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ヴァンパイア狂奏曲  作者: 平行宇宙(ひらいそら)
19/31

第19話 捜索1

 翌朝、駅で待っていたら、電車でなく、車で奴はやってきた。

 促されて、車に乗る。

 運転席にいたのは、この前いた桜宮とかいう弁護士だった。


 「大将に聞いたのか。」

 しばらくして、奴が言った。

 「それだけ警戒されると落ち着かない。」

 ・・・

 「フフ、素直というか馬鹿というか。顔に出しすぎだ。少しぐらいポーカーフェイスを覚えろ。」


 「若、えらく楽しそうですね。」

 ミラー越しに僕らを見て、運転手をしている桜宮さんが言った。

 「別に。」

 「またまた。最近は『あの雛が』『あの幼体が』ばっかりですよ。」

 「ケンコー!」

 「やれやれ。成人君でしたか。先日会いましたが、わがまま上司のおかげで自己紹介がまだでしたね。私はその暴君の付き人件ボディーガードおまけに運転手までさせれらている桜宮兼行(かねゆき)と申します。実質は若のベビーシッター、ですね。ケンコーというのは、若が言い出したニックネームですが、今はこちらの方が通っておりますので、成人君もそう読んでくれても良いですよ。」

 「おい、ケンコー!」

 「ああこわいこわい。ハハハ」

 なんだろうこの二人。こうしてると、こいつも年相応の子供に見えるけど・・・

 「何を笑っている。」

 「いや、別に・・・」

 「ったく。まあとにかくだ。せめて動揺を隠すぐらいのポーカーフェイスは手に入れろ、と言ってるんだ、わかったか幼体。」

 「幼体って・・・僕の方がずっと年上・・・」

 「あのな、あやかしは見た目通りの精神年齢だ、というのは常識だろうが。何年生きてるか知らんが、おまえはどう見ても12,3歳がいいところだ。幼体で充分だ。」

 「そんなこと言われても・・・」

 「だいたい中身が幼いから見た目も幼くなる。悔しかったら成長してみろ。」

 ・・・・嘘ッ。中身が成長したら体も成長するの?大人の外見になったら、こんなに頻繁に場所を移動する必要なかったのに・・・

 「なんだ、まさかそんなことも知らなかったのか?」

 「うっ。だって、誰もそんなこと教えてくれなかったもん。」

 「はぁー。一体どんな教育してきたんだか。おまえ、いったいなんなんだ?何ができる?」

 「何が、って色々できるよ。通訳もやったし、パン屋で働いたこともあったから、パンも作れる。魚だってさばけるし、絵を描くのも得意だ。」

 ・・・・

 「なんだよ。」

 「はぁー。あやかしとして、何ができるか、と私は聞いているんだが?」

 「・・・・それは・・・わかんないよ。」

 「わかんない?」

 「だって、あやかし、とか言われても。僕は成長が人より遅くて長生きだし、体が丈夫で怪我もすぐに治るとか、人より運動神経がいいとか、そんなことは分かるけど・・・あやかしとしてできること、なんて分かるわけ無いじゃない。大体あやかしなんての、今まで聞いたことなかったし。」

 「・・・ケンコー、どう思う。」

 「いやぁ、想像以上の箱入り、と言いますか。」

 「できることも含めて、教育する必要もあり、か。先が思いやられるな。」

 「そう言いつつ、若、嬉しそうですね。弟でもできた感じですか。」

 「あやかし相手にそんなわけないだろ。しかし、成人、おまえ成長が遅い、と言ったな。産まれた時からそんな外見じゃなかったのか?」

 「はぁ?そんなわけないだろ。ちゃんと赤ちゃんからここまで育ったわ!」

 「知らんのか?あやかしの多くは産まれた時から外見は変わらない。時折変体するものもいるが。しかし、高度のあやかしには交配で産まれるものがいる、と聞く。ひょっとしておまえには、親がいるのか?」

 「そりゃ、いるけど・・・」

 「何者だ?」

 「・・・・言えない。約束だから・・・」

 「約束?」

 「僕を育ててくれたおじいちゃん。僕の両親を知っている者は信頼できるから頼りなさい。かわりに両親について知らない人に教えてはいけない。そう約束した。」

 「では、私がおまえの両親のことを知っていたら?頼るのか、私を。」

 「・・・・そうなるね。」

 「・・・まあいい。少なくとも、おまえの親が名のあるあやかしで、人間界にもそれなりに影響を持つものだ、ということが分かった。おまえは知らないかも知らんが、あやかしだからと何が何でも討伐対象になるわけではない。ある種のあやかしについては、共存を約しているものもいる。人間界に紛れて暮らしているものもそれなりの数いるんだ。」


 「若、その辺で。まもなく第一現場につきます。」

 「わかった。そうだ、成人。おまえの能力で何か障気を感知できるものはあるか?」

 「障気?」

 「赤い目で見えるもの、と言えば分かるか?」

 「視界を切り替えれば見れるけど。」

 「馬鹿か!いや、馬鹿だったな。気づかなかった私が悪かった。おまえの見た目が変わらずに、あれを捕らえることはできないか?」

 「見た目が変わるとか知らなかったから・・・でも、普通にすごしてて、匂い、なら分かるよ。由梨恵さんのご遺体から、その残り香を感じたから、魔素だまりか何かに触れたんじゃないか、と思って、事件からあまり時間がたってないあの公園に行ったんだ。」

 「匂い、か。よし、おまえはできるだけしゃべらずに、どこかにその匂いがないか、それだけに注意していろ。いいな。」

 「分かったよ。」


 ちょうどその時、メイド喫茶の前に到着した。


読んでいただきありがとうございます。


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