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ヴァンパイア狂奏曲  作者: 平行宇宙(ひらいそら)
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第11話 夜の公園(中編)

 僕は視界を切り替えた。

 闇は闇でなくなり、幾多の「霊」のようなものが見える。

 形あるもの、形のないもの。

 形あるものは、存在感が強い。

 形ないものは、ふわふわした光のよう。

 形あるものも、一様ではなくて、濃いほど存在感が強く、存在感が強くなれば意志のようなものも持つ。そしてさらに強いものは、物質にも影響を及ぼし、怪異となるらしい。


 この霊のようなものは、うたかたのように産まれては消え、消えては産まれる。より強い存在は薄い存在を吸収し、さらに強くなる。

 生物の「魂」は、物質とこれらの境にあるように思う。思いが弱いと、死んですぐは形のあるものから徐々に薄らいで、この光の淘汰と混ざっていく。思いが強すぎる場合、この薄らいでいくことがなく、むしろ物質に作用するモノとなる。


 こんな解説をしているけど、本当は違うのかも知れない。あくまでこれは僕がこの視界で見てきた体験談。僕と同じ視界を共有する人がいるかどうかも分からない。こんな話、誰かとすることなんてないしね。話したことのあるのは育てのじいちゃんぐらいか。


 いずれにしても、この視界だと、死んですぐなら、魂となった人と話が出来る。話が出来るだけの強い存在として残っている。敢えて自分から話しに行くことなんてほとんどなかったけど、今回は特別。この死体があった場所なら、未来ちゃんの魂がいるかもしれない、そう思って、僕はここに来たんだ。


 そういうわけで、僕は視界を切り替えた。


 なんだろうか、この違和感。

 僕は見える光の玉を見つめつつ、首を傾げた。

 ここに、未来ちゃんは、いない。

 そして、何か違う気がする・・・


 !!!


 その時、僕は、首筋にチリチリする()()を感じて、思わず横っ飛びにその場を離れた。


 ズシャッ


 今までいた場所に、刃物で切りつけたような跡?


 僕は背筋にツーと冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。


 僕は、その刃がやってきた方向をおそるおそる見る。


 そこは、照明の当たらないグランド部。

 外側からの明かりは真ん中には届かず、普通の人にはこの月明かりでは視認は厳しいだろう。

 そんな暗がりの奥、照明の届いていない素の暗がりも、本来なら成人にとってはどうってことのないはずで。

 しかも今は視界を替えている。現実の闇などほとんど関係なく、昼でも薄暗い視界には、まるでピントのあたらない背景のように現実の風景が見えるはずなのに。

 グランドの中央部には、こちらの視界でも、元の視界にも、まったく把握できない暗がりがあった。


 その暗がりの中心。ただでさえ暗いその中心。目を凝らすと、暗がりよりもなお暗い人型の塊が、ゆっくりゆっくりこちらに近づいてくる。


 ゾクッ


 成人は、初めての恐怖を感じた。

 さきほど、何かの刃、を避けて転がり、お尻をついたままの姿勢で、その人型の闇を怯えた目で、ひたと見据える。

 ゆっくりと、確実に、こちらに近づく、黒い影。

 影が、街灯の光の届く範囲に入ると、成人の目には、その人物が浮かび上がる。

 黒い長髪を、風もないのにふんわりなびかせて、無表情のかんばせをこちらに向ける、その人物。

 その者の目は、冷たく光り、成人を見定めるように捕らえた。

 真っ白い顔は、周りの漆黒に映えて、輝いているよう。同じく白い両の手を胸の前で忍者のように組んでいる。


 「何をしている。」

 小さな音量にもかかわらず、腹の底に響くような声で、その人物=幸徳井倫久は、成人に、そう言った。



読んでいただきありがとうございます。


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