場に戻りそれぞれ自分の馬車に乗り、トシゾウの馬車に続いて第四倉庫街に向かった。

第四倉庫街の印の付いていた場所に行くと倉庫の前に人が14名ほどベンチに座って待機していた。

近くまで馬車で行き馬車から降りて5人でゾロゾロその14人に近づいた。

14人の中に一人だけ交易所の制服を着ている者がいたので、その人に声を掛ける。

「交易所の所員に言われて納品に来たのだが」

「ああ、そうかクエストの紙を預かろう。紙を渡したら倉庫の搬入口の前に馬車を着けてくれ。こいつらが荷を降ろす」

トシゾウはクエストの紙を渡すと馬車に乗り込み馬車を倉庫の搬入口に着ける。

交易所の制服を着ていない13人の作業員達が荷降ろしの作業に取りかかった。

作業員は手慣れたモノで誰も指示を出さなくても荷を馬車から降ろして渡していく段取り・人の列がスッと出来上がり、テキパキとテンポ良く荷を降ろしていき5分そこそこで作業を終えてしまう。

そして作業員の一人が「主任!数量有りました。OKです。」と大きな声で報告する。

それを待っていた制服を着た主任と呼ばれた一人はクエストの紙に『ポン』と完了の印を押した。そして身近な机の端に置いて「よし、次納品いってくれ」と声を掛ける。

トシゾウの馬車が倉庫の搬入口から移動して退き、次にポルトスが馬車を搬入口横に着けた。

直ぐにまた作業員が荷降ろしを開始した。

同じ手順でポルトスに続いて、マヤ、亜里砂、トワイライトの順で納品を終えた。

「納品完了です。お疲れ様でした。この後『商人ギルド』に行って報酬を受け取って下さい。」

最後に制服を着た主任からトシゾウがクエストの紙を纏めて受け取り「ありがとよ」と言ってその場を仲間と一緒に去ろうとする。

主任の方も「此方こそ有り難う御座います。今王都では食料が品薄に成っていますので大歓迎です。」

と言って営業スマイルで見送った。

トシゾウ達は馬車を駐車場に再び止めて商交区に戻ってきた。さっき訪れた交易所の横に『商人ギルド』が有り商人ギルドに入る。

ギルド職員の待つカウンターに行きクエストの用紙を提出して『完了報告』を行った。

報酬を受け取り経験値が入った。トシゾウ、ポルトス、マヤ、亜里砂は商人レベルが1から3に上がった。レベル1だから経験値報酬の多い緊急クエストの経験値でレベル3迄上がったのだ。

トワイライトは既に商人レベルが高いのでレベル上昇には成らなかった。

クエスト終了でギルドから出て、酒場に移動する。

トシゾウもポルトスもマヤも”商人クエストはこんな感じか・・”と分かった様な気がした。

酒場のテーブルに着いてオレンジジュースを注文してトワイライトが話しを切り出す。

『パーティの財布』の管理の事で提案してきた。クエストの報酬を4分の1は個人の財布に入れて、残りはパーティの財布に入れて管理するって事だ。

基本的にトシゾウ、ポルトス、マヤの3人で動く事が多く長い間同じ者同士でパーティ組む場合、この世界では共同の財布を作る事が多い。

食事、宿屋、ポーション等の消耗品や武具の購入、商人クエスト用の交易品の買い入れなんかはパーティの財布で賄う。

朝昼晩飯はみんな食べるし、宿屋にも泊まる、ポーションも使う。武器や防具もな。そういったモノの支払いはパーティの財布でする方が管理が楽で良い。

特に防具なんかはパーティの財布で買わないと不公平が出る。

例えば亜里砂の魔法使い系の防具は布系で安価だが、ポルトスの重戦士や、大盾は金属系鎧で布系や皮系の鎧に比べて数倍以上の値段がする。

武器防具の購入を個人負担にしているとレベルが上がって装備も新調していくと、あっと言う間にポルトスは貧困生活に突入し酒を呑み行けなくなる。比べて布系の防具等が安価な亜里砂はリッチな生活を維持出来る。

呑む事が至上の喜びのキャラだと呑む為に装備にお金を掛けなくなってパーティとしての戦力も伸びなくなる事が恐い。

装備・武器はパーティ持ちにしても、その内装備の更新にお金が足らなくなる。だから時折、又は移動の時に交易を混ぜておいて資金を稼ぐ方が良い。

パーティの財布を作っても報酬の4分の1は個人の懐に入るから、個人の趣味や一人で飲みに行きたい時は個人の懐から出せば好きに呑みに行ける。

呑み出して益々酒が旨くなって来た時に「次にあの装備が欲しいから」とか『お金の事気にして呑むのを途中で止める』のはしみったれて嫌だろうとトワイライトが言うとその部分にポルトスが強く頷いていた。

トシゾウも「メシの度、宿泊の度にそれぞれがお金を出し合うのはめんどくさいな。」と利点を確認し結果として『パーティ財布』を採用する事になった。

そして、『パーティ財布』は担当はマヤになった。計算が得な方で確りしているからだ、本人も「べつに良いよ」と嫌では無い感じだったので即決した。

担当が決まったところで、今回のクエスト報酬から4分の3をマヤに渡す事になった。

勿論、トワイライトも亜里砂も報酬から4分の3渡した。

マヤは「パーティのお金だけど、お金貰うの嬉しいW」と笑顔でお金を集めていた。

集めたお金はマヤの『アイテムボックス』内で保管される。アイテムボックスは個人に付随なので下手な金庫より安全なのだ。

あと、クエストの副賞として『初級商人転職書』が手に入ったが各自で保管する事になる。

必要に応じて使う事が多いので溜め込むのがお勧めだ。

商人クエストをこなしたが、日は高く夕方まで未だ時間があったので駐車場に戻り『行政区』の駐車場まで馬車で移動しソコから徒歩で横の区の『文化区』に入り『王立アカデミー』の門を潜った。

亜里砂は一応『お尋ね者』(偽装は効いているが念の為)なので文化区の公園でそらちゃんと散歩しながら待って貰った。

トワイライトは従者の振りをして、トシゾウ、ポルトス、マヤの3人に付いて行き入学願書を提出した。

普通にスンナリと願書の提出は終わって諸注意を受けた。試験日迄二十日近くある。

予定していた時間(何かあった時の為3時間位時間を取っていた)よりも全然短く15分で手続きは終わった。呆気なかった。

亜里砂の居る公園まで戻り、亜里砂やそらちゃんと合流した。

今日のやるべき事は終わったので、あと自由行動になった。夜食は各自で済まし宿泊は『冒険者ギルド』横の宿屋にした。

亜里砂が「折角王都に来たんだから王都見物して行こう」と言い出した。本人は一応刑を執行されたはずの元死刑囚で生存を知られるとマズイはずなのに緊張感がない。

トワイライトは野暮用があると言って別行動。トシゾウはトワイライトの野暮用が面白そうと言って付いて行く事にした。

結果、亜里砂とマヤ、ポルトスが王都見物に出発した。ポルトスが付いているので心配は要らないだろう。

亜里砂はマヤのお陰で美味い物を買い食いして回ったり、ウインドショッピングを楽しめそうなのでウキウキしている。

一方トワイライトの方は裏道を通り貧民街の方向に向かって歩いていく。日の当たらない路地裏の細い道に入って行く。

少し危険な香がする。トシゾウにとっては懐かしい感じでもある。

其れも其のはずトシゾウは京の都で市中を騒がしていた攘夷派の人斬り達を追って似た様な裏道を幾度となく行き来していた。蛇の道は蛇と言ったところか。

初めて通る道なのだが、懐かしさを感じているトシゾウ、入り組んだ細い道をトワイライトに付いて行くのだが、見られている気配はするが尾行はない、前から人も来ない。すれ違わない。

