「おやつは300円までです!」
前書きで書くことが思い付かないのでとりあえず登場人物のプロフィールを
佐藤恭介(主人公)
年齢:17歳
誕生日:5月21日
血液型:B型
身長:174㎝
体重:64㎏
髪型:荒めのツンツンヘアー+カチューシャ
髮色:濃いめの赤
成績:下の中
井上美咲
年齢:17歳
誕生日:10月4日
血液型:A型
身長:158㎝
体重:「…ヒミツです」
髮型:腰までかかるふんわりとしたロングヘアー
髮色:オレンジに近い茶
成績:上の中
とりあえずここのスペースはこんな感じで
美咲「おはようございます!朝ですよ!」
井上さんが来てから三日目の朝
俺は相変わらず可愛らしく元気な声に起こされた
しかし無人島に来てまで早起きなんかしたくない俺は「あと5分」とお決まりの常套句でまた夢の中に逃げ込もうとする
美咲「わかりました…いーち、にーい、さーん、よーん」
無人島に時計は無い
太陽の位置でだいたい予想してるだけで正確な時間は計れない
そんな無人島トリックを逆手にとった作戦のつもりだったが井上さんの方が一枚も二枚も上手だった
まさか5分を1から300まで数えようとするとは……天然って怖ぇ(汗)
おかげで井上さんが10秒を数える辺りには俺の口許もニヤケが収まらす頭の方もすっかり覚醒した
俺「おはよーごさいます…」
美咲「おはようございます!」
朝から元気な井上さん
生活習慣が健康的過ぎて俺にはついていけない
俺は目を擦りながらとりあえず歯を磨きに行く
歯磨きは俺がまだ一人の時に先端がブラシの様になってる植物を見つけてそれを乾燥させて歯ブラシ代わりに使っている
ついでに他の衛生的な面として風呂は近場に在った湖を利用し、洗濯は絞ると汚れが落ちるエキスを出す植物を発見したのでこれをつけて水洗いしてる(これしかないからこれで体も洗ってる)
まぁ何も無いよりは幾分かましだろ
前回やってた魚獲りも安定してるので今のところ二人になったところで何も問題は発生してない
美咲「佐藤くん佐藤くん!」
俺が歯磨き&洗顔を終わらせたところで井上さんが溢れるワクワク感を隠さず歩み寄ってくる
何故か若干嫌な予感がする
美咲「今日はこの島を探検しに行きましょう!」
俺「アグレッシブだねぇ…」
美咲「ダメですか…?」
誰もダメなんて言ってないじゃないですか…
だからその餌を取り上げられた小型犬の様な表情を止めていただきたい
罪悪感で押し潰されそうだ(汗)
俺「ダメじゃねーよ、やっぱ動いていかねーといつまでもこの島から出れねぇからな」
美咲「そうですよね!流石佐藤くんです!それじゃあさっそく準備開始です!」
楽しそうでなによりです
俺は持っていく物を選んでいる井上さんに心の中で呟いた
………
朝飯も食べ終え、準備が整った俺達はさっそく島の中心部に向けて探索を始めた
一人の時は何回か探索していたが島の奥に進むのはこれが初めて
井上さんは賢く、方向感覚が鈍らない様に太陽の向きを逐一確認しながら進む道を選んでいた
俺には無い発想だ
加えて通り道の木に印をつける徹底ぶり
今回はカッターで切り口をつけていたが、何はともあれ井上さんも本気だった
決して遠足気分じゃない
美咲「気を付けてください、佐藤くん…こういう時はいつの間にか肩にタランチュラが乗ってたりするんです…!」
俺「わかりました隊長!気を付けます!」
変なところで知識が偏りがちだが、「隊長」と呼ばれた井上さんは嬉しそうだった
俺「隊長」
美咲「なんですか?」
俺「お腹がペコペコであります」
美咲「それでしたらここでお昼にしましょう」
腹が減っては戦は出来ない
俺達は座るのに最適な岩を見つけ腰を降ろした
昼食は井上さんが今朝採ってきてくれた果物
しかも特に水気の多い種類を選んだらしく水分補給にももってこい
俺「隊長、今日はどのくらい探索するんすか?」
俺は果物を頬張りながら今日の最終目標を訊いてみる
美咲「そうですね…古代遺跡を発見するまで…もしくは謎の巨大生物の正体を明らかにするまでですかねー」
井上探険隊の目標は想像以上にデカく、本気だったら今日中に帰るのは難しい
俺は息を呑み井上さんを凝視する
俺「マジすか…?」
美咲「冗談です!」
本当によかった
井上さんの茶目っ気は心臓に悪い
俺が心の底から安堵していると近くの草場がガサガサと音をたてた
「!?」×2
何か居る
きっと人じゃない何かが…
