プロローグ
その昔、魔王軍によって生活を脅かされていた人々は、お互いに得意な技術を集め、ギルドを作り出した。
剣の扱いに長けた者は【剣士】
魔法の扱いに長けた者は【魔法使い】
商売に長けた者は【商人】
それぞれに職業を設け、ピアス・イヤリングにて識別登録し、魔王軍に立ち向かう勇士冒険者を相互補助していた。
民間で運営されていたギルドも、魔王軍に対して一定の成果をもたらし、いつしかギルドは国家主導の国営ギルドへと変貌していった。
冒険者達を引き合わせるだけだったギルドも、国が介入することで資金繰りにも余裕ができた。元々、上昇志向の強い冒険者達は
「他の職業に転職したい」
「この職業も資格として登録してほしい」
「この職業について、もっと深く学びたい」
という意見が多く、国営となったギルドはそれぞれの職業へ転職しやすいように訓練所を作った。
ギルドと紐付けされているその訓練所は、冒険者達からは
ー『ギルド職業安定訓練所(通称・職安)』ー
と言われるようになっていった。
この物語は、勇者の職業憧れ、数々の自称勇者の自伝を出版する者の本を買い読み漁り、しかし、その一歩を踏み出せずにいる青年から始まる。彼は、父親の財力に甘え、特に識別装飾品を持たない…所謂、無職である。