裏道は細く、夕暮れには未だ少し時間があるのだが薄暗い。右に折れ左に曲がり進んでいくうちに此所は何処でどっちの方向に向かっているか分からなくなった。

トシゾウは「この男、よく迷わずに行けるよな」と感心する。感心しながらも時々人の気配を感じる。

改めてスキル『気配察知』で周囲の気配を探るとまあまあ居る筈なのに、小道の前後見える範囲に人影はない。

この首筋にピリピリする感じに覚えがある。以前に京の都で志士のアジトに踏み込んだ事が有る、その時の踏み込む前の空気と同じだ。つまり誰かに様子を覗われ、警戒されているのだ。

不意にトワイライトが止まる。裏道は未だ続いている。左手は建物の壁の根元に木箱が3個ほど置いてある。

右手も建物の裏の壁に戸が付いている。

トワイライトは右手の建物の裏口の扉の前に止まり、扉に軽くテンポ良くノックする。『コンコンコン・・・コン』、そして「道雪だ」と喋る。

トシゾウは”また異名が出てきた。まるで公儀(幕府)の隠密(諜報員)だな”と呆れる。

少し間が空いてから戸の向こうから声がする「月は出ているか?」普通の男の声で淡々と喋る。

トワイライトは左手のメモ帳を何枚かめくって「麦の穂、麦の穂束ねてポイ」と答える。

全然脈絡のない突拍子のない返事、合い言葉だろう。

また少し間が空いて戸が開く。

トワイライトはトシゾウに目で合図してから中に入る。トシゾウもトワイライトに続いて中に入る。

中は武器屋の内装に似ているが、店内は狭い。幅三メートル半ってところだ。壁にはダガーの類や暗器が幾つも飾られている。

壁に飾られている武器以外は店内に商品の陳列はなく、奥のカウンター迄に小さめの丸テーブルと椅子、四角い木製の物資コンテナが左右の壁際に適当に置いてある。

奥のカウンターには引き締まった体でスタイルの良いバーテンダーの格好の40代位の店主らしき人物が居る。

そのナイスダンディと言える店主らしき人物が綺麗なグラスを布で拭きながら声を掛ける

「そろそろ来る頃だとは思っていたが、お連れが居ると珍しいな道雪。」

発音もぎこちなく動きに優雅さが無い。

「珍しいな、マスターが動揺するなんて」とトワイライトは嬉しそうに指摘する。

実はマスターのコップを拭く手か微妙に震えている。そしてさっきからグラスの縁の同じ部分を拭き布で拭いている。

だが顔はニコやかなままマスターと呼ばれた40代の人物は受け答えをする

「道雪、お前が連れて来るヤツだから大丈夫と頭で分かっていてもなぁ、体が勝手に反応するんだよ『コイツはヤバイ逃げろ』ってな」

「流石、マスター衰えちゃいねーな。」と嬉しそうなトワイライト。

マスターは右の頬辺りがピクッと『イラッ』と来た時の反応を示して

「だから、無害なら『気配隠蔽』を使う様に言ってくれ」と少し声を荒げる。

トワイライトは苦笑いで”悪戯も此所までか”と思いつつトシゾウに

「トシさん、ステータス画面のスキル項で『パッシブスキル』の欄の『気配隠蔽』をONにしてみて」

「ん?」とトシゾウはステータスを開いて、スキル欄のパッシブスキルの『気配隠蔽』のスイッチをONにした。

そして少しの間、嫌な静寂が流れた。

10秒ぐらいしてマスターが「何も変わんねぇんだが・・本当にスイッチ入れてる?背中がゾクゾクしてオカンが走って気色悪いままなんだが」と困った時の顔をしている。

トワイライトは「背筋がゾクゾクする度に母親オカンが走っとったら、ズーッと走り回っとらんならん、オカン(母親)忙しゅうてカナンやろ」

「そうやねん、オカン(母親)が走り回ってヘロヘロなって『晩飯作ってられへん!抜きや!』って、どないして呉れんねん・・・って、おい違うやろ!」と左手を払う様にトワイライトの胸を軽く叩き、突っ込みを入れる。

トワイライトはネタの続きをボケで振る「まさか、悪棺おかんやったかー。」

「棺桶が走るかいボケ!、もうええわ。」とマスターはプレッシャーで動くのがやっとの中で落ちまで遣って退けた。

室内の人の気配の無い物陰から数カ所から『クスクス』と笑いを堪える声が漏れる。

トシゾウも即席漫才を楽しみ顔に少し笑顔が漏れる。微笑するとこの男やはり男前だ。

トワイライトは微笑のトシゾウの顔を見ながら「スイッチ入れたよね?」と確認する。

トシゾウは『え?』って我に返った顔で今一度ステータス画面のパッシブスキル『気配隠蔽』を見直した。

「ちゃんとスイッチ入っているぞ!」と未だ真顔に戻りきっていない。

トワイライトとマスターは眉間にしわを寄せて目が横線で首を前に突き出して「えー?」と『何で?』って顔をする。この二人笑いの素人にしては良いコンビだ。

トワイライトは腕を組みながら左斜め上の虚空を睨みながら「って事は・・・」

マスターはトワイライトの右側にいて腕を組みながら右斜め上の虚空を睨み「アレしかないよな・・」

二人同時に「『気配隠蔽』のレベルいくつ?」とトシゾウに聞く。

トシゾウは「ん?・・・えっとな『気配隠蔽』は2+1・・・3だ。」と漸く真顔に戻って言う。

マスターの顔が『ガーン』と衝撃を受けた顔で言葉を失って開いた口が塞がらない。

トワイライトの顔も『ガーン』とマスターと同じ表情をしている。

マスターは何時までもトワイライトと漫才している訳にも行かないので普通に喋り出す

「あああ、『気配隠蔽』を貫通してしまってんだ。」と理由が判明した。

「貫通?」とトシゾウは首を捻り聞き返す。

「そそ、其処の兄ちゃんの『気配隠蔽』はレベル3なんだろう、俺の『気配察知』はレベル6だ『気配察知』の方が高いので、『気配隠蔽』スキルの効果を突破して『気配察知』が効果を発揮している」

