何でもない日の非日常
連載ものを扱うのは初めてです。
朝起きて、散歩するのが僕の日課。
日が昇りきらず、あたりはまだ薄暗い。
長袖を着ていても、ひんやりとした空気が服の袖や襟のあたりから入り込んで、肌寒さを覚える。
日課の散歩といっても家から一番近いコンビニに行って適当に雑誌をみるだけ。
片道五分、雑誌をみるのに十分、帰るのに五分、全部合わせても二十分程度の日課。
特になにかがあるわけでもない。
ただ、ぼんやりとした頭を覚ますのには最適な習慣。
いつも通りの散歩。
特になにも変わりはない。
カラスがカアカアと鳴いている。
どこか寂しさを感じさせる、カラスの鳴き声。
カアカア、カアカア。
・・・ん?
今朝の鳴き声は少し違っているように聞こえる。
なんというか、騒がしい。
仲間どうしと話すようなカアカアとした感じではなく、急いで仲間を集めるためのカアカアという感じ。
そんな感じ。
僕は少し興味を持った。
二十分に数分が足されるだけだ。
特に朝はすることもなし。
周りには誰も歩いていないし、途中ですれ違ったとしても僕を気にしないだろう。
小さかった時分のような、ちょっとした冒険心が湧いた。
朝からカラスが集まって騒いでいるのだ。
騒がしい場所を探し出すことにそう時間はかからなかった。
やはり、カラスが集まっている。
若干小走りになる。
何があるのだろう。
―――そこは、非常に目立たない空き地だった。
近づく。
カラスの声が大きくなる。
カラスたちはこちらの存在に気づいて威嚇しているように見えた。
僕が近づくと意外にもカラスたちはあっさりとどこかへ飛び去っていった。
そこにあったのは、赤みがかったなにか。
たぶん自分の手のひらに収まるくらいのおおきさ。
少し派手な蛇に近かった。
少しだけ膨らんだり縮んだり。
呼吸をしている。
鱗とおぼしき部分が生物の独特の”てかり”を帯びていた。
そこかしこに傷がある。
先のカラスたちにやられた傷だろう。
痛々しさを感じる。
ただ、よく見ると。
蛇にしては脚というものがあり、体は筋肉質で、背中には翼?のようなものがついている。
自分の知っている生物とは、ところどころなにかが違っていた。
―――なにかが顔を上げた。
それには角が生え、鋭い牙がつき、その目は。
鋭い目つきとは裏腹にどこかおびえているようにも見えた。
口からはとても弱々しく「ピイ・・・」と鳴いている。
みたことはない。
でも、誰しもが知っている。
間違いない、こいつは―――。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
地響きが起こりそうな咆哮。
うなり声。
そして空から巨大な質量をもつものが迫る。
影で僕の全身が覆い尽くされる。
・・・・・。
気を失っていたようだ。
手のひらに収まるようななにかも。
巨大な影も。
そこにはなにも無かった。
狐に幻をみせられたような気分だった。
カアカア。
カラスが鳴いている。
いつも通り、仲間どうしで話すような鳴き声で。