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今年初めての大雪で、電車にも人はあまり乗っていませんでした。私の腕の中にある鮮やかな花束だけが、白い世界の中浮いていました。
「ー駅、ー駅」
降りて1人、歩きました。雪はやわらかくて、踏む音がしませんでした。行った場所には誰もいませんでした。足跡もない場所を、1人踏み分けて目的物の前に立ちました。
ざっ…ざっ…。雪を払って、名前を見ました。
ぱっ…ぱっ…。雪を払って、花を挿しました。
「ー」
手を合わせて、祈りました。
「…あーちゃん」
あなたといた時間は、私の人生半分以上しめていました。本当にあなたと向き合ったのは、ほんの1年間でした。
「…私はあなたの側に居て良かったのかな」
あなたと過ごした時間を後悔したことはありませんでした。ただ、泣きそうになるくらい惨めになっただけでした。
自分がどんなに卑しいかを感じて。自分の事しか考えてない私と向き合って。
「…遅くなって、ごめんなさい」
1ヶ月経ち、やっと此処に来れました。こんな私に、泣くことは許されないのです。
「泣かないから、祈ることは許してね」
今年初めての大雪でした。わざわざ今日にしたのは、誰もいないと思ったから。聞いているのは、あなただけだと思ったから。
「――――、♪~~っ…♪――――」
あなたが好きだと言ってくれたから、あなたが認めてくれた声だから、だから付き合えあなたに向かって歌います。
地に向かって、低い音を。天に向かって、高い音を。
閉ざした目の暗闇にあなたの顔が。寒さで痛い耳の奥であなたの声が。赤い掌の上にあなたの体温が。
届かなくても良いのです、気付かれなくても良いのです。これは、私の中の嫌な感情を振り払うためのもの。
誰か私を罰して下さい、あなたを置いて明日を夢見る私を。
歌い終え目を開けると、また少し雪が積もっていました。私が挿した花にも、雪が少しのっていました。両膝をついて、再び祈りました。
「…歌うことは絶対辞めないから。遺言だもんね」
…辞めないように、見張っていて下さい。いつも側で、見ていて下さい。