マスターは解り易く説明してくれている。

トワイライトも渋い顔で「トシさんにしては珍しくスキル低いね。役に立ってないや」

トシゾウは意識してなかったが、新撰組の時も気配を消しながら尾行とか、探索等の仕事は若手か平の局員が行うのでこの手の技量は育っていなかった。

どちらかと言うと『新撰組の土方歳三が出張って来た』と聞くと多くの人切りや志士は恐れおののき逃げ隠れした。

その存在は威圧、恐れ、プレッシャー等恐怖の対象であり、そう言ったプレッシャーで場を制圧し相手を萎縮せて存在感を示していた。

マスター達の『気配察知』がそのトシゾウの本質を察知して体内で本能が大騒ぎをしているのである。

シレッとトワイライトが「じゃあ、『気配察知』を切った(無効にする)ら?」と言う。

「正気か?アサシンが『気配察知』を切るって自殺行為だぞ。」とマスターはマジで言っているのか?っといった顔をする。

実はマスターは戦闘職の『アサシン』でアサシンが『気配察知』を無効にするって事は、命を狙われていてもその事に気付かず、ライバルや敵対勢力に暗殺されるのである。

ただ、トワイライトの場合戦闘レベルが高いので一寸やそっとの暗殺ではダメージは通っても、即死はなく、仮に暗殺者が近寄ってもトシゾウの威圧範囲内なので、普通のアサシンなら萎縮して戦慄を覚え真面に行動出来なくなる。

その上トシゾウが直ぐ気付くのでトシゾウ周辺は安全地帯。

トワイライトの説明を聞きマスターも渋々『気配察知』を無効にした。

マスターは一息着き「ああ、何年かぶりに肝を冷やした。道雪お前とんでもないヤツ連れてきたなぁ・・・、で何の用だ?」

道雪ことトワイライトは「タイムリーな話しだが、『気配隠蔽』のブーストアイテムを貰いに来た」

と言って苦笑いをする。

マスターも右手の平で両目を被い斜め上の天井を仰ぎながら口元は苦笑いで

「はぁああ」と大きな溜め息を着く。そして一呼吸置いて

「持っといた方が良いな。」

マスターはヤレヤレといった顔で返事をしてカウンター中の戸棚を開けてアイテムを探してカウンターの上に置いた。リストバンドだった。

「リストバンドB型で機能は『気配隠蔽』+3だ、今うちに有るモノではコレが一番だ」

このリストバンドは量産型で此所に未だ在庫は7つ程残っている。其れもそのはず此所は『暗殺者ギルド』の内の一つ。

『暗殺者ギルド』は『冒険者ギルド』と違って公には認可されてない組織で、一つの町に何ヶ所か拠点がありそれぞれにマスター(店長)がいて、方針や活動もマスター次第でそれぞれで違う。

だが、共通している事はそれぞれの『暗殺者ギルド』に『アサシン』が所属していてマスターが個々の『アサシン』に合った依頼を紹介している。

此所の『暗殺者ギルド』にも出入りしている人数は約20人弱、新人や初心者もいる。その者達の為に 『気配隠蔽』+3のリストバンドの様なブーストアイテムを販売又は貸し出している。

『気配隠蔽』のブーストアイテムが有れば初心者の生存率が格段に上がる統計結果が出ている。そのリストバンドをトワイライトは手に取り「これ、俺の功績点で貰えないか?」

マスターは「いけるぞ。ただ、半分で良い。功績点を残したまま命を落としたヤツ等のポイントが相当溜まっている。其処から半分充当しよう。」

と言ってマスターはカウンターにある魔道具に付いているボタンを押し起動させる。

トワイライトは懐から『暗殺者ギルド』の会員カードの様な物を取り出して魔道具にかざし、功績点を消費しリストバンドを得た。

そしてトシゾウにB型『気配隠蔽』+3のリストバンドを渡して、トシゾウは左手の義手部分の直ぐ下に装着した。

部屋の中に充満していた張り詰めていた空気が離散していく。

 部屋の中の所々の人の気配の無い物陰、机の下やコンテナの影、柱の影など数カ所で「はぁ」と安堵の吐息がして人が3人姿を現した。

姿を現したというよりも、スキルの『気配隠蔽』を張ったまま物陰に隠れた状態で金縛りにあい動けずに脂汗と冷や汗を掻き心の中で”まいったするから、勘弁してー”と念じ声を出せずにいた。

まあ、サウナに篭もり限界の状態で我慢比べを続けているほど苦しい状態だった。サウナ上がりのキンキンに冷えたビールの用意が無いので何も楽しくはない。

 この者達は当暗殺者ギルドの主要メンバーで、トシゾウとトワイライトがまだ細い道の向こうから近づいてくる段階から感知していた。

道雪トワイライトはよく『気配隠蔽』を張ってない事が多く一定距離以内に近づいたら「あ、道雪さんだ」と分かって何時も通りで問題はなかった。

問題は一緒にいる人物だ。と嫌な胸騒ぎがしていた。

『気配察知』スキルの中等レベル以上になると特質が追加され、その内の一つに相手の性質も大まかにだが感じ取る事が出来る。

その特質でトシゾウから『剣聖』や『対暗殺者のスペシャリスト』、『京の都の治安維持の担い手』といった性質を嗅ぎ付け戦慄しだした頃には思考も行動も鈍くなり間を置かず金縛りで動けなくなっていた。

トシゾウは『キリングオーラ』を持っており近くで暗殺者を感知すると反射的に発動していた。

 『キリングオーラ』とは武人が持つプレッシャー・オーラで同格以下の相手や一般人を萎縮させ動けなくする。例えて言うなら蛇に睨まれたカエル。

以前オガミ領のセイロンの町の『冒険者ギルド』で誤解による余計な争いを避ける為に使用した経緯はある(6話)。

今回はトシゾウの『気配隠蔽』を突破したら『キリングオーラ』の罠効果を喰らうハメになった者が居たって事だ。実はこのギルドの戸を潜る前に細い裏道の道中で金縛りに遭った者が何人かいた。

 金縛りが解けたが未だ歩くのがやっとの3人とトシゾウ、トワイライトがマスターの居るカウンターの処に集まった。まず最初に口を開いたのはマスターだった。

「道雪、とんでもない人を連れて来たなあ」とフレンドリーな口調。

マスターとしては仲間の道雪が連れてきたので一応友好人物として認識している。また、友好的に接して仲間の雰囲気を作っとかないと”こんな奴敵に回したくねぇ!”というのが本音。