果物の甘い臭いに引き寄せられたのか…
とにかく俺は井上さんと草場の間に割り入った
これがもしとてつもない猛獣でも
井上さんだけは絶対に逃がしたい
「くぽー」
草場から姿を現したのは限りなく熊に近い生き物
ただすごく小っさかった
大きさにして50㎝くらい
これで成獣なのかは知らないがとりあえずこの大きさなら脅威でも何でもない
蹴飛ばせば死にそうだし(そんな可哀想なことはしないけど)
美咲「わー、可愛いですねー!」
確かに大きめのテディベアみたいなもんだが果物を持って熊に近付こうとする井上さんは止めておいた
なに餌付けしようとしてんだ…(汗)
美咲「飼っちゃダメですか…?」
俺「ダメに決まってんでしょうが…(汗)」
美咲「はーい…(泣)」
例えこの熊を飼ったとしても大きくなったら面倒見切れないし
この熊が死ぬまで面倒見る時間は無い
流石にそこまでのんびり無人島ライフを満喫するつもりはない
美咲「あ……まずいです佐藤くん…」
井上さんは何かを思い出したかの様な音を出し、急に青冷め始めた
美咲「は、早くここから離れましょう…!」
俺「急にどうしたんだよ!?」
俺の腕を強引に引っ張る井上さんの慌て方は尋常じゃなかった
美咲「子熊さんが居るということは…親が近くに居ます…!!」
その時だった
「グモオォォオオオオ!!!!!」
草場の陰からさっきの子熊とは比べ物にならない大きさの熊が飛び出してきた
獲物を前に気配を消していたのか、今の今まで気付かなかった
熊は腕を振り上げ二人まとめて仕留めにかかる
俺「クソッ!!」
「グモオッ!!」
熊の腕が降り下ろされ、俺は咄嗟に井上さんを突き飛ばした
俺「おっ…ぐぁ!?」
斜めから振り落とされた熊の手を俺はギリギリ両腕でガードするが獣の強引な力はそんな生ぬるいガードなんて全く関係無いとばかり
腕を通して身体中が軋み、鈍い痛さと共に俺は地面に叩き付けられた
倒れたまま腕を確認すると衝撃をモロに受けた左腕は既に赤黒く変色していた
美咲「佐藤くん!佐藤くん!!」
井上さんは涙混じりの声でがむしゃらに俺を呼ぶ
「グモオォォオオオオ!!」
そして熊の勢いは当たり前だが全く納まらない
最悪だ
こういうのを地獄絵図って言うんだろう
痛ぇし、女を泣かせちまうし、ダリぃし…イライラする
「グモオォォオオオオ!!!!」
美咲「キャアァァァアアッ!!!!」
熊は次に井上さんを襲おうとまた同じ構えに入っていた
か弱い井上さんが今のを喰らったら確実に死んじまうだろう……
俺、頑張らなきゃ…
俺「不意打ちくらいで調子こいてんじゃねーぞクマァアア!!!!」
「ゴッ…グオゥモ!!?」
俺の渾身の右ストレートが熊の顔面を横から捕えた
熊の巨体は宙に舞い、太い木に身体を打ち付けそのまま崩れ落ちる
美咲「!?」
井上さんは何が起きたか解らないと言わんばかりにポカンとした表情で俺のことを見ていた
そんな井上さんは貴重だからケータイが在れば間違いなく写真に撮って待受にしただろう
俺「こう見えて『四天王』とか呼ばれてんからな、こんな熊公に負けやしねーよ(笑)」
ヤンチャが祟って今時そんな厨二臭い恥ずかしい称号を得てしまった俺
将来黒歴史になること請け合いだ
だけど今はそんな恥ずかしい称号を使ってでも井上さんを安心させたかった
未だに悲鳴を上げる身体に鞭を打って、精一杯強がっていたかった
俺「だから、もう泣かないでくれ」
恐がらないでくれ
「ゴォガァアア!!!!」
流石に野生の熊
強靭な骨格に守られた脳はそう易々と揺さぶれない
驚いたくらいでダメージも無さそうだ
更に今ので完全に怒らせてしまったらしくより一層敵意を剥き出しにした雄叫びを上げ突進してきた
俺「危ないから少し下がっててくれ」
美咲「え、あ…こ、腰が抜けちゃって…」
立てない…か
それならそれでもいい
尚更引けなくなっちまったけど
そっちの方が燃える
俺は着ていた服を脱ぎ左腕に巻き付ける
「グモオォォオオオオ!!!!」
そして馬鹿の一つ憶えの様に吠える熊の口にタイミングを合わせ服を巻いた腕を突っ込んだ
「ゴモゥガァ!?」
俺の予想外の行動に熊は一瞬戸惑ったがすぐに口の中の腕を噛み砕こうと顎に力を入れてきた
服を巻いていて牙が直接刺さってはいないが単純な顎の力だけで今にも骨がイカれそうだ
俺「うっ…ぐぅ……」
だがそれでいい
俺「そうだ…絶対放すなよ……オラァッ!!!!!」
