人を砲丸代わりにしてはいけない……
はーい、皆さんこんにちは!
前回フィルトさんによって砲丸よろしく投げ飛ばされたルチェちゃんです!ご機嫌いかがっ⁉︎
私はねー、今川の近くにいるんだー。川を越えた先にむかーし人間領にいた時に世話してた猫のミケちゃんが、餌を催促する時にゃーにゃーずーっと鳴くんだけど、その餌くれ催促しながら川の向こうで待ってるんだよねー。そんな私の手元には何故かキャットフード。……餌やりするべきかな?私は川に近づいていったが、いざ、越えようとした時、地面がぐらついた。ものすごい揺れてますよ!大地震です‼︎ミケちゃん、餌はまた今度!
「ルチェ!」
「……ぁ?」
目がさめると、魔王様のドアップ。麗しいがお顔が近い!魔王様に近い、と不機嫌な声で言えばごめんな、でも起きてよかったと泣かれた。え……ご、ごめん魔王様。
「「「よかったぁああ!」」」
視界の外(と言っても、私の視界には現在天井しか写っていない)から3バカの声が聞こえた。背中側がふわふわするので、どうやら私の部屋のベッドに運び込まれたようだ。頭痛い。
成る程、フィルトさんに投げられ、魔王様に頭からぶつかり、気を失って、魔王様達によって急いで運び込まれたって所か。
痛みを感じつつも、生きてただけマシかと思って身体を起こす。
私人間なんだよ。ぶつかる寸前で衝撃緩和魔法、肉体強化魔法を使ってなかったら頭が凹んでた。並みの魔族でも重体レベルだ。私じゃなかったら直ぐに目が覚めたりしてないぞ。フィルトさんめ。心配料と言われても許さない。それはそれ、これはこれだ。そのうち使えなそうなバカをわたしの独断で2人足して5バカの指導をフィルトさんがストレス溜めながらする日は近いぞ。せいぜい胃薬を用意しておくがよろしいですよ!
「魔王様、ごめん、ただいま。ちょっと手違いで天界領に行ってた」
「フィルトから聞いた。あそこは時間の流れが全く違うからな。しょうがない。が、心配はしたんだからな」
「うん。ごめんね。ありがとう。
それとね、私の居場所は魔界領だと私は思ってるから、他の場所に行く気は今の所ないよ。それと、親を探す気もない。会いたくもない。だからさ、また天界領的な時間の流れが違う場所に行っちゃうこともあるかもしれないけど、帰ってくるから待ってて。今度はちゃんと連絡いれるから」
本当に無事でよかった。と、魔王様。3バカ達は号泣しながら無事を喜んでくれた。煩いから声もうちょっと抑えてほしい。
「本当に良かった。心配で心配で、リーンフェルトの嫁探しなんて手に付かなかったんだ」
「……あー、だからまだ来客様式だったんだね」
ちなみに来客様式というのは、城の門を閉めた状態にしておくこと。侵入者対策という、とりあえずの防犯の姿勢を見せておくことです。
ということで、やはりまだ英雄はこの城に滞在しているらしい。とりあえず今はフィルトさんと宰相が対応中らしい。執務室にいるってさ。
私がこんなになった諸悪の根元が英雄の対応中?へえ、そう。一言ぐらい謝っていただきたい(自分が心配かけたことは棚上げ)。
「ルゥも起きたし、やる気が出てきた。さっさと終わらせて帰ってもらうか」
と、言って魔王様は、私を抱き上げて執務室に移動開始した。……はい?
「魔王様?私部屋に……」
「印を新しく付け直す。とりあえず前の印は魔族領の調べが終わってすぐに消したから、ルゥを連れて行っても気付かれない。
印をつける魔法式の見直しを頼みたい。あれは負荷がデカすぎる。休みたいだろうけど、今日はそれだけは手伝ってほしい」
「……はーい」
魔王様にそう言われたらやるしかないじゃん。やりますよ。やりますとも。何せ全ては私の為。確実に私に印が付かないように式に効果を組み込む機会を魔王様はくれたのだ。ありがとう!俄然やる気が出てきましたよ!
「ところで、次の条件は?」
「基本的変わりないぞ。未婚で結婚適齢期の純潔な人間。今回はここに、人間の範疇に収まる魔力持ちって条件を加える。ルチェは人間の範疇に収まらない魔力持ちだから、自動的に対象から除外される。まあ言いはしないがルチェ以外っていう制約をつけるぞ。……人間領では、よっぽど身分が無い限り、それこそ王族でも無い限り、大きい魔力は迎合されない。アイツもそれは知ってるから、その条件で探す事に異論はない筈だ」
「うん、今魔力的に人外って言われた気がするけど聞かなかった事にするね」
私、魔王様と正面衝突して相討ちできるほどの魔力は持ってないよと言えば、英雄はどうやら攻撃魔法一択に限れば魔王様と正面衝突できるレベルだけど、他の方面に使える魔力を含めた総量的には、私の方が明らかに多いらしい。へえ。初耳。
「まあ、穏便にルチェを対象から外して、印が付けば問題解決だ。すぐにリーンフェルトも追い出すし、安心しとけ」
「はーい」
因みにいつまで担がれたまま運ばれるの?って聞いたけど、返事はなかった。