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川流れ中の睡眠は危険です



果樹園の果物を大量にお裾分けしてもらい、魔物の森である程度魔物を倒した後、私は久しぶりに、元私の寝床と再会しました。元気にしてたんだねー!

魔王様に拾われてから彼(彼女?)は現れなくなってしまったので、およそ5年ぶりである。

……え?そんな5年も見かけなかった鳥魔獣をどこで見つけたのって?

人間領でも魔族領でも無い場所だよ。強いて言うなら、天界領……かな。お前は一体どこに行ってるんだといわれても……。


お茶会して、魔物狩りして、身体が汚れたから綺麗にするついでに川流れ遊びを久しぶりにしてたら、どうやら滝の辺りまで来てしまっていたけど、流れるまま昼寝をしていた私は気付かず、浮遊感に目を覚ますと、何故か私は大空を高く飛んでいた。だんだん遠くなっていく滝に、あー、落ちかけたのかーと思い、つまみ上げられる感覚が久しいものだったので、抵抗せずにそのまま雲の上まで運ばれたんだよね。


ふわふわもこもこ。けどしっかりした足場。見渡す限り白い雲と、青空が広がっております。

私をつまみ上げたのは……。あれ?


「きみはどこのこ……?」

「クウェッ!」


私の前の寝床さんは、たまごパン見たいなクリーム色だったんだけど、今目の前にいるこの子は純白とまではいかないけど白い。でも眼の色はそっくり。……これはもしや、あれか?

真後ろにズドンって何かが降りた。確認する前に背中からふわっふわに包まれた。お、おおお?これ、この感じ!まさか!


「鳥さん!」


聞き慣れた鳴き声がした。ビンゴです!久しぶりぃー!と更に背中をもふもふに預ける。そう、これですよ。いくらクッションの質を上げても再現できなかったこのモフみ!

テンション上がってきたので、暫くもふもふさせてもらう。途中から寂しくなったのか、私を連れてきたもふもふも参加です。ここは天国か!……天界領なので、まあ強ち間違いでもないのですが。


「……ふう。満足。この子は君の子ども?」


その通りとばかりに親子揃ってまたもふもふ。おお……気持ちよすぎて話が進まない。


「ふたりともありがとー。君たちには助けてもらってばっかりだねぇ」


君たちの言葉分からないから、お礼の気持ちが伝わってるかよくわからないんだけどねー。もうもふもふがもふもふでもふ……。

……危ない。これは危険なもふみだ。


「彼は貴女に感謝してますよ」

「……どちらさま?」


あまりのもふに昼寝に突入しそうだったところに、まさか声をかけて来る人がいるとは。というか、人?…天界領に人なんていないはずなのですが。渡航できませんし。


「ああ、失礼。ここに生きている人間がいるのが珍しいと思いまして」


まあ、普通の人間は此処には来られないだろうけど。それにしても、中々の美人さん。魔王様クラスの顔ってもしかして世界にはゴロゴロいたりする?何それ。許せない。普通顔の私に対する嫌がらせ?

……というか、……この方…人間、……じゃないな。


「……龍、です……?」

「おや……。わかるんですか?」

「……前に魔族領の、……泉で水浴び、してた水龍さん……と気配、同じ……です」

「ああ……龍気は独特ですからね。……水龍が水遊びをしてたのは、下界の和平の前です。……となると、貴女はその前から、魔族領に?」

「……はい。ちょっと、事情…がありまして」


龍の皆さんは若々しいけど年齢は3桁超えてるのが普通なので、敬語です。失礼はご法度……首が飛ぶ……。


「怖がらないでください。貴女をどうこうしようという気は、本当にありませんよ。

彼らの言葉が分からないようでしたので、通訳をと思いまして」

「……たまに敬語外れても、怒らない、ですか?」

「ええ。赤子は失敗してこそ学ぶものですからね」

「……私、ルチェです。一応、ちゃんと成人、です。龍の方から見たら、……赤ちゃん同然、ですけど」


魔族から見ても私はまだまだ乳幼児といったところだけどね。龍の寿命からすれば、60歳を超えた老人ですら児童レベルですねー。


「はい。分かってます。……あの2人の子供ですし」

「?私の親を知ってる……んですか?」

「ええ、まあ。会いたいですか?」

「いえ微塵も思いません。何で捨てた人たちにわざわざ会いに行くんですか」


そもそも記憶がある頃には孤児院だったし、世話になった覚えもない。興味のかけらも無い。思ったままに即答したら、彼は驚いたようで、本当に?と聞き返してきました。しつこいです。親がいなくても今生きてるし、魔王様に拾われて幸せだし。


「貴女……ルチェさんは、……そうですか。会いに来たわけではないんですね」


なるほどなるほど、と何か楽しそうに呟いた言葉は、前後のもふもふにまたもふもふされて聞こえなかった。羽毛、凄い……。


その後、鳥魔獣たちの通訳をしてもらい、改めてお礼を言えた頃、魔王様が私を探してるって、龍の方が言うので、今度は私の寝床になってくれていた方の鳥さんに乗り、帰ることに。そんなに時間経ってないとは思うんだけど。


「こちら、魔力を流していただければ、私と通信できますので、またこちらに遊びに来てくださいね。今度は天界領をご案内します」


別れ際、龍の方がくれたのは小さな水晶。龍がくれる水晶は、その龍の性質によって色を変える。火なら赤、水なら青、土なら黄、風なら緑といった具合に。けど、これはどれでもない。ただ透明で、けど、光にかざすと何か模様が光る。


「ルチェさん、ご連絡お待ちしてますね。

私に呼びかける時は、それを握って龍神と呼べば大丈夫ですからね」

「え」

「では、また」


驚きで固まる私を他所に、龍神と名乗ったその方は、私を片手で軽々と鳥さんに乗せた。え、ちょ、……おい?

魔族領の、私が回収された滝のすぐ近くに降ろされ、別れ際の挨拶とばかりにまたもふもふされるまで、ちょっと処理落ちせざるを得なかったですよ。


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