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年貢の納め時がきたのか……



なんのための陣か知らずに改良加えた私も私ですけど、こんなことになるなら説明してくれれば良かったのに。


やあ皆さん。過去の自分を現在進行形で殴りたい私ことルチェです。

私は今、魔王城の私の部屋で陣の書いてある布をとりあえず吊るして、研究してるっぼい偽装をしてるところです。偽装です。ええ、偽装ですとも。だってどこをどう変えればどうなるかはすでに分かっているんですから。


まあそういう訳なので、暇つぶしにちょっと今までを振り返りますかね……。そうすれば前回の私の不穏な発言も理解できるでしょうし。



私は人間領のとある夫婦の元に生まれたらしい人間です。らしい、というのは、聞いた話でしか無いからです。

私の髪が黒くて、途方も無い魔力を持ってたから、気味悪がられて捨てられちゃったんですよ。多すぎる魔力も、黒い髪も私のせいでは無いんですけどね。

それで、物心ついた頃には孤児院で育てられてました。他の子みたいに優しく接してくれるわけでも、頑張ったら褒めてくれるわけでも無いけど、気味の悪いらしい私という子供の面倒を最低限見てくれたので、その点に関しては先生たちに感謝はしてます。

6歳頃からですかね?折角魔力も有り余ってる事ですし、それを利用して魔物を狩って、素材を売って金にしようと考えたのがきっかけで、私は独学・実戦で魔力の扱いを覚えて、稼いで、孤児院に納めていました。私が稼いでそこに入れた分については雑収入扱いなので、そこの孤児院自体が段々と設備や食事や服などの質が上がり、だいたい4年かけて、普通の家庭レベルの生活が出来るようになりました!

その頃には魔法の扱いもかなりいい感じになって、新規魔法開発などができるくらいになってました。叩き上げというやつなのかな?というか叩き上げって何だろう。独学だから特に誰かに叩かれてないけど。


そんなある日、孤児院に稼いで帰ってみると、この辺じゃ見ない様な上質な布を使った服を着た人達が来ていて、私をみるなり顔をしかめました。あれは黒髪を見て、不吉だと嫌悪を露わにしている顔ですね。え?もう慣れましたよ。どこに行っても大抵こんな感じですから。

存在自体が気持ち悪くて、強い魔力をいつ向けてくるかわからない恐ろしい化物。みたいな感じに見られてるので。


物心ついた頃からそんなんですから、別に傷付いたりする繊細な心は持ち合わせて無いのですよー。

話を戻して……。そのお客様は、王家からの使いと言いました。まあつまり、お偉い人、らしいです。

ベラベラと要領悪く話すので、要約すると……

最近魔物の人間領への侵攻が多い。魔族が意図的に魔物を人間領に送り込み少しずつ人間を消すことによる世界征服を魔王が目論んでいる。だから私の、人間達に不安しか与えない魔力を使って、魔王を倒して共倒れになって、人間領を救って死ね。……って事らしい。

「貴様の様な黒髪の、生きる価値のない爆弾は精々我々の為に魔族を滅ぼす為に死ぬのがお似合いだ」って言葉は、そういう意味ですよね?

勿論私は断りますよねー。だって死にたくないもん。


お偉い人は私が断るとは思わなかったのか、この非人間が!と私に石を投げて帰って行った。まあ私を守る結界に阻まれて、私に石はぶつからなかったけどねー!

それから数週間後だったかなー。超絶美形の莫大な魔力を持つ国の第2王子が魔王討伐に出るって話が国民に知らされたのは。


その報せを皆が知った日からでしたかねー?お前のせいで成人したての王子が魔王討伐なんかに出る事になった。と、外を歩けば石を投げられ、素材を売りに行けば買ってもらえず。稼げないから要らないと言われて孤児院を追い出され、よく分からないけど絡まれて撃退したら私が悪いって言われ、王都を離れ、人間領の端っこに来て、困ってる人に手を貸したら感謝されるものの、その後黒髪を見られると、大抵闇討ちで殺されかけた。

そんで何故か国民全体に魔法で恐怖を植え付けた罪で人間領から追放になった。

その時ですね〜。魔導姫なんて名前を貰ったのは。

まー、あの時でしたね。私が人間の命の価値は、どう足掻いたところで尊卑により決定される。そして、黒髪の人間と犯罪者なら、犯罪者の命の方が価値がある。……そんなことを現実として突きつけられたのは。

成人したての王子を魔王退治に向かわせるのはご法度だけど、10歳の孤児を魔王討伐に向かわせるのはいい事らしいってところと、人攫いと闇商人の悪事は黒髪の人間が生きている事よりずっといい事らしいという実体験から学んだのですよ。


その後、人の住めるような場所じゃないと言われる魔族領に私は行くしかなく、身1つでやって来ました。

最初はどーしよーって思ってたんですけどねー。どうやら私、悪運に恵まれたようで、最初に会った魔族の夫婦がボロボロの私を見て大変心配してくれて、世話を焼いてくれたんです。娘さんのお下がりの服をくれて、行く途中だった果物狩りに同行されてくれて、収穫手伝ったらお裾分けしてくれたのでお腹もいっぱい。あの時の恩は忘れませんよ。

それを皮切りに、って感じで、道行く魔族と助けて助けられ、物々交換その他諸々。夜は何処からか飛んで来る鳥魔獣(ものすごくふわっふわ)に包まれて眠り、魔法で服や身体は綺麗にできる。たまに遭遇する魔物を狩って治安維持に貢献してたら、近隣住民の魔族の皆さんがありがとうって食べ物とかくれて。

いやあ、魔族の善意に生かされましたね。ぶっちゃけ魔族の方々の方が優しい。何でだろうと思ったけど、私が黒髪だから人間だと思われなくて、魔族の長い寿命からすれば当時の10歳の私は赤ん坊同然で、その赤ん坊同然の少女が1人旅人みたいなことをしてる理由を勝手に推測してくれて、余計優しさに拍車がかかるってやつだったわ。


あの当時は、魔物が入って行った森にいたからというだけで魔族は理不尽に殺される事もあったから、そのせいで少なからず大切な人を失っている魔族は多い。1人で定住する場所もない子供がいたら、その線を考えるよね。


不幸中の幸い。黒髪である事と、子供の一人暮らしという2点が私を救った。

……人間であるとバレてたら、どうなってただろう。考えるだけで恐ろしい。


これを聞いて分かったかね?私は今、魔族領で、魔族の皆さんを騙して生きてるわけね?しかも魔王様すら欺いている状態。バレたら恐ろしいよね。ついでに、私が王子の探してる人間だとバレた場合、それはそれで不味いよね。だって人間領では極悪非道の魔導姫。私がいると、王子は相手を見つけられないから、じゃあどうするって……そりゃあ……ね?


というわけで、私は逃げるしか無いんですよ。

悪運尽きたのかなー。あーあ。

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