「俺は此所『暗殺者ギルド』のギルドマスターをやっている通称『ハッチョウボリ』だ。」と言って右手を出して握手を求める。

トシゾウは此方の世界は握手が挨拶だと漸く慣れてきたので自然と右手が出て握手した。

「歳三です。」

マスターの方は根掘り葉掘り話を聞きたい、トシゾウの方は空気を読まないで静寂の間が流れる。トワイライトが我慢出来なくなり態とらしく紹介を始める。

「俺はトシさんと呼んでいる。元々東の果ての国で新撰組という組織のナンバー2をやっていた。剣の強さも剣豪として名が知れ渡る程の腕前。

『京の都』という町の治安維持と暗殺者の摘発・捕縛と一掃、反乱の未然鎮圧など、力を発揮していて実績も凄いモノだ。言ってみれば俺達のテンテキをやってたお人だ。」

と淡々とトワイライトは説明する。

其れを聞いてマスターは「んんん」と”それ位はあるだろうなぁ”と言わんばかりに低く唸る。

他の3人も「おおお」と”それ位はあるだろうな”と予想していた。

トシゾウはトワイライトの耳元で

「なあ、左腕の血管に針を刺して、ポッタン、ポッタンって・・・」

と言い終わる前にトワイライトは左手の肘をL字に曲げて手の甲で軽くトシゾウの胸をハタキ

「ちゃう、其れ点滴(笑)」と意表を突かれ、危うく突っ込みが間に合わなくなる寸前だった。

トワイライトの顔は半笑いで口元が緩み”いま、ココでボケる?”と言いたそうな顔。

余りにもボケ老人のボケ・酔っぱらいのオヤジギャグレベルだったので『お笑い』に経験値は入らなかった。

マスターは「点滴?」と点滴を知らない。魔法の発達したこの世界では未だ医術の発達は遅く点滴はそう知られてはいない。

トワイライトは苦笑いで「天敵ね」と言い直す。

「今日は頼みがあって来た、先ずさっきのリストバンドだったのだがコレはOk、其れから『短剣術』とその他スキルの他に良いダガーを2、3本」

とトワイライトはメモを取り出して見ながら言って、今手に入った『気配隠蔽』プラスアイテムの欄にチェックを入れた。

漏れが無いように事前に書き出して、終わったらチェックを入れて消し込んでいる。

マスターの表情が無表情に近い素に戻り確認する

「『短剣術』他という事は、冒険者にはなっているって事でいいか?」

トシゾウはコクと頷き「ああ、冒険者レベルは4だけどなスキルポイントは十分残っているぞ」

マスター及びギルドの常連3人は目を剥いて「レベル4?」とたまげた。

「レベル4であんな威圧ができるんかー?あり得ん・・」と半信半疑でギルドの常連の3人も「うんうん」とマスターと同意と首を縦に振る。

「おっと、それ以上首を突っ込むと特殊事情があってね、王城から追われる嵌めになる可能性が有る。これ以上は知らない方が身の為だ。」

とトワイライトはマスターの好奇心に釘を刺した。

当のトシゾウはトワイライトの説明中も口元に薄笑みを残し涼しい顔で話を聞いている。

その様子を見ているマスターは”あの年(トシゾウの見た目は18歳位に若返っている)で堂々とした肝の据わりよう、そしてあの実績に剣の腕前・・・仲間に欲しい。せめて友好的立場だけでも”と気に入った様だ。

「解った。それ以上は立ち入らねぇ。しかしな兄さんのその肝の据わりようは気に入った。困った時は何でも言ってくれ、力になるぜ。」

とマスターは常連の3人が驚くほど気前が良い。

「マスター、そう来なくっちゃ。差し当たっては『短剣術』だな。」とトワイライトは本題に入る。

「剣豪で剣聖レベルなら剣一本有れば十分事足りるだろう、今更『短剣術』なんて要るのか?」

とマスターは正論として疑問を口にする。

「俺もそう思うが」とトシゾウも同じ意見だ。

トワイライトは左手の人差し指を立てて手首で振りながら”説明しよう”の仕草。

「確かにその通りなんだが、剣術系の中級以上の技は踏み込みを多用するんだ。そして見ての通りトシさんは右足が義足。踏み込みを行う技の後はどうしても体勢が崩れる。」

と順を追ってトワイライトは丁寧に説明する。トシゾウにも聞かせて理解して貰う為でもある。

トワイライトの話しが切れた処でマスターが間の手を

「体勢が崩れると無防備に成るし、体勢が崩れた状態で出せる剣技は知らないな。」と入れる。

「そそ、身近に仲間が居無いと危険なんだ。それに比べてダガーの攻撃は下半身に関係なく繰り出せる。体勢が崩れていても、宙に浮いていても出せる技がある。『短剣術』で特にダガーは手数が勝負だからな、一々踏み込まない。体勢に関係なく片手一本で攻撃なり技なり繰り出せる。」

トワイライトは一旦言葉を切り、ニヤリとする。その意図は”片手と片足が義手義足のトシさんにとっては、ロングソードとかよりハンデやペナルティが減るはず。”

マスターも根は良い人なのだろう、知らない人には教えてあげたいみたいで口を挟む。

「剣を一度振る間にダガーだと2度、手の早いヤツで3度ぐらい攻撃を出せる。その分ロングソードに比べて一撃の攻撃力やダメージ量は落ちる、だが反応も良く身を守るには良い。そして『剣術』のレベルが高ければ動きや技の一部が『短剣術』に流用出来る。」

トシゾウはその言葉尻に反応して疑問を投げかける

「『剣術』のレベルが流用出来るってどの程度だろうか?」

「そうだな、例えば『剣術』レベル8だった場合『短剣術』レベル5から6位になるかな、他に『剣術』がレベル8でも『槍術』や『棍棒術』に流用してもレベル4だったりして変換率は武器に因ってマチマチなんだ。しかし、『剣術』と『短剣術』は相性が良い。」

トシゾウは”複雑だな”と思いつつも次の疑問を言う

「へー、相性が良いなら『剣術』が有れば『短剣術』は要らないのでは?」

マスターは人差し指を立てて手を左右に振り『チッチッチッー』と予想通りの質問に機嫌が良い。

「ロスが少なく流用出来ても、所詮流用は流用なんだ。決定的欠点として、技を覚えないし、使えない。スキルの習熟も溜まらないし、オプションその他の効果も使えない。スキルを持っていないからね、流用だと只単にその武器が上手く使える、それだけなんだ。ダメージも増えない」

