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はじまり

しばらく主人公不在でお届けします。



神々は世界を創造した。

世界に2つの種族を生み出し、片方は弱く、片方は強く。けれど手を取り合えるように、力ある方に同じ姿形を取り、同じ言葉を話せるようにした。

神々がそこまで明確に分けて、作り上げた理由などは誰も知らない。誰も、知る事は出来ない。

けれど、2種族がやはり手を取り合うように度々、災厄を起こした。…弱い方は、頑なに協力を拒んだ為に、数百年に一度、強めの人間を作り出した。


「わけなんだけどさぁ?

あいつ張り切り過ぎて強すぎるの作っちゃったんだよねぇ」

「だからってひとの夢に入ってくんなよ…」

「あっはっは!君、人じゃなくて魔王だし、それに夢に侵入されてる時点で、僕が何かはわかるだろ?」

「……創造主、の1人」

「そ!でね?作り出した超強い人間なんだけどぉ、強すぎて独りぼっちになるのが目に見えてるし、僕らの願いを叶えてくれた子にはご褒美があって然るべきだろう?

でも僕たちは直接干渉しないって決めてるから、……だからね!君に特別な呪いを教えてあげる」

「は?」

「それと、君にもご褒美。

とても可愛い妹が出来るよ」

「は⁈」

「呪い実行しないと、良くないことを起こしてやるからな」

「それ脅迫」

「じゃ、…………頑張ってね。魔族の王様、魔王サマ?」

「ん?今何か小声で「バイビー!」」


次の日、目覚めた魔王はなんだったんだあの変な夢と思いつつ、頭に焼きついた覚えたことのないはずの呪いと使用方法とその対象に頭を悩ませ…


「…ま、いつやれって言われてねえし、まだいっか!」


と、考えるのを放棄した。

そして綺麗さっぱり忘れていた。その時がくるまで。


さてその時というのが、それから五年後。

魔王領との諍いの無くなった人間領では新たな問題が起こっていた。何を隠そう、貴族階級の女性の晩婚化である。人間は短命だ。しかも貴族の女性なんて、20になったら行き遅れと言われるのだ。それでも彼女たちはそのギリギリ…いや、30手前になるまで頑張るのだ。とある高貴な男性の妻になりたくて。

そしてとある高貴な男性というのが、


「英雄、第二王子のお前か…」

「現在は公爵ですよ。私が結婚したくないが為に勝ち取った婚姻の自由を理由にして貴族の女性たちが挙って婚約解消やらを行ったようでして」

「笑い事じゃないですよ、陛下と殿下、宰相殿」


魔族の王様、魔王城の応接室で、ソファーで寛ぐ魔王と魔王の背後に控える魔族の宰相と、対面するソファーに座る人間領の公爵が笑っている。正直にいう。どうでもいいのである。

国家レベルのまずい事を、どうでもいいで済ませようとしている3人に対して侍従が胃を痛めながら言う。


「晩婚化っていうのは深刻な問題なんですよ?皇太子殿下については貴族の中でも特に教養と身分がある女性でなおかつ年齢も指定して、候補は絞り込んであるので問題ないですけど、ある意味次期国王よりも優良物件がよりにもよって婚姻の自由をもらってしまった事が原因だってひたすら言われてますよ!」

「…国から除籍にしてもらって旅にでも出ればよかったですかね?」

「そりゃ無理だろ。寧ろお前に女どもが群がる気しかしねえな。除籍なんてして国でてみろ、権力に捕まるだろ。

お前の自由が無えよ」

「正直な話、魔王領との和解が済んだ今、人間領の王とはあくまで各種族の代表という意味になりました。

そうなるための平和を勝ち得た大きな役割を果たした公爵殿にこれ以上国の問題を押し付けるのはいかがなものかと思いますよ。どうです魔王様。友人が何処の馬の骨とも分からない女と結婚する前に、魔王領に移住させては?」

