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危険物を避けて通りたかっただけ



さてさて鍛錬場についた私達。

皇子は活気のある雰囲気に驚いているみたいだった。まあ、驚くよね。戦時中じゃないのにこの真剣かつ命の危険を感じるようなピリピリとした緊張感が漂ってるし。


彼らはかつて一振りで自分達を半殺しにした皇子が来たから警戒している。……訳でも何でもない。

月一開催の、"剣も魔法も何でもあり!勝ったものが正しいデスマッチ‼︎"に参加するから優勝のために頑張って身体を動かしてるんだよね。


私とフィルトさんが来たから一度動きを止めて大きな声で挨拶してから鍛錬に戻っていく。うんうん。いい返事だ。


おや、そっちの魔術使い君、その魔法はもっと陣を活用するべきだよ。


あ!こら‼︎ヘッドスピンからのバタフライツイストはやめなさい!フッサフサの毛が残念な事になるでしょうが‼︎


私が声をかけながら進んで行くと、奥の方の拓けたスペース……別名、"フィルトの無双スペース"で、三バカが待っていた。


「姫さん、三バカって言わんでください……」

「え?だって三バカじゃん。

バカラに、ダバカに、ディムバカ。3人合わせて三バカ」

「なんでバカの方を取るんですか……俺ディムでいいじゃないですか……」

「効率が悪いよね?ディムって呼んでほしいなら半人前をさっさと卒業しなよ」


ご褒美は頑張らないと手に入らない。と言い放てば、バカラとダバカが、ディムバカは幼女に見下される事自体がご褒美になると言われた。……ぞわぞわ。


「姫さん呼びやめてよ」

「魔王様の妹様じゃ呼びにくいっす。俺ら基本バカなんで、魔王様の妹様って言い方でも噛みそうっす」

「だから、ルチェでいいって言ってんじゃん」

「魔王様の妹様のお名前を軽々しく俺らが呼べると思わないでください!恐れ多過ぎて魔将軍に殺されます‼︎」


うん、呼んだ?とフィルトさんが私の後ろから現れると、三バカは平伏した。情報によれば、フィルトさんが永遠鍛えるのが嫌でいっそ魔王様v英雄の戦いになったあの時一思いに散ればよかったのにと思いつつ鍛えているのが三バカなんだって。


「ほらバカラ、ダバカ、ディムバカ。

あの時あなた達が命辛々逃げ出した英雄が来ていますから、手合わせしてもらって自分達がどれだけ成長したのか実感してみなさい」

「「「すみません腹痛なんでちょっと」」」

「リーンフェルト様、訓練ですので、申し訳ございませんがこちらの模擬刀を使用していただいてよろしいでしょうか?手加減は一切必要ありません」

「構いませんが……私程度で、日々修行をしている皆さんのお相手になれるかどうか……」


その数分後、私の目の前には三バカどころか鍛錬場全体に、死屍累々といった惨状が広がっていた。三バカが秒殺(半殺し)になって、次々と手合わせを申し込んでいった奴から倒されていったの。流石英雄。

でも動き足りないのか、フィルトさんと手合わせ中。流石に将軍、押されてはいるけどちゃんと相手にはなっている。これで魔法を同時使用されたら確かに魔王様くらいしか相手にならんわな。


「ルチェ様ーぁ!」


……おお。この猫の国から王様のお使いで女の子を招待しにきた茶色のぶち猫みたいな声が聞こえて来た。……ああ、残念。来たのは猫は猫でもモッフモフの猫だわ。


「どしたのー?」

「ものもの出たにゃー!」


ものもの?……あ、魔物か。

フィルトさんと皇子が手を止めて此方を見ている。大丈夫という意味を込めて手を挙げる。さて行きますか。


「案内してねー」「にゃいっす!」


お仕事です。魔物狩りの。



魔王城からだいぶ離れた場所、人間領にも近い場所で溢れたみたい。厄介なとこにでたもんだ。


「瞬殺ですにゃあ」

「まあ、知能が高いわけじゃないから。猛突進仕掛けてくるくらいだからね」


大っきい穴を足元に空けて落として焼却して終わりだよ。個体個体は弱いんだけど、何せ数が多いからその方が楽。


「知能が高い魔物は基本的意思の疎通が出来るから、争う必要もないしね」

「そうなんですか?それにしても、お強い。治安維持は貴女の仕事なんですか?」

「…………なぜ、いる……?」


皇子殿下が、いつのまにか同行していた。魔物をたった今処分した穴を覗き込んでいる。気になったので付いてきましたって……。お客様は城で大人しくしててくれませんかねぇー。


「随分私を避けたがっているようですが、私は仲良くしたいので」

「……断る」

「……お友だちになりませんか?自分で言うのもあれですけど、権力者ですし、お金もあります。強いし、顔も近隣諸国の美姫より美しいと思うので、退屈はしないと思うんですが」

「……断固拒否。魔王様で足りる」


権力・金・顔の三拍子が揃った人物ならすぐそばにいるので、新たに確保する予定はないです!


「魔王からは、私が個人的に仲良くなる分には問題ないと言われましたし、それに……」


ねこー。帰るぞー。

皇子が何か言ってるけど無視だ無視。


「私に興味を持たずに、寧ろ避ける方は初めてです。是非とも振り向いていただきたいです」


「ルゥちゃーん!終わった?」

「フィルトバリア……」


なぜか身の危険を感じた。ぞわぞわ。使い魔に乗ってやってきたフィルトに隠れ、視線を物理的に遮る。え?なんなのあの皇子。女性には困らないくせに何故私。人間領の皆さーん!押してもダメなら引いてみろが宜しいかと思われますよーー!


「先、帰る」


お疲れ様と労ってくれるフィルトの手から逃げるのは惜しいが仕方ない。一刻も早く部屋に戻って、今度はしっかり鍵をかけておかなくては。



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