トシゾウはナルホドと言う顔で「おおー。」と感嘆しつつ理解した。

トワイライトはマスターの話し上手に阻まれ話しに参加出来ないでモジモジしている。

「『短剣術』には色々と使える技が多いから、有った方が戦闘を楽しめる。」

マスターの「楽しめる」と聞いてトシゾウは”ポイントも残っているし”と思い取る事にした。

トシゾウは冒険者スキルポイントを2消費し『短剣術』を取った。

トシゾウは取ったスキルを試したくてトワイライトに手合わせを頼んだ。

暗殺者ギルドの横の空いている部屋で12畳位の部屋がありその部屋を使い、トワイライトはロングソードで、トシゾウはダガーで寸止めで手合わせを始めた。

マスターをはじめギルドの常連3人も壁際で邪魔にならないように見物している。

『ギーン』『チュン』『ガッキーン』7撃切り結んだ後、トワイライトの剣は受け流され首筋にトシゾウのダガーが寸止めで止まっている。

一拍の間双方停止した後、また剣戟が金属音と共に繰り広げられる。

その後トワイライトの胸元にトシゾウのダガーが寸止めで止まっている。

決まってトシゾウの勝ちだが似たような一連の動きが後7回続いて終わった。

見ていたマスターが「おいおい・・」と何度も漏らしていた。

王都にある『暗殺者ギルド』の関係者の中では、トワイライトの『剣術』は上位の方で、王国の騎士団長達には及ばないにしても、熟練の騎士達と良い勝負をする剣術の腕前である。

ちなみに『剣術』のレベルはシェイクスオードの方が1つ上でシェイクスオードの剣術レベルは騎士団長のお歴々と同じ位のレベルで、シェイクスオードは若くして強いのである。

シェイクスオードは『剣術』レベル7で、トワイライトは元々『短剣術』がメインだった。『短剣術』レベル7で『剣術』も持っていてレベル6まで伸ばした。器用貧乏なヤツだ。

その道雪トワイライトがトシゾウの『剣術』を流用した『短剣術』に勝てない。余裕すら感じる。

もし仮にトシゾウに剣を持たせて『剣術』を使わせたら、流用を加味しても騎士団長レベルの剣の使い手さえもトシゾウには適わないと推測出来る。王国内にトシゾウに勝てるヤツは居無いかも知れない。

マスターは目の前の事実に再び背筋が寒くなり、『気配察知』で感じた悪寒の原因はコレだなと確信した。

マスターは冒険者レベル一桁の相手に全敗した道雪トワイライトが凹んでいるのではないかと予想した、嫉妬もするだろうと。

「やっぱりトシさんには適わねぇな。」とサッパリと当然な顔をした後にとても嬉しそうな笑顔に変わる。少し息も弾んでいる。

”あの土方歳三だぞ、転生前の俺が会いたくても会えない人と手合わせ出来た。俺を転生させて呉れてサンキュー女神様”

「で、どうでした?トシさん」

「ああ、悪く無い。俺は手足にハンデを負っている分、コッチの方が使い勝手が良いかもな。」

「『短剣術』は『暗殺者ギルド』と盗賊系の職業でしか取れないから、今日来てくれて取れたのは良かった。あとはダガーを2本と投げ用ナイフを10本ほど買って帰ろう」

トシゾウは「扱いやすいヤツでお勧めを」と最初で何が良いのか解らないから玄人のお薦めのダガーと投げ用ナイフを買った。

トワイライトの用事は済んだが、マスターの方から「道雪トワイライトの協力が必要な依頼が3件も溜まっている」と言われたが「今は時間が作れない、一ヶ月後なら手伝える」と待ってくれと頼んだ。

取り敢えずトシゾウの方はこの暗殺者ギルドの人達とは良好な関係を築けそうな感じだった。マスターや常連達がフレンドリーに礼儀正しく接したからである。

『トシゾウに友好的に接して損はない、間違っても絶対に敵に回さない』との思惑がある。

道雪ことトワイライトがマスターと情報交換を終えて『暗殺者ギルド』を出た。

ギルドから出る直前にマスターからトワイライトに耳打ちする。

「おい、『突発性クエスト』が待機状態に成っているぞ、ギルド出て少し歩くと発生するやつだ。」

「え?突発性って・・・あ、アレか」とトワイライトはピンと来た。

「そうだ、アレだ。無用な心配かも知れんが一応気を付けてな・・トシゾウさんの事だ。ソレとこの期に『バックスタブ』取得な。」

「分かってるって。ちゃんと補助するって。」とトワイライトはマスターと意志は通じている様だ。

トシゾウとトワイライトは『暗殺者ギルド』を出た。

出て扉から数歩歩いた時にトシゾウの脳裏に『アサシン転職クエストを受信し待機状態に入りました。』とでた。


 今更だが、トワイライトの幼い頃の名前はトワイライト=スノーだった。騎士の家スノー家に生まれた。騎士の家は一応下級だが貴族で狭い土地だが領地持ちだった。

トワイライトが10歳の時に父が戦死し間もなく母も亡くなり家は没落した。4歳年上の姉『パピリオ』と一時期孤児院に身を寄せながら冒険者ギルドの薬草採取クエストをこなして元手資金を貯めて姉が15歳に成って『商人ギルド』に登録出来るように成ってから交易を始める。

トワイライトは転生者で前世の人生経験もあり、更に前世では交易で稼いだお金を戦艦に投資して仲間と共に大規模戦を戦う某ゲーム『大●海オンライン』も楽しんでいたので交易は基本的に大好きな方で瞬く間に儲けを増やし商人として成功していった。

姉のパピリオは『成金商人』として成功を収めた後に、大好きだった幼なじみと再会しドラマチックな恋愛を経て結ばれハッピーなスローライフを送る事になる。

交易の天才ルーキーが現れたと噂されるようになり、妬みも込めて『ロード・スノー』と呼ばれるようになった。

ロードとは(ROAD)の方で君主・貴族の意味だが、貴族だった者が没落して働かざるを得なくなった者に対し皮肉を込めて『ロード』と呼ぶ事がある。

そして、没落して無くなったトワイライトの家スノーを付けて『ロード・スノー』と呼ばれる事が増えていって通り名になった。

その後トワイライトは15歳で冒険者登録を更新し冒険者としてデビューする。

10歳以上15歳未満は『駆けだし登録』で危険の少ない採取のクエストのみ受注が許されていて、本登録は満15歳から。

冒険者業と交易の二足の草鞋で稼ぐうちに勇者バーティに参加するようになる。

その後、『アサシン』に転職時に暗殺者としてのコードネーム(通り名)が付くのだが、当時に顔を出していたギルドの?2が『ロード』を『道』と直訳し『道雪』と名付けてソレがトワイライトの通り名になった。