「おー、それいいな。俺、お前らの国が幸せになるより、友人の幸せの方がいいし、ここだけの話…リーンフェルト、前から思ってたがお前さ、全部どうでもいいんだろ?」

「「え?/は?」」

「おや…」


魔王の言葉に、宰相と侍従は疑問の声を公爵は関心の声をあげた。魔王は呆れたように、1週間殺し合いして5年も友人やってれば分かる。と言った。


「殺し合いん時から疑ってはいたけどな。

お前人間と関わってる時感情らしい感情は無かった。殺し合いの殺気とかのほうが反応してたし楽しそうだったな。

お前がいつも猫被って感情豊かに見せてんのはそれを悟られねえように、だろ?」

「…随分、ずけずけと言ってくれますね」

「だから、お前はお前に理想を求める奴らしか居ない世界じゃ、幸せになんざなれねえよ」

「…こうして気を張らなくていい友人が居ますから、私としては幸せなつもりなんですがね」

「……いっそ私の方で手を出しても問題ない女性を挙げる予定だったんですが、やめたほうがいいですか?」

「是非ともやめてくれ。女性たちにも失礼だし、私も興味のかけらもない。友人にバラされてしまったから内輪ごとと思って言うが、お前も知っての通り、私の女性の好みからして、私の条件に合う女性は居ない」

「お前の好みって?お前より綺麗な美人か?」

「……」


笑顔で黙り込んだ公爵に代わり、魔王からじろりと赤い目ににらまれた侍従は、


「…自分より強くて、尚且つ自分を振り回してくれる女性です」


と、口を割った。それはまた、と魔王たちは無理難題だーと笑っている。人間にはそんなの居ねえだろと魔王は呟いて…、何気なく呟いて、あ。と声をあげた。何年か前の夢の話だ。


「…カミサマからの贈りもの期待してみるか?」

「は?神?って…あの創造主、ですか?」

「おー。5年前にちょっとな。で、その時に俺は可愛い妹分ができるって言われてたなぁって思って。実際その後すぐ出来た。お前の為の特別な呪いも頭に直接焼き付けてくれやがったけど、まあいっかと思って忘れてた」

「私の為の、呪い?」

「まあ簡単な話、お前の為のお前に相応しい人か何かを見つける呪い、だな」

「…えっと、伴侶ということですか?」

「いや?そうは言ってなかったな。ご褒美とは言ってたけど。具体的に何とか言ってなかったし。ただ使い方は俺が知ってるから、やってみる価値はあんだろ。

焼き付けられた当初に分析した限り、相応しい者が居なければ、印は付かない。印が付くのは1人だけ。そんで会えば、術をかけた俺と、術をかけられたお前に伝わる。

俺が呪いかける時に、種族を人に限定、ついでに未婚で純潔な乙女とでも条件付きにすればいい。

そんで、此処からがすげえとこな。もし見つかってもそいつの事が気に入らなければそれで終わりだそうだ。呪いはあくまで、見つけるまでの効力しかない」

「なるほど、見つかる相手が彼の望むような相手とは限りませんからね。名案です」

「んじゃ早速やろうぜ。成功して印がついたらパーティーな。面倒だが仕方ねえ。婚約者探しパーティーって銘打って、娘たち集めて、選ばれなければ一生選ぶ事はないので二度とつきまとわない事、として王名で参加を強制する。

どうよ?」


魔王がにやりと笑って、そうして一大イベントの幕は開いた。

印がついたので、いる。という結論が出た。それゆえ一国の命運をかけて…というか、国の未婚率を下げる為の救済措置の一計を案じた。

一晩で何とかなるはずがないので、1週間かけて、人間領の未婚の女性全員と、一通り目通りした。結果、公爵の収穫は0。しかし事前に誓約書も書かせてあったため、こぞって結婚ラッシュが起こった。

…まあ、その後一夜のお相手を願い出る不埒者が予想通り出たのでその辺りから国の膿の一斉検挙が始まり、やっと彼は平穏を手に入れた。多分その流れはお相手の女性が見つかったとしてもそうなって居たので、そのお相手が迷惑をしなかったという点においては良かったのかもしれないが。


そしてそれが落ち着いた1ヶ月後、再び彼らは今度は人間領、王の城の魔術塔に、王夫婦、王太子、公爵に侍従、魔王とその宰相が集まって顔を合わせた。

それが本当の始まりである。


読了ありがとうございます!

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