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20. 仮説

「正確に言うと死の直前に全て諦めて自ら死を選んだのかは分からないってことだ。でも、その前にネクロマンスに関わる重要な何かをしてるのは間違いないよ」


 そもそも、人間は知性が高いため予測不可能な行動をよく起こす。だから、断定はしないし証拠がない限りは憶測でしかない。


 ただ、この研究ノートを見る限りコペルバウスさんの執念や気迫は鬼気迫るものがある。諦めたりはしないんじゃなかろうか。

 それに。


「この研究ノートさ、実はあとに続いてるんだ。このノートが上巻としたら下巻だね。で、その下巻がどこにも見当たらないんだ」


 下巻からの補足事項が度々書かれているし、日付から判断してもまだ続いているはず。

 しかし、机にもないし本棚にはそれに類するものは見られない。 


「!」

「この部屋のものは見つかった時のままにしてるんだよね?」

「ええ。発見された時に全て写真にとってるけど、そのまま保存しているわ」

「なら、やっぱり持ち出されたんだね。……この魔法を巡って、何かしらの出来事は起きたと見て間違いなさそうだ」


「もしかして、さっき言ってた第三者の仕業か?」


 ノルドの問いに、僕は大きく頷いた。


「だろうね。第三者はコペルバウスさんの研究を知っていたんだろう。知ってどうするつもりだったのかは分からないけど」


 共同で研究していたのか、何かのタイミングで一方的に知っていたのかは知らないが、その人もネクロマンスなんてもの信じたんだろうか。

 正直、ノートを読んでもめちゃくちゃなことを書いてるカルトにしか見えないんだが。


「……それが事実なら大問題だわ。すぐにでもそいつを見つけないと」


 焦っているのか、今すぐにでもマインは動きだしそうだ。


「でもさ、その第三者ってのは結局何が目的なんだ? ノートを持ち出したり、先生を他殺に見せかけたりして」


「今の段階じゃ目的までは分からないよ」


 ネクロマンスに関係していることは確かだが、詳しい事情は分からない。


「とりあえず、今の段階で事件の日、何が起きたか仮説を立ててみようか。前提として、コペルバウスさんの行動には全て意味があると仮定する」


 分からないことを考えても仕方がないということで、僕が考えたことだけを二人に伝えることにする。


「まず彼は授業の三限目にネクロマンスを行おうとした」


 はじめの一言で二人とも絶句する。


「は?」

「それは、……いくらなんでも飛躍しすぎじゃない?」


「そんなことないよ。彼の執念はこのノートから充分伝わったし、この魔法を使わおうともせずに自殺するとは考えにくい。ま、死んでるってことは失敗したんだろうけどさ」


 あくまで仮説なので証拠はないが、これは多分間違ってないと思う。


「じゃあ次の行動を考えるよ。コペルバウス先生は、誰にも邪魔されずに自由に動ける時間を見計らってネクロマンスを決行しようとした。実際、死んだであろう時間には、学院の大人達はみんな授業や仕事があったわけだからね。ちゃんと時間を選んだんだろう」


 そのせいで、シルビアだけが疑われることになったのだから気の毒な話だ。まあ、決行時間に関しては他にも理由はあるかもしれない。


「そして、死体の写真から見た少なすぎる血の量。このノートにははっきりとは書かれてないけど、術者の血が必要だってことが示唆されてる。血はネクロマンスに使われた、と見ていい」


 とことんカルトな魔法だ。なんで魔法使うのに術者の血がいるの? とか思うが気が狂った人間が考えたことだし、気にするだけ無駄なんだろう。


「ということで、コペルバウスさんは三限目にネクロマンスを行ったんだと思う。

 そこで何が起こったかは分からない、だがコペルバウスさんは死んでしまった。そして、第三者が来て死体に細工したり、研究ノートを盗んだりした、と僕は予想する」


 下巻があれば何が起こったかは分かるかもしれないが、現時点ではここまでしか分からない。

 と、僕の仮説を聞いた二人は納得の表情を浮かべていた。


「なるほどな……」

「うん、筋は通ってる。疑問はまだあるけど、きっとそれが事実なんでしょうね」


 マインは、僕の言ったことを信じたみたいだ。そこで、顎を手に当てて考える。


「第三者を突き止める必要があるけど」


「問題はその第三者が一体誰か、ということだね」




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