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みつからない……



「…私の手の甲に印が着いてからすでに半年ですが」

「今回の魔法陣は自信作だ!なにせ可愛い妹分に少し手伝って貰ったからな!」


対の印の持ち主が見つからなかった為、皇子の印を触媒に、その人間を召喚するという手を出して打ち出したのが3ヶ月前のこと。

初めは人間領で人間の精鋭の魔術師達が十数人という数を使って召喚を国の至る所で行ってみたが成果はなく、魔王に相談すると、彼が魔術師数十人分の仕事を1人で請け負ってくれたのだ。他ならぬ友人の為といって。魔王に気に入られたのは人間領にとって本当に幸運といえよう。公爵としていきてはいるものの、未だ一応王子の身の安全の為に魔法陣を改良、王城で召喚の儀式をしつつ、その範囲を段々広げていたのだ。その範囲内に対の印の持ち主がいれば、間違いなく召喚されるからである。

…まあ、それでもまだ見つかっていないが。

既にパーティーに不参加だった人間には直接会ったし、その為に北に南にと、様々な貴族領地を1つ残らず渡り歩きもした。取りこぼしは再三ないことを確かめてからの、苦肉の策での召喚術だった。最後の希望とも言ってもいい。

ただ、召喚魔法だって限界がある。その魔法陣の範囲を広げるのには、魔法陣の研究をして魔法陣を書き換えることや、1メートル増えたら1人携わる魔術師を増やさないと魔力が足りないとか、そう言った事情が。それではいつ終わるか分からない。しかも和平を結んで以降、魔族領に出かける人間は少なくない。いつか人間領を覆うほどの範囲を指定できる程になったとしても、その時に範囲以内にいなければ、つまりその時に魔族領にいるようなら、見つからない。

暗い顔の人間側に対して、魔王はかなり御満悦である。そんなに出来が良かったのだろうか。それとも妹分とやらに手伝って貰えたことがそんなにも嬉しいのだろうか。宰相はハア、と溜息をついているが。

その様子に公爵が反応した。


「妹分…ああ、例の拾いものですか」

「拾いものとか、間違いでも本人に言うなよ。おれの家族だ」

「それは失礼。魔王と宰相が…こちらの事情とはいえ度々こうして簡単に抜けてきて問題が起きないほど優秀なんですね」

「おう!いいだろー。しかも物凄く可愛い」

「妻も着飾るのを楽しんで居ますしねぇ。魔族にとっては強さがすべてなのですから、いい加減娘だと堂々名乗っていいのに」

「5年経っても謙虚だよなぁ」

「…随分仲は良好なようですが、わたし、会ったことないですね?」

「当たり前だろー?間違いなくお前より強いし、魔族じゃなきゃお前の好みどストライクなんだから会わせるわけねえって。」

「何故それを先にいってくださらないんですか。今すぐ会ってみたいです」

「だーかーら、魔族な時点でアウトだろ。お前の家族の顔見てみろー」

「…私自身は種族程度気にしませんし…別に、会うくらいは問題ないと思いますけど。…それでその妹君に手伝ってもらったとは?」

「あいつ出会った当初から魔法陣を新規作成したり魔法を開発したり、かなり頭が良くてな。数年前に渡した結界あるだろ?アレ組み立てたのもそいつだ。

いつも何かしらしてて疲れてるから、寝る前にちょっとばかし魔法陣を見せたら、若干改良加えて、召喚範囲を王都全域にしてくれた」


王太子が王都全域⁈と愕然としてる。王太子は魔族に匹敵する魔力量を歴代王族の中でもリーンフェルトの次に有している。英雄と呼ばれる彼がいなければ歴代最強と呼ばれるレベルだ。それでも、魔法の範囲は半径2キロが限界。渡された魔法結界の陣は素晴らしかった。しかもアレの範囲は王都どころか人間領をカバーできるレベルで、しかも王太子が即位するまでの最低10年間補充無しに発動し続けるだけの魔力が既に貯蓄してあったのだ。但し、10年後には王太子を含めた国でトップクラスの魔術師が複数人で三日間魔力切れを起こす寸前まで魔力を流し込まなければ一年も発動しないらしい。半径20キロメートルはある王都全域をカバーする事は夢のまた夢である。それを実現できるたった1人の魔術師。それが魔族と敵対している時にいたなら、被害は派遣した軍の全滅どころか人間領丸々が魔王領の属領となっていたことだろう。


「それはまた…、規格外ですね」

「それはお前もだろ。どこに魔王と一週間戦って相討ちにできるやつが居るんだよ。伝説の勇者でもないのに」

「…私は、万能というわけではないので」


リーンフェルトも魔力は有り余るほどあるが、絶望的なほどに、攻撃一択。保護魔法や供給魔法が使えない。それでも1人で魔術師千人分に匹敵する力の持ち主、国防の観点から言えばかけがえのない存在である。結界に不安がある以上、是非とも国の中で、自分の望む相手と幸せになって…というか、その相手がいるからという理由でこの国に留めておきたいが為に、必死でお相手を人間領内の人間で探しているのだ。

魔王としては、そこまでして友人を閉じ込めようとする考えに心底腹がたつ部分はあるが、自分でも国防の重要性は分かってる為、いまは口を噤んでいた。


「あいつは人間を嫌ってる節があるから、会わせる気無えよ。諦めろ」

「!それは、…では魔王様達が我々と和平を結んだ事を良く思っていないのでは?」


恐らくそれだけの魔術使いが敵に回ることを危惧したのだろう王太子の言葉に、魔王が鋭くそれは人間領でもそうだろう。と言って黙らせた。


「俺ら魔族は弱肉強食。上が是と言えば是、否と言えば否。そこには微塵の反乱も許さねえ。シンプルだ。俺を力でねじ伏せない限り、裏切りもそれに準じる行為もねえ。

…だがお前ら人間は違う。特に王宮なんてもんはな。俺らとの和平交渉の後とリーンフェルトの婚約者選びの後の大規模な処分なんてのがいい例だな。欲の為の裏切りと成し遂げる為の小賢しさ。うちの妹はそれが心底分からないし気に入らねえらしい。やってられないから魔族領に来たらしい。

それにな言ったろ、お前らに渡したのはあいつ特製の結界魔法陣、しかもあいつの魔力だ。

それがどう言う意味かわかるか?どうでもいいって意味だよ。

あいつはお前らどころか、自分がいる場所もそこが何かも興味はない。

結界を使ったってことは、あいつの力を頼ったってことだ。自分たちでなんとか出来ない。つまりはあいつからすれば、その程度の弱者。

自分の邪魔をされなきゃそれでいい。煩わしくなけりゃそれがいい。俺の所よりいい条件があれば、魔族だろうがそれ以外の場所にだろうが、居心地良ければそっちに行く」

「安心してください魔王様。あの子は魔王様に…貴方が見捨てない限りは魔王様の味方です。あれだけ毎日楽しそうに過ごしておりますから、余程のことのない限り大丈夫でしょう」

「だといいな。とりあえず研究と書類整理で倒れる前に菓子食わせて休ませる為にもさっさと済ませて帰るぞ」


と、言うのが前回の召喚時の話である。


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