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01.溢れる愛おしさ

 家に着くや否や、ライラはシルヴィオに唇を奪われ、角度を変えて深く口付けられる。

 この感情に身を任せて、いいんだよ……ね?

 でも8つも上の私でいいのかな──もっと年齢の釣り合う子の方が──ううん、でも私、シルヴィオが好き。

 部屋の窓にはレースカーテンのみ引いてあったが、まだ明るい。それもそのはずで、まだお昼すぎだ。

 こんな昼間に……するの?? 恥ずかしい!

「待って、まだ昼だよ」

「待てない」

 ライラを見つめるシルヴィオの目は少年から男に変化していた。紫水晶の瞳が熱を帯びる。シルヴィオは軍服の上衣を脱いで上半身裸になると、ライラをヘッドに押し倒し彼女の首筋に甘く噛み付いた。

「……んっ」

 シルヴィオは激しくライラを求める。叫びにも似た熱い吐息が、ライラの唇から何度も吐き出された。




「手、大きくなったね。ほら、私の手より大きい」

 ライラは腕枕されながら背中から抱かれる体制で、シルヴィオと肌を密着させている。そしてシルヴィオの左手に自分の右手を重ねる。するとシルヴィオの手がライラの手を包むように絡め取った。ライラの首筋に唇を当てながら、シルヴィオが言う。

「こうしてライラを包み込むために、大きくなった」

 ライラはシルヴィオの手にキスをした。頼もしい手、熱っぽい体温、逞しい体、柔らかな唇……全てが愛おしい。

「ライラに謝らなくちゃいけないことがある」

「何を?」

「軍人、続けることにした。だからライラと旅に出られない」

「──強要されたの?」

「自分の意思」

「君なりに考えたことなんだね」

「うん」

「じゃぁ謝ることないよ」

「ありがとう。ね、ライラ?」

「ん?」

「もう一回、いい?」

「あ、……さっきしたばっかりなのに?」

「ライラを抱いてたら元気になっちゃった」

「……い、いいけど……優しくよ?」

 一回ではなく何度も愛されることになって、ヘトヘトになって気づいたら夜になっていた。




 レストランでとても夕食をとる。ライラはちょっと気恥ずかしかったが、それはシルヴィオも同じのようだ。

「えっと……仮配属になってって言ってたけど、また何処かに行っちゃうの?」

「まだ、わからない。しばらくは本部勤務。ライラはずっとオズボーン動物病院に?」

「うん、もう新米獣医師じゃないんだから」

 数年前のあの逃避行はまるで駆け足で世界大国を一周したようなものだったけれど、そういえばまだホウライ王国には立ち寄っていなかったな。でも今の情勢だと行かないほうがいいのかもしれない。シルヴィオが戦った相手はホウライ国軍だし。

「ホウライ王国の精霊獣、霊亀(レイキ)っていると思う?」

「ボスなのか無数の兵士なのか、ここからだと気配が分散しててよくわからないけど、いるからこっちに戦争仕掛けてきたんじゃないかな」

「う〜ん、亀のイメージってのんびりで平和的なんだけどな」

「ホウライのって、僕は、噛みつき亀とかワニ亀のイメージ強い……」

「あはは、そっち系の亀もいたね〜」


 夜道は危ないとシルヴィオが言うので、ライラは自宅まで送ってもらった。ドアから入ろうとしないシルヴィオを不思議に思ってライラが声をかけた。

「お茶でも飲んで行かない?」

「やめとく……その、また暴走しちゃいそうだから」

「……あ……うん」

 なんか照れる。

 シルヴィオがぎこちなくライラの頬にキスをして、来た道を帰って行った。

 私ってば、今の、誘ってたのね。気をつけなくちゃ。


 翌朝一番に出勤したライラに、オズボーン院長から呼び出しがかかった。

 昨日の今日だからお叱りかな?

 ライラはそぉーっとオズボーン院長に謝る。

「あの、昨日は申し訳ありませんでした」

「んぁ? あぁありゃ不可抗力だ。それよりこの募集がかかっているんだが、興味あるか?」

 一枚のチラシにライラは目を通す。

「国境なき獣医師団?」

「お前、獣医師の国際ライセンス取ったばかりだろ? いい機会だと思うんだが」

「世界の動物たちを診ることができるなんて、貴重な機会です! とても興味あります!」

「んじゃ、推薦状出しとくぜ。俺も行きたいところだが、ちょっといけない事情があってな。いろんな国の獣医師とタッグを組むんだ。色々と勉強になるぞ」

「はい!」

 自分が獣医師を目指したきっかけが、この国境なき獣医師団だ。

 小さい頃ライラの飼っていた白狐が病気になってしまったことがあった。村には獣医師がいなかった。自分では為す術もなく白狐は弱ってゆくそんな時、ライラの住む山村に立ち寄ったのが国境なき獣医師団の獣医師たちだった。テキパキと且つ的確に処置をしてくれて、白狐は徐々に元気になった。子供心に感動したのを覚えている。白狐が無事天寿を全うできたのは、彼らのお陰だ。

 今度は私がその恩を返すんだ。



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