男爵様は殺人鬼である。・・・ってラノベのタイトルみたいな事実とチュートリアルもこなすネタだらけの便利なキャラクターって事が現実。


 トシゾウとトワイライトがギルドを出て少し歩くと後方に3、4人の気配を感じ取った。

距離を取りながら尾行されている。

そして更にもう少し歩くと前方突き当たりは水路で道は左右に道は分かれているT字路。水路沿いの道幅は広め。

その幅の広い水路沿いの道に10人ぐらいの人の気配がする。

トシゾウの視野の左上端に『クエスト:危険な待ち伏せ−−Quest Accept』と表示が有り、突発性クエストが始まった。

十何名かの怪しい人達が姿を現した。笑顔でそれぞれの手には棍棒、ショートソード、ブラックジャック、ダガーなど安価で手に入り易い武器を持っている。

日が傾き建物の影になり暗めで人相は判り辛いが、口元は分かる。無言でニヤニヤとしてる。

怪しい人達の内の一人が「君達は見てはならないモノを見てしまった。知りすぎたんだよ」と柔らかい口調で淡々と口上を述べる。

トシゾウは”やれやれ、それ人違いだよねー。”と思うが口にしない、多分こういう人達が聞く耳を持たない事を知っているから。

笑顔で殺気を放つ怪しい者達、ゴロツキは無言でユックリと距離を詰めてくる。

トワイライトはトシゾウに目で合図して身を翻して来た道を戻りだした。

川沿いの広い道に出てしまうと多人数に取り囲まれて厄介な事に成る。

その危険度はトシゾウも良く分かっているのでアイコンタクト直後に後ろを振り向いた事で『来た道を戻り細い通路内で迎撃を行う』と理解した。

トシゾウはトワイライトに続いて細い道に戻り、トワイライトに「クエスト遂行条件がダガー装備なんだ。さっき買ったダガーを使ってくれ」と言われて、買ったばかりのダガーを一本取り出した。

『M9バヨネッタ』に近いタイプで刀身の長さは手の平をパーに広げて親指の先から小指の先位の間ぐらいの長さで約18センチ前後、で背にはギザギザが付いている直刀型。

トワイライトは元来た道を戻り尾行して来た4人の内の1人と相対して止まり、ダガーで剣戟を交えている。道が狭く真面に戦おうとすると一人の方が良く、二人以上並んで戦おうとするとお互いが邪魔で真面に戦えない。

先ずはトワイライトが剣戟の末一人を倒して二人目と戦いだす。

トシゾウはトワイライトの背後まで行き振り返って、トワイライトを背にした。

そしてトシゾウはボソっと「冷静な判断だ」と咄嗟の判断の速さを褒める。

トシゾウはトワイライトを褒めながら目の前の棍棒を持ったゴロツキと剣戟を交わし始める。

使ってみてダガーは扱いやすいと実感する。敵の攻撃を弾いたり、受け止めたり、流したりと防戦に関してはロングソードや日本刀に比べて軽く扱い易いが、攻撃距離が短いぶん体術や格闘、柔術、拳法の間合いに近いのか?と感じている。

 次に攻撃を混ぜてみる。相手が身を引いて避けるが甘い、当たったと思ったが空を切る。

当然の事ながらロングソードや日本刀の間合いではダガーでは届かない。

”やはり、間合いは格闘か・・。”と思う。

トシゾウの相手に変化が有った。暗めでハッキリとは分からなかったが、相手の口元がニヤリとしたように感じた。

今の空振りで相手はトシゾウを『素人ではないか?』と誤認したのだ。確かに『短剣術』は素人同然である。

”受け流しても反撃はないし間合いが遠い・・ふふふ素人め”とトシゾウを安く見積もり舐めてかかり気が緩む。

トシゾウは攻撃の距離感にズレ・違和感が有るが防御し易さもあって「差し引きチョイとプラスってところか」と呟く。

”此方からの攻撃が不安定なら、カウンターで当てる。”

トシゾウの相手をしているゴロツキは右手に持った棍棒を上段から振り下ろしてきた。

トシゾウは右前半身に体勢を改め振り下りてくる棍棒の中間位置、腹の辺りを持っていたダガーで弾く。棍棒は受け流されてトシゾウの直ぐ横を縦に空を切る。

トシゾウに棍棒を振り下ろしたゴロツキは攻撃を受け流されて前のめりに体勢を崩し、隙だらけになる。

トシゾウは目の前で体勢を崩して隙だらけのゴロツキの急所に反射的にダガーを走らせる。

『ズバッ』ゴロツキの気管の辺りから首の右横(斬られた本人にとっては左横)にかけてダガーを走らせて、ダガーの通った斬り跡が『パックリ』と開く。

同時にトシゾウの左手の義手のフックがゴロツキの棍棒を持った右手を引っかけトシゾウの右横に向けて引っ張っている。

首を切られたゴロツキはクルッとトシゾウの前で右を向く。切られた首の傷口が後方(トシゾウの向かっている方向)に向き、血飛沫が後ろにいるゴロツキ達の顔に掛かり怯む。

トワイライトは目の前のゴロツキに向かい合い剣戟をあしらいながら、背中に目があるかのようにトシゾウの様子を把握していて

”流石、トシさん初めてのダガーにしては・・・”と賞賛の思考が終わらぬうちに

「トシさん、さっき買った投げナイフ」とアドバイスを送る。

トシゾウの方は”俺、投げナイフやった事無い。物を投げつけるのと変わらんぞ、刺さらんぞ。”

と思考はネガティブだが、懐から投げ用ナイフを2本取りスナップを利かせて投げる。

今迄、何時も通りなら投げたナイフは皿が回る様に縦回転して目標に当たり石を当てた位のダメージを付けて落ちるのだが・・・。

今回は投げると同時にトシゾウの頭上に電球マークが点灯し『ピカリン』と効果音と共に技が発動する。

『短剣術』の技で『投げナイフ』をトシゾウは覚えた。

トシゾウに首を切られて倒れ込んだゴロツキの後ろにいた次のゴロツキ二人に目がけて投げたナイフの切っ先が真面に目標に向かい空を切って進み急所に『ザク』と刺さる。

左の方のゴロツキは顔に掛かった血に戸惑っているところに眉間に深々とナイフが刺さり膝から崩れ落ちる。

もう一人右の方のゴロツキは喉元にナイフが刺さり絶命する。

「あら、この技は有難い。小柄投げ苦手だったんだ(笑)。」とトシゾウは余裕のある言動。

「トシさん、技使わずに攻撃していると収得の可能性有るから・・・」とトワイライトも喋りながら目の前のゴロツキをあしらっている。相手が集中してギリギリ防ぎ切れる程度の攻撃をダガーで繰り出し相手を防戦で飽和させている。

「分かってるって」とトシゾウも一つ、また一つと技を覚えていく度に敵・ゴロツキを仕留めていく。

ゴロツキを3人ほど残し頑丈そうな鎧を装備した『重戦士』が二人出て来た。

トワイライトは「もう良いかな?」と独り言を言ってダガー越しに相手を突き飛ばし、飛ばされたゴロツキが後ろにいた仲間に支えられて転けず団子に成ったところで剣に持ち替え、範囲攻撃の技で一掃する。