俺は腕に噛み付いていることによって前屈みになってる熊の下腹部辺りを右手で突き上げた
「グムォ!!?」
その衝撃で少しだけ浮いた熊をそのまま強引に持ち上げ、さっきまで俺達が座っていた岩に、まだ食らい付いている左腕を捩じ込む形で脳天から熊を叩き付けた
熊の体重も、岩の硬さも利用できるもんは全て利用した
これでダメなら正直お手上げだ
「ゴ…ガッ……」
俺は力の抜けた顎から腕を引き抜いてまだ逆さまになってる熊がこっちに倒れない様に軽く蹴飛ばす
ズシンと地面を鳴らし仰向けに倒れた熊にもう動く気配は無い
どうやら何とかなったみたいだ
噛み付かれていた左腕も服をとって見てみたら変色以外熊の顎の形に凹んでるだけでこれは少し時間が経てば元に戻るだろう
動かした感じまだ痛みはあるが骨も大丈夫みたいだった
俺「熊っつっても大したことないな、楽勝楽勝!」
俺はまだ背後で座り込む井上さんに聞こえる様に勝鬨を上げる
実際は楽勝でもなんでもないし少し気が緩めばすぐ倒れちまいそうだ
それでも俺は声を張り上げる
だけどそんな無理をしてでも伝えたい想いは届かない
美咲「ごめんなさいっ…!」
井上さんは俺のズボンを握り締めると泣きながら謝った
俺「………」
美咲「私が…わがまま言ったから……佐藤くんを危険な目に合わせちゃって…怪我させちゃって…本当にごめんなさいっ…!」
涙と鼻水でボロボロの井上さん
せっかくの綺麗な顔が台無しだ
俺は井上さんを包む様に抱きしめる
俺「言いたいことはそれだけか?」
美咲「………?」
まだ震えてる井上さんの背中を擦る
俺「俺は大丈夫だし、こんなことくらいで井上さんを責めたり嫌いになったりしない」
美咲「でも…」
俺はまだ何か言いたそうな井上さんを遮る様に続ける
俺「不甲斐ないかもしれないけど、そんな俺を信じてくれないか?」
美咲「………」
井上さんは何も返してはくれなかったが一度だけ頷いてくれた
俺「そんじゃ、今日はもう帰るか」
未だに立てない井上さんを背負い、俺達は帰路につく
今の状態だと誰かを背負いながら歩くのもしんどいが井上さんが回復するのを待つ時間は無い
いつまた猛獣が出て来るかも分からないし…
小屋に帰るまでは来る時と同じだとして二時間半くらい
実際はもっとかかるだろう
そんな決して短くない道程の中、俺達は一言も喋らなかった
妙に静かで、聞こえるのは俺の足音と風に揺れる木々の音だけ
井上さんが俺の背で何を考えてるのかは解らない
そして俺の方は何も考えていなかった
帰り道だけ間違えない様にはしてたけど、その他の神経は二つの山が当たる背中に集中させていた
たしかに…
たしかに今の俺は最低かもしれない…
だけど今日くらいは許してください…!(迫真)
邪念に心を委ねてると時間が経つのは案外早いもんで、いつの間にか小屋が小さく見えるほど帰ってきていた
美咲「佐藤くん…」
俺「ん?」
俺の首許に回す井上さんの腕に少し力が入ったのが分かるが、俺を呼ぶ声はまだ鼻声だった
美咲「…ありがとうございます」
もちろん井上さんにまだ元気は無い
だがここは出た言葉が謝罪じゃなかっただけ良しとしておく
俺「いいってことよ!」
井上さんがまだ笑えないなら、元気が無いなら
代わりに俺が笑う
今は膝も若干笑っちまってて格好もつかないけど
小屋に着いた瞬間崩れ落ちちまったけど
それでも俺は満足気に笑う
俺「いやぁ達成感半端ないっす、隊長!でもちょっとだけ疲れたから悪ぃけどこのまま寝るわ」
美咲「…わかりました、ゆっくり休んでください」
井上さんが動けるようになったのを確認すると俺は最後の力を振り絞って自分のハンモックによじ登った
今目を閉じれば音速で寝れる
美咲「何か私に出来ることはありますか…?」
俺「とりあえず…大丈夫……気にしないで…くれ」
疲労と安心感からすぐに眠気が襲い、既に微睡む俺
俺「強いて言うなら……井上さんみたいな美人に……お休みのキスでもされたら……良い夢…見れ…そう…だ……(笑)」
脳が半分シャットアウトする中、冗談の範囲も見失う
美咲「―――でも―――か?////」
俺「…?………zzz」
井上さんが何を言ってるかももう聞き取れない
意識が落ちる三秒前
頬に何か柔らかいものが当たったような気がした
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