吹き飛ばされたゴロツキ4人は傷も負い歯が立たない事を悟ったのか「うわぁー」と逃げ出した。

トワイライトの前に居たゴロツキ共の逃走を確認して、左手を小盾に変えてスキル『気配察知』を張り、トシゾウの戦いを観戦しだした。

トシゾウは重戦士相手に色々試してみる。相手は重厚な鎧に身を包み両手で大剣を振り回す。

ポルトスと同じスタイルの戦い方をする敵だが、ポルトスより攻撃も遅いし動きも鈍い。

だが、ダガーには難敵。敵の攻撃を当てても重厚な鎧のお陰で防御力が高く与ダメージは少ない。

トシゾウが色々と試行錯誤している間にトワイライトが横から

「トシさん、そいつ等動き遅いからサイドステップで回り込むと良い」とアドバイスを入れる。トシゾウのスピードは速いが右足が義足なので、一定以上の速度は出せないと認識していた。だがそれでも遣ってみると、意外に重厚な鎧を着込んでいる相手の側面に回り込むには義足でも十分な速度が出せた。

トシゾウは動きの遅い重戦士の側面に回り込み更に斜め後ろに差し掛かった時に相手のクリティカルポイントが見えた。

その瞬間から周りの景色は一瞬で真っ白に変わり、トシゾウの動きも、重戦士の動きもビデオのスローモーション再生の様にユックリになる。

重戦士のクリティカルポイントから光る気流がトシゾウの方に流れてきているのが見える。

トシゾウは以前新撰組時代に剣の達人と言える相手と戦った時に同じ感覚を発感させた事がある。

”コレは集中力が極限まで高まった時に訪れるアレだ。”と感覚的に覚えている。集中力を極限にまで高めお互いの体勢や動きが手に取るように判り体感時間が長くなる。とある有名な人気漫画で言う『全集中』というやつに近い。

トシゾウは右手に握ったダガーを光る気流に沿わせて滑らせて行き重戦士のクリティカルポイント、後頭部の下ヘルメットと鎧の継ぎ目で鎧の被っていない部分にダガーの刃を深く刺し入れる。

そしてダガーを鎧の継ぎ目に沿って重戦士の前方に斬り抜く。ダガーが喉元から現れると同時に血飛沫が飛び散り重戦士の首から上が『ゴロリ』と前に転げ落ちる。

トシゾウの視界の上の方で『バックスタブを収得しました。』と表示され『重戦士は首を切り落とされた。』と続く。


職業の『アサシン』に転職する前提条件は『バックスタブ』を所持している事。そしてその『バックスタブ』を収得出来るクエストが今進行中のクエスト『危険な待ち伏せ』である。

このクエストの成否に関係なく、クエストが終わるまでに『バックスタブ』を発動させて収得する事が一番の重要事項。

クエスト期間中は『バックスタブ』の発動条件が緩和されており、通常に比べてかなり楽に発動する様優遇されている。発動を条件に『バックスタブ』は必ず収得する。

 技『バックスタブ』とは敵の背後に回り込み、又は物陰に隠れて気付かれずに視界外から攻撃する事で発動する。武器は不問。効果はダメージがクリティカル化した上で2倍、又は即死攻撃、そのどちらか。


トシゾウの『バックスタブ』が即死攻撃で発動し、技を習得したが、トシゾウも血飛沫を頭から被ってしまい酷い格好になった。だが未だ敵は残っている。

もう一人の重戦士は『バックスタブ』を警戒して只でさえ狭い通路なのだが横から後方に回られないように、樽や木製コンテナの箱が道の脇に放置されていて更に狭くなった場所を選びその場所から離れようとしない。距離は4メートル程離れている。

トシゾウは「ソレならば」と呟きながらさっき習得したばかりの技『投げナイフ』を使って右手を一振り、3本のナイフを飛ばす。

重戦士の胸に2本、腹に1本ナイフが当たるが『コンコンコン』重厚な鎧に弾かれてしまった。ダメージ0。

重戦士は溜技をチャージ中だが投げナイフなど全く意に介さない。

トシゾウは一応もう一度右手を一振り投げナイフを飛ばすが効かない。

重戦士は「痛くもかゆくもないわ」と溜技のチャージが終了し技を発動する。

重戦士は幅広の剣を縦に振り抜き、地面から人の背丈ほど有る衝撃波が地面を走りトシゾウに向かう。大剣の技だ。

トシゾウは右足が義足なので回避は一苦労、何とか衝撃波を避けたが、衝撃波が通過した時の余波で体に少しだがダメージを受ける。

トシゾウは”この距離だと一方的に削られて終わる”と実感し顔を上げて左足から一歩踏み出す。

「そそ、短剣術は密着してナンボ、近寄る方が正解。」

とトワイライトはトシゾウが判断をして行動を起こすのを待って答え合わせをするようにアドバイスを入れる。

 トシゾウは接近して剣戟を交えだした。手探りながら色々実感して効率的になり反応に余裕が生まれてくる。

大剣相手にダガーでの受けは負担が大きく受け流すと楽だったので受け流し主体で防御を組み立てる。

重戦士は通常攻撃を受け流されてムカッとしたのか技のチャージを始めたが、『体術』の当て身技で体勢を崩され、チャージが途切れる。

 接近戦に切り替えてトシゾウの中で戦い方を最適化するに従い、重戦士の攻撃を封じるようになってきた。

重戦士が通常攻撃や溜の要らない技を出すモーションが始まった瞬間に、早さを活かして『牽制攻撃』を相手の手首に当てて重戦士の攻撃を封じる。

例えて言うなら『ボクシング』で相手が右パンチを出そうとモーションで予兆が出た瞬間に、自分のジャブを相手の右手に当てて右パンチを出せない様に封じるヤツだ。

手数に余裕が出てきたのでトシゾウも攻撃を混ぜてみる、スラッシュ・斬りつけ系の技は重厚な鎧に阻まれダメージ1。

剣術技の『神速三段突き』の動きを意識してダガーで再現して得た技『速攻多段突き』で全部当てても『ダメージ1、1、1』と合計3ダメージ。斬り付け系に比べればダメージ3倍だがショボイ。

理由はトシゾウの『短剣術』はレベル1だから自身の攻撃力を全く反映出来ず相手の高い防御力に歯が立っていない情況だ。

トシゾウのダガーでの防御や攻撃の命中、技の習得等は『剣術』での代用で上級者と同等の力を発揮するが、ダメージに於いては『短剣術』の実レベルを参照するので今は蚊が刺した程度に成ってしまう。

相手の攻撃のサイクル一周に付き牽制攻撃で相手の攻撃を封じ、次の相手の攻撃までに二回ほど『速攻多段突き』を当ててダメージ6。蚊が刺した程度だが嵌めた状態になった。

同じサイクルを何回かこなして、重戦士のHPを三分の一減らすまでダメージを蓄積していったが、攻撃を食らいながらもポーションを飲まれてしまいHPが全快する。

「え?」とトシゾウの目が一瞬点になる。

重戦士は「ガハハハ無駄無駄」と何か勝ち誇ったような笑い。

”また、チマチマ突いてポーションかよ?”と気が重くなっているトシゾウにトワイライトがダガーの鞘みたいな筒を投げて渡した。

トシゾウは「何??」とトワイライトを見る。

「その鞘に入れて『エンチャントダガー』」とトワイライトはスポーツ競技のコーチか教官の様に最低必要限の単語を喋る。

トシゾウはそこそこ刃こぼれが酷くなっているダガーを受け取った鞘に入れて、さっきゴロツキを相手いしていた時に習得した『エンチャントダガー』を発動する。

トシゾウはダガーを鞘から抜く。うっすらとブラックライトの様な暗い光をダガーは帯びている。

重戦士はHP全快でトシゾウの目が点になった事で”これは勝てるな”と思いドヤ顔で嬉しそうにしている。

「次は何をしてくるんだ?待っててやるよ」と余裕を見せる。

一般的な常識として重戦士や騎士といった鎧を着込んだ防御力の高い職業はシーフ類・アサシンの天敵で一対一で10回戦ったら7か8は重戦士・騎士の方が勝つ。5人以上の集団戦で数に差がない場合だと勝率は9割近く達する。

そんな事も十分知った上での余裕である。

重戦士は”どうした?仕掛けてこないのか?”といったもう勝ったような不敵な笑い。

トシゾウはチラッとトワイライトを見てから重戦士に仕掛ける。

トワイライトはアイコンタクトで

頷いただけだ。

トシゾウは同じ攻撃を仕掛ける。

『牽制攻撃』で重戦士の攻撃を封じて『速攻多段突き』を繰り出す。

重戦士は「何とかの一つ覚えか?無駄無駄無駄!」と未だポーションを持っているので強気。

重戦士は「無駄無駄!」と大見得を切ったが、防御力のお陰でダメージ1だが、チクチクと針で突かれた感の痛みは有るのでさっき待っている間に『痛感耐性』を張った。

やはりダメージ1でも多少は痛いのだろう。だがもう大丈夫。

トシゾウの連続攻撃を重戦士は盾でも持っているかのように左手のガントレットで庇う姿勢を取っていて、何ら変わらないように見えた。

しかしトシゾウの視界では事が違った。重戦士のHPは相変わらずダメージで減っているようには見えないが、重戦士のHPの下に新たにパラメーターが表示されて、値がグングン上がっていく。

コレは状態異常の蓄積値である。

トシゾウと重戦士の行動力と『短剣術』の素早さの差で、一度『牽制攻撃』で相手の攻撃を封じた後残った行動力で『速攻多段突き』を2度繰り出せる。

合計6発当たり重戦士の状態異常が蓄積されていく。5度目の『牽制攻撃』を出す前に重戦士は体勢を崩し膝を着いてから倒れた。状態異常の『麻痺』が発現した。

 本来ダガーの刃に毒類を塗っても生身に傷を付けなければ状態異常値は上昇しないのだが、毒類を塗った状態で『短剣術』の『エンチャントダガー』を掛けると攻撃が相手の防具に当たっただけで状態異常値が蓄積される様に成る。尚盾や武器類で防いだ場合は蓄積されない。効果時間は20分。

トシゾウは目の前の重戦士が倒れて、自由の利かなくなった手足で藻掻きながら呂律の回らない言葉を発している状態を見て戦闘力は無いと判断し、残ったゴロツキ共に気を向けた。

誰も居なかった。十体の死体と麻痺した重戦士だけが目の前に転がっていた。

二人目の重戦士が負けた時点で残った者は逃走したようだ。

トシゾウとトワイライトが戦闘態勢を解くと『シャキーン』と音がしてトシゾウの視野の左上に『クエスト完了』と水色の輝く文字で表示された。

トシゾウは少し疲れた。

初めての慣れていない|柄物≪えもの≫(武器)で初めての、慣れていない戦い方だった、集中力を高め体の端々にまで意識を行き渡らせて戦っていたので神経と気力が激しく消耗していた。

戦闘態勢中は気が張っていたので感じなかったが、戦闘態勢を解くとドッと神経と気力の疲れが溢れてきたのである。そしてホッとした。

トシゾウはホッとして心に余裕が出来て改めて

”『短剣術』の戦い方も面白みがある、使い勝手の良い部分も有るので今後使いこなす為に鍛錬を積まないとな”と前向きな姿勢を示した。

トシゾウの言う鍛錬とは、型や正しい動きの練習をより多く行い積み重ねる事で体に覚え込ませる事、更に咄嗟の時に、何らかの緊急時に反射的に出て来るまで練習し体に染み込ませる事をさす。

正しい型・正しい動きを体に覚えさせれば、頭からの命令一つで一連の動きを正しく行えるが、体が覚えていなければ一々細かい所まで意識しなければならない。その時細かい処にまで意識して体を動かしても角度や早さ位置等がいい加減になり正しく力が発揮出来なくなる事が増える。

例えるなら柔道。男子で(昭和のバブル時代に)高校の体育の授業で初めて柔道を習った記憶が有れば思い出して欲しい。

初心者のうちは見様見真似でやっても『背負い投げ』は簡単には決まらない。

先生やコーチから正しい動作を順を追っ指導を受ける。

・先ずは相手を掴み(右手は相手の襟左手は相手の右袖)、体勢を崩す。この時相手の右手を引っ張って相手の右脇を開けさせる。

・相手の懐に足腰を軽く曲げて潜るように体を入れる。

・相手の右手の脇の下に自分の右肘を畳んだ状態で入れて、相手を背負う体勢をとる。

・背負う体勢から少し屈めた足腰を使って相手の体を跳ね上げる。

先生やコーチの指導通りやって、相手が踏ん張らなければ初心者でも何とか技を掛けられる。

それが練習を重ね鍛錬が進み、上級者になると、一瞬の相手の隙を突いて頭から『背負い』と命令が出ると体が反応し超高速で最適な動作をして一閃、『背負い投げ』が決まる。

この時は一々動作手順を考えてはいない、『ココと思った瞬間に体が動いていた。』『勝手に体が反応して最適な技が出た』等はトップアスリートの台詞で聞いたことがある。

そうなってこそ漸く使いこなせるとトシゾウは思っている。

「コレから夜など時間が出来た時にダガーの練習だな。」と心づもりした。

”剣術は一日にして成らず短剣術もしかり、功夫が大事・・・だな”

”先ずはこの返り血を何とかしないとなぁ、表通りを歩けない”とトシゾウは前進に浴びた返り血を気にしていた。

トシゾウは集中力が落ち、周りの様子や音、空の色も見えてきた。

空はもう夕焼けでオレンジ色に染まりかけている。


王立アカデミーに願書を出して14話は終わりの予定でした。南に一旦配送クエストを消化した後にもう一度王都に戻った時に入れる予定だった『暗殺者ギルド』のエピソードを入れてしまい、14話のアップが半月ほど遅れました。欲張ってしまいました。申し訳ございません。

次回南方に配送クエスト(商人)でいく先は先代勇者の元恋人。先代勇者のエピソードを予定